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産経新聞 2004年8月7日より転載

     
 
障害者の就労元年
 
 
 
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 「補助金いらんから仕事ちょうだい」。これは私がいつも政治家や行政関係者にお願いする言葉です。プロップは、行政補助のない第二種社会福祉法人として、「障害の有無にかかわらず意欲と能力に応じて働き、社会を支える側に回れるシステムの創造」を目指して活動を続けてきました。

 重い障害を持つ人もITなどを駆使することで持てる力を発揮し納税者にもなれる、というプロップのミッションは、発足当時は大変異端で、社会的反発を受けたこともありますが、補助金がないことがむしろ既存の制度に縛られずに実践できるという結果に繋(つな)がったことを実感しています。

 良くも悪くも補助金にはルールがあり、新しいルールを生み出そうというときにそれが足かせになるのです。「障害者など弱者は働くことが困難な気の毒な存在。だから税金による補助制度を中心に生きていってもらいましょう」という既存のルールは、チャレンジド(障害を持つ人)の働く意欲や納税する誇りを奪ってきました。

 障害者の自立運動をアメリカで広めたのは、今は亡きエド・ロバーツ氏ですが、彼は電動車いすを使用する全身性のチャレンジドで、夜ごと呼吸器が必要という重度障害者でした。しかし、彼はカリフォルニア州のリハビリ局長としてアメリカの誇りであり、全米のチャレンジドのリーダーでもあったのです。その彼の口癖が「障害者を納税者に」であることに私は大変感銘を受けたものです。

 6月11日、自民党障害者福祉施策勉強会が公明党の協力も得て「障害者の就労元年宣言」を発表しました。「補助金をとってきてあげるからね」という政治家のスタンスを大きく変える宣言で、介護を得ることと働くことが両立する制度の提唱も行っています。

 アメリカやスウェーデンに比べ40年遅れのスタートですが、きっと日本は、両国以上の素晴らしい制度が生み出すことができる、と信じています。

 

写真:ナミねぇ竹中ナミ
(たけなか・なみ=プロップ・ステーション理事長)




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