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産経新聞 2003年12月1日より転載

     
 
不思議なマイナス言葉
 
 
 
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 「チャレンジド(障害を持つ人)を納税者にできる日本」という、私たちプロップのキャッチフレーズに賛否両論が寄せられています。議論を喚起するために、あえて刺激的なキャッチフレーズを掲げたこともあるので、これはうれしいことでもあります。

 反対の声の多くは「チャレンジド」という呼称に「挑戦せぇよ!」という強圧的な態度を感じるからイヤ、というものですが、実はこの言葉は「人間には自分の課題に向き合う力が与えられている」という哲学を表したものです。つまり人間の可能性に着目した言葉なんです。

 「ハンディキャップト」とか「ディスエイブルパーソン」という従来の呼称が、障害者をマイナスの存在と位置づけているという反省を込めてアメリカの人たちが生み出した言葉でもあるのですね。

 そういえば日本における「障・害・者」という呼称は、まさにマイナス言葉の羅列です。30年間「重症心身障害者」と呼ばれる娘と向き合って、彼女に鍛えられ、育てられた私としては、こうしたマイナス表現を不思議とも思わずに使っている日本文化ってなんやねん、という気持ちがあったから「チャレンジド」という呼称に共感を覚えたわけです。

 「納税者に」という部分にも反論が寄せられます。日本の福祉活動は「税金からナンボとってこられるか」というパイの奪い合いみたいなところがあったので、タックスペイヤーになることは二の次だったんですが、冷静に考えてみると「納税者になるのが無理な人たち」と規定されるなんて、大いに失礼な話やないでしょうか。

 半世紀ほど前まで選挙権すらなかった日本の女性たちが立ち上がり、心ある男性たちと連携しながら職業選択の自由や機会の均等を獲得していったように、チャレンジドも幅広い層の人たちと連携して、社会のさまざまな場所で活躍してほしいと私は願っていますし、それのできる人たちであると信じています。

 

竹中ナミ
(たけなか・なみ=プロップ・ステーション理事長)



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