読売新聞 2004年5月27日より転載

     
  目の不自由な人 音声誘導  
 
神戸市がモデル地域
 
ICタグと携帯端末利用 システム
公開
     

点字ブロックのICタグから情報を受け取り、音声に従って歩く視覚障害者ら(神戸市中央区で)

 道路の点字ブロックに埋め込んだICタグ(電子荷札)と携帯端末などを利用して、誰もが移動手段や目的地の情報などを得られるネットワーク作りを目指す国土交通省のプロジェクトで、神戸市がモデル地域に選ばれ、来年度、本格的な社会実験が行われることが決まった。同市中央区では26日、障害者らが参加してシステムの一般公開が行われた。


 国交省は3月、「自律的移動支援プロジェクト推進委員会」を発足させ、ICタグや、赤外線、無線の発信装置などからの情報を、手のひら大の携帯端末で読み取るシステムを開発。

 この日は、ハーバーランド情報センタービル・スペースシアターで、視覚障害者らがセンサーを内蔵したつえを手に、横断歩道や駅のホーム、工場現場などに見立てたコースを歩いた。ポイントごとにICタグの情報を受信した携帯端末から「工事中です」「左に曲がります」などの音声が流れ、行き先を誘導。

 「兵庫視覚障害者の生活と権利を守る会」の豊田幸博会長(53)は「街には文字情報が圧倒的に多く、音声で情報を得られるのは大変な進歩」と歓迎していた。

 このシステムでは、観光やショッピングなど多彩な情報も提供され、外国語による案内も。携帯端末は将来、駅改札で定期券として、自動販売機で料金支払いに使うカードとしての利用が期待される。

 同省は10月ごろ、市街地で数日間システムを試行させた後、三宮や新神戸駅周辺など中心エリアの道路にICタグなどを備え付け、来春以降、一般市民も参加する社会実験を始める。

 プロジェクト推進委員長の坂村健・東京大大学院教授は、「どこでも情報に接続可能で、あらゆる人の役に立つ、安全で安心な街につながるシステムにしたい。神戸モデルが全国に広がれば」と話している。

 システムの一般公開は27日午前10時−午後7時、28日午前10時−正午も行われる。