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SOHOドメイン(旧 月刊SOHO) 2004年1月号より転載 |
プロップ・ステーション便り ナミねえの道 | ||
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第19回――プロップセミナーはプロへの登竜門 | ||
“魔法の足”の講師が
PCを使って達人を育てる |
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自らの可能性を信じて、パソコンに向かう受講生たち。プロップのコンピュータセミナーは、チャレンジドにとってプロへの登竜門である。講師として教鞭をとる岡本敏己さんもプロップのセミナーで学んだ第1期卒業生。その温厚な人柄とわかりやすい授業で慕われる岡本さんは、足の指で巧みにマウスを扱う達人だ。 自分の才能を見つける
● ――身辺自立の考え方とは。 岡本●本人に直接会って教えてもらったのは、要するに「できることをやればいい」という考え方でした。たとえば、駅の自動販売機で切符を買いにくければ、人に頼めばいい。足を使えば服も着られるし、手でボタンが留められなければボタンのない服を着ればいいというように。それまで足を使うことを教えてくれる人はおらんかったし、東京や大阪のリハビリテーションセンターでもノウハウはありませんでした。 ――PCとの出会いは。 岡本●最初は身体障害者福祉センターで友人に和文タイプを教わり、大阪では作業所として草分け的な存在のセルフ社で印刷の仕事をするようになりました。機関誌やミニコミなどを作る仕事で、足でタイプをカチャカチャと。そのうちワープロが出て書式を作ったり。やがて、ナミねぇがプロップを立ち上げると聞いて、足掛け3年ほどPCセミナーに通ってワープロソフトやIllustrator、Photoshopなどを習いました。 ――現在の仕事内容は。 岡本●当初はボランティアとしてプロップで教えていましたが、講師のお呼びがかかって……。勧めていた作業所にもDTPのシステムを導入するという目的も叶いましたので、プロップの講師を引き受けることにしました。今はWindowsの初心者コースとグラフィックコース、ホームページ作成のためのコースなどを担当しています。 ――講師として苦労するところは。 岡本●障害の種類やレベル、覚え方、センスなど、同じ課題を制作するにもそれぞれの進み方が違うところが難しいですね。姿勢として受講すればそれで済むかなという考え方はして欲しくないですね。あくまでもセミナーはスタート地点、一つのことを粘り強くずっと続けていくことが大事だと思います。また、自分が覚えたらそれを惜しまず仲間に教えて欲しいし、その中から才能のある人が出てくればいいじゃないですか。今ではPCは使えて当たり前ですから、もっと自分ができること、自分しかできないことを見つけて欲しいんです。 ――チャレンジドの就労について。 岡本●お金を出して学んでもらう限り、お金を儲けて元を取って欲しいんですよ。そのために個人のスキルに応じたいろんな仕事ができる世の中の仕組みができることを望みます。ナミねぇの「チャレンジドを納税者に」というのは、ええ言葉やと思います。日頃、チャレンジドはしてもらうのほうが多いので、ほんの一部でもええから他の人を支えるためにできることをするという気持ちがあればいい。 ――チャレンジドへのメッセージを。 岡本●何でもええから達人になってほしいんですわ。絵を描くこと、プログラミング、サーバーの管理など自分に備わっている才能を見つけて欲しいです。コンピュータ勉強したからいうて、コンピュータせんと売る立場に立ってもええんですから。 ※ポリオ 手や足の麻痺があらわれる病気。
潜在能力を引き出す
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構成/木戸隆文 撮影/有本真紀 |
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●月刊サイビズ ソーホー・コンピューティングの公式サイト http://www.soho-web.jp/ ●出版社 株式会社サイビズ |
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