聖教新聞 2005年1月30日より転載

 

 
 

苦難に“負けない心”を

 
 

トーク21

 

トーク21ロゴ今週の「トーク21」は、障害者の自立支援(しえん)組織「プロップ・ステーション」を設立した竹中ナミさんと総兵庫婦人部長の宇田喜美子さんの対談です。「障害者」の社会参加が進む現在、語らいを通して、人間の生き方、社会のあり方を見つめます。

 

苦難に"負けない心"を

竹中ナミの写真

「障害者」でなく
「チャレンジド」
前向きに挑戦する人

社会福祉法人
「プロップ・ステーション」
理事長

竹中 ナミさん

たけなか・なみ 神戸市生まれ。24歳の時、重症心身障害の長女(麻紀さん)を出産したことから、障害児医療などを独学。1991年、障害者の就労(しゅうろう)支援活動「プロップ・ステーション」を設立。99年、エイボン女性年度賞教育賞、2002年、総務大臣賞を受賞。著書に『ラッキーウーマン』など。


宇田喜美子さんの写真

人生は自分らしく
生きるためにある。
だれもが尊い人

総兵庫婦人部長

宇田喜美子さん

うだ・きみこ 関西の草創期を師とともに走った両親のもと"関西魂"を培(つちか)う。京都教育大学卒。関西女子高等部長、関西女子部長などを歴任。開校まもない関西創価学園の体育教師として教鞭(きょうべん)を。広布への熱い情熱で兵庫中を駆けめぐる、明るく聡明(そうめい)な女性リーダー。師範。


竹中さんと宇田さんの写真

「一人が変わらんと、社会は絶対に変わらへん!」−−"自分らしく生きること"の大切さを語り合う竹中さん(右)と宇田さん(兵庫・神戸市にある「プロップ・ステーション」で)

 

 宇田 私たち創価学会婦人部の兵庫女性平和委員会が主催した「平和の文化フォーラム」(昨年10月)に来ていただきました。本当にありがとうございます。

 竹中 大変、勉強になりました。みなさん、ホンマ素晴らしい生き方をされている。あらためて自分も"頑張らなあかん"と思いました。

 宇田 「プロップ・ステーション」のような試(こころ)みが軌道(きどう)に乗るまで、大変だったでしょう?

 竹中 当初は、「障害者にパソコンを教えるなんて無理や」など、さまざまな批判がありました。でも、現実は見ていない。例えば、あの阪神淡路大震災の時には、重度の障害の方々が、パソコンを利用して、救援物資の情報や安否(あんぴ)情報などを提供し、それが役立ったんです。

 宇田 そうだったんですね! 先ほど見学させていただきましたが、本当に皆さん、一生懸命、勉強されています。

 竹中 毎週100人以上の方が、講習を受けにこられます。世間には、社会が助けてあげなければならない「かわいそうな人」という偏見(へんけん)が、いまだにあります。でも彼らは"社会に参加し、貢献(こうけん)したい!"という強い思いがあるんです。

 宇田 そんな必死な思いがあるからこそ、上達も早い。こちらが決めつけてはいけませんね。

 竹中 その通りです。

パラリンピックの写真 パラリンピックにはいくつもの挑戦のドラマが<AP>

 宇田 私の知人に、耳が聞こえない子どもを授(さず)かった人がいます。子どものために何でもしてあげようと、いつも肩に力(ちから)の入った生活を送っていました。それが、人生の先輩のアドバイスで「子どもの心が楽しければいい」ということに気づいたとき、肩の力がスーッと抜いたというんです。

 竹中 そうなんです。障害者の問題というと「〜ねばならない」という意識が強い。そうではなく、小さなことでも、その子にとって楽しいことを見つけてあげる。それをお母さんが、気づいただけで、子どもも家族も変わります。

 宇田 仏法では、「衆生所遊楽(しゅじょうしょゆうらく)」と説きます。どんな人も、この世の中を楽しむために生まれてきた。その楽しむ"心"が大切ですね。

 竹中 私には重度の障害を抱えた娘がいます。もちろん大変なこともいっぱいある。だけど、娘に成長の変化があった時の喜びは、ひとしおです。娘は私に、「人間は生きるスピードが皆、違う。人によって持っている特性は違う」ことを教えてくれました。その娘がいたからこそ、どんな障害がある方も、私にはいとしくて仕方がないのです。

 宇田 私は教師をしていたのですが、子どもに知識を与えるのではなく、子どもの可能性を引き出すことが大切だと感じますね。池田名誉会長も、教育とは「自(みずか)らの生き方をかけた、大人たちの挑戦にほかならない」と言われています。

 竹中 もちろん、障害者も変わらないといけない。でも私たち、そして社会はもっと変わるべきです。

 宇田 障害のある方を「チャレンジド」と呼ばれているそうですね。素晴らしい言葉です。

 竹中 アメリカでは「挑戦すべきことを与えられた人々」という意味で「チャレンジド」と呼ぶと、教えられた時に"これや!"って思ったんです。震災の復興(ふっこう)に立ち向う人。障害と向き合う人。そういう自身の課題と向き合う人が「チャレンジド」。震災直後、家も全焼して元気だけが取りえの私もさすがにぼうぜんとなりました。だけど、この「チャレンジド」という言葉と出合い、「よーし」って震災と向き合うことができたんです。

 宇田 昨年の台風23号の被害も大きかった。水害にあわれた方にかける言葉すら見つかりませんでした。

パラリンピックの閉会式の写真
多くの人に勇気を与えたパラリンピックの閉会式<同>

 竹中 私はもともと「障害者」という言葉は嫌(きら)いだったんです。人間の負(ふ)の側面(そくめん)ばかりに注目しているような気がして。言葉は、哲学や文化を反映(はんえい)しているでしょう? 日本の文化の貧困(ひんこん)さを感じます。

 宇田 こうしてお話をしていると、人間としての強さを感じます。

 竹中 単に開き直ってるだけ(笑い)。私は、社会に敷(し)かれたレールというものが大嫌いだった。だから、チャレンジドの娘を授かって、世間で言う「いい母親」になる必要はない。自分なりの生き方を堂々とすればいいって思ったんです。

 宇田 人間は皆、尊(とうと)い存在。だれびとの生命も平等です。

 竹中 そうですよね。別に人と競争する必要はない。だけど、きょうの自分が何かできるようになりたい−−そう思うんです。

 宇田 素晴らしい!

 竹中 ほかの人と比べるようなことをしても、自分をダメにするだけ。幸い私には、自分らしさが発揮(はっき)できる、この「プロップ」がありました。

 宇田 "自分らしく"生きていくことが大切ですね。創価学会のネットワークも、その人がその人らしく最高に輝くためにあります。

 竹中 私たちの運動は、同じ方向を向いていますね!

 宇田 さらに言えば、女性が輝く世紀を!−−この思いで、私たちは日々活動に取り組んでいます。

 竹中 私の友だちの中にも学会員の方がたくさんいます。とくに、女性の方にパワーのある人が多い。やっぱり"おばちゃん"の方が元気がある(笑い)。

 宇田 「負けじ魂(だましい)」が私たちの信念です。どんな苦難があっても負けない! だから、私たちも、あの震災を乗り越えることができました。これからも、ともに手を携(たずさ)えて、明るい社会を築いていきましょうね!

 竹中 一緒に、頑張りましょう!

 




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