ビル・ゲイツさんと東京で
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竹中ナミさん 昭和23年10月神戸市生まれ。障害者(チャレンジド)を自立支援する社会福祉法人理事長。エイボン女性年度賞、教育賞、総務大臣賞など受賞。主著は『プロップ・ステーションの挑戦』(筑摩書房、11年テレコム社会科学賞受賞)、同英語版『Let's
be proud!』(Japan Time、大修館『高校3年生用英語教科書』採用)、共著に川勝平太編「居心地のよい国ニッポン」(中央公論社)、筑紫哲也編「志の開拓者たちよ!」(日本経済出版社)など。『20世紀を彩った女たち』(集英社)にも登場。産経新聞、朝日新聞などに小論執筆中。http://www.prop.or.jp |
――ご本では番頭さんの話が面白かったです。
ナミねぇ スタッフは9人やけど、ボランティアから専任スタッフになってくれた鈴木重昭さんはすっごく几帳面。大雑把で、めっちゃハッタリかましたり、風呂敷を広げまくる私とは正反対。
壮絶なバトルはしょっちゅう。例えば朝の掃除は全員9時半に集まって行う。分担があって私は雑巾がけがノルマ。早く着いてメールチェックしている間にだれかが水汲みにいくと、すかさず「あんた代表ですよ。しめしがつかないでしょ」「だって早く返事したいねん」といってもあかん。「メールは待てるでしょ!」。
宛名シール貼りも、新聞切り抜きも、私が100%まっすぐと思っても番頭にみせるとボツ。悔しい!
でも私は講演会でよく言うの。「どんなNPO(民間非営利団体)も外で走り回ることが得意な企画力、営業力がある人と、中で細かいことをする人がいたら成功する」。仲良しさんが集まった組織はつぶれてる。組織には自分と違うタイプが必要で、彼は大番頭や。
だけど、頭ごなしに叱られるとムカーッとする。後からどついたろか! と腹が立ったら、「これは修行や、耐えたらひとまわりもふたまわりも深い人間になれるはずや」って唱えてる。
――お嬢さん、元気ですか。
ナミねぇ 麻紀は重い脳障害を持って生まれて、つかまり立ちをして、少し歩けるようになったのが7、8歳くらいから。そのころから抱っこすると自分から体を寄せてくれるようになった。すっごいかわいかった!
30歳の今は足をガシッとからめて完全なおんぶができる。
ゆっくり進んでいるけど、彼女の存在すべてがさまざまな目線や考え方、発想法を与え続けてくれた。
みんな、それぞれの存在価値があり、役割がある。多くの人に出会ったけれど、働く機会の少ないチャレンジド、育児中の女性、ご年配の方たち、みんな思いは同じやねん。フルタイムでなくていい。短時間でも、通勤が無理でも、体調を気遣いながらでもいい。企業戦士だけではない、さまざまな働き方がこれからの日本には必要なんや。
もちろん、仲介役のプロップ・ステーションがコーディネートをしっかりやって、納期を守り、質の高い仕事をすることが大事やけど。
――仕事の内容は。
ナミねぇ ポスターやパンフレット製作、アニメーション製作、キャラクターデザイン、ホームページの製作、販売管理や教育機関用成績管理システムなどのデータベース製作、プログラム開発、CAD(コンピュータ援用設計)やバース(透視図)の設計、DPT(MACを使った編集作業)。セールストークは「ええ仕事しまっせ!」。
――何人ぐらい控えてますか。
ナミねぇ 1,000人くらい受講して100人以上が実際に働いている。もっと仕事がほしい。自民党の幹部にね、この間の総裁選に出てはった人やけど「金はいらないから仕事ください」って言ったら、「補助金ください」と陳情ばかりの世の中で驚いたって。でも、みんな納税者になって、本当に働くことができない人たちと一緒に支えあう社会になったら、日本も安泰や。
自分で働いて収入を手にしたとき、みんな例外なくこういうねん。「年金を振り込まれたときと、働いて得た報酬を振り込まれたときとでは、お金の価値が全然違う」。みなさんの仕事も1個でいいからアウトソース(外部委託)してくださ〜い。
(聞き手/本誌・牛田久美)
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