
段差のない超低床の路面電車、大きな文字で書かれた商店街の案内板、子ども連れでも更新に訪れることができる運転免許センター…。
熊本県では、ユニバーサルデザイン(UD)という言葉が根付きつつある。障害者、高齢者に配慮した設計をすることを「バリアフリー」と言うが、UDは彼らを区別せず、健常者も含めたすべての人が使いやすいデザインを目指す。
そのUD推進を「マニフェスト」に掲げ、旗振り役となっているのが潮谷義子知事(64)だ。
潮谷氏の経歴は、47人の全国知事の中で異彩を放つ。
2000年4月の知事就任まで、本格的な行政経験は直前の副知事時代のわずかの1年間。それまでの37年は、保母や乳児ホーム園長など、福祉の第一線にいた。
その中で潮谷氏は、福祉施策が利用者ではなく、行政の都合で進められるケースを何度も味わってきた。
知事になった潮谷氏は、いつも職員たちに「現場に足を運んで」と声を掛ける。「現場を知らないと、『してあげる』になる。施策が満足かどうかは、現場で意見を聞き、検証しなければ」
「与える福祉」から「共有する福祉」への転換は、竹中氏の「チャレンジド」という考えと一致する。そして、UDで「全県民が共有できる街づくり」を進めようという動機にもなった。
1期目の任期が間もなく終わる。しかし、UDに向けての取り組みは続く。
「ハードの部分だけではなく、ソフトの部分でも、共同の世界、ともに育つ世界に私はいたい」
熊本県内のUDの主な具体例
●車いすのまま乗れるUDタクシーの運行
●電動スクーター貸し出しなど人にやさしい商店街づくり
●県民への普及啓発のためUDファッションショーの開催
●車いすで台所、トイレが使える県営団地の建設
●地場産業のUD製品開発支援
|