公明新聞 2003年9月9日より転載

     
  対談 熱く語る  
 
皆で支え合う安心社会
 
 

 


 高齢化が急速に進む中、活力があり安心できる社会を築く政策の展開が求められています。障害者の就労を支援する社会福祉法人「プロップ・ステーション」の竹中ナミ理事長と、公明党の北がわー雄政務調査会長(衆院選予定候補=大阪16区)が、だれもが持てる力を発揮し支え合う「ユニバーサル社会」の実現について語り合いました。

 

北がわ 高齢者が活躍できる場をつくる
竹中ナミさん
社会福祉法人「プロップ・ステーション」理事長
北がわ一雄氏
党政務調査会長、衆院選予定候補=大阪16区
竹中ナミの写真
北がわ一雄氏の写真
たけなか・なみ
1948年、兵庫県神戸市生まれ。コンピューターを活用して障害者の自立と就労者を支援する社会福祉法人「プロップ・ステーション」理事長。著書に「ラッキーウーマン」など。
きたがわ・かずお
1953年、大阪府生まれ。50歳。創価大学法学部卒。弁護士、税理士。衆院当選4回。党政務調査会長。衆院国家基本政策委員会理事。元大蔵政務次官。衆院科学技術委員長など歴任。
竹中 チャレンジドが誇り持てる国に


 北がわ 竹中さんは障害者を「チャレンジド」呼び「チャレンジドを納税者に」のスローガンを掲げて障害者の自立や就労支援の活動をされていますね。「チャレンジド」という言葉には、どのような意味が込められているのですか。

 竹中 10数年前に米国で生まれた造語なんです。挑戦(チャレンジ)という使命や課題、チャンスを与えられた人を意味します。障害をマイナスとしてとらえるのではなく、「自分の課題に向き合う人」という前向きなとらえ方から生まれた言葉です。

 この言葉の意味を知ったのは阪神・淡路大震災の直後でした。自宅が全焼し、仲間もみな被災者という状況の時に、米国の支援者から「日本でいう障害者だけを表すのではなく、震災復興に立ち向かう人もチャレンジド」というような幅広い使い方もする言葉だと教えられました。

 北がわ なるほど。単に障害者だけを意味する言葉ではないんですね。

 竹中 「何らかの困難に向き合う力を与えられた人」という意味合いが根底にあります。多くの人にこの言葉と意味を伝えたいと思っています。

 北がわ これからの時代を切り開く素晴らしい言葉ですね。この考え方は、障害者の自立支援だけではなく、高齢社会への対応についても当てはまると思います。いま日本社会の中核でで活躍している団塊の世代は、あと5年ほどで定年を迎え、10年ほどで年金受給世代となりますその超高齢社会の中で、活力があり安心できる社会をつくるためにはどうすればいいのか。これが大きなテーマとなっています。

 まずは、従来型の高齢者のイメージを変える必要があります。つまり、高齢者を「社会に支えられ、サービスを受ける側」としてのみとらえるのではなく、高齢者も能力を発揮し活躍できる場を日本社会の中につくるべきだと思います。

 竹中 同感です。高齢化が進めば、高齢者を守り支える側の人は少なくなります。それをどうするのかという危機感が、私の活動の出発点です。

 私の娘は重症心身障害を持っています。「チャレンジドであっても仕事ができ、高齢者を支える側に回れるような活動をしよう」というのがきっかけでした。

 北がわ 「プロッブ・ステーション」の活動には、何人ぐらいの人が参加されているのですか。

 竹中 スタッフは10人ほどで、そのうち7人はチャレンジドです。IT(情報技術)を活用して、チャレンジドが自分の力を世の中に出すことに挑戦しています。1991年に発足して既に1000人以上がプロップ・ステーションを通じてコンピュ―ターの講習を受け、去年1年間では約100人が仕事に就きました。だれもが持てる力を発揮し、誇りをもって社会参加できる「ユニバーサル社会」を目指しています。

 


ユニバーサル社会へ法整備を 竹中
対談の写真
だれもが持てる力を発揮できる社会の実現について語り合う竹中さん(左)と、北がわ氏
民間の力を政治がサポート 北がわ


 北がわ 米国には障害を持つ人への差別を禁止し、社会参加の機会平等を保障する「障害を持つ米国人法(ADA)」があります。連立与党のブロジェクト・チームでは、日本版ADAといえる「ユニバーサル社会形成推進基本法」(仮称)の法案づくりに取り組んでいます。これは障害の有無だけでなく、性別、年齢にかかわりなく働ける社会の実現を目指すものです。国会に提出して成立できるよう、私自身もしっかり頑張っていきます。

 竹中 人の意識と社会の制度は表裏一体の関係です。「ユニバーサル社会」という新しい考え方が制度化されれば多くの人の意識が変わると思います。立法化に踏み出した与党の皆さんに期待しています。

 北がわ 竹中さんの活動から私が教わったのは、国や県や市、いわゆる「公」がすべきことば、「民間の持っている力を発揮しやすいようにしていくこと」だということです。

 国や県が直接何かをすることが必要な場面も多々あるとは思いますが、これからの時代は民間の力をもっと出せるような環境や条件、価値観をしっかりつくっていくことが「公」の仕事だと感じます。

 竹中 「民」と「官」の役割分担が重要ですね。官が大きな権限を持つ日本では、「公益に資することは何でも官にやらせればいい」という考え方が根強いです。でもこの考えは自治ではなく、主権在民でもありません。「自分たちの課題は自分たちで解決する」という考えは、阪神・淡路大震災の後でやっと生まれてきました。

 あれだけ大きな震災であったがゆえに、官の力だけでは何もできないという事態が目の前に起きたわけです。その時に、「自分たちの生活を良くしていく行動は自分たちで起こさなければ」ということに多くの人が気付いたのだと思います。被災地にいた私は、特にぞれを実感しました。

 北がわ 政治に対しては、どのようなことを期待しますか。

 竹中 国民は自分たちの生活がどうあればいいのかを考え、行動を起します。その中で、こうなったらいいなというビジョン(構想)が見つかれば提案します。その提案を受け止めて制度をつくるのは選挙で選ばれた議員の仕事です。それを役人が執行していく。国民、議員、役人がそれぞれの役割をきちっと果たすごとが大事だと思います。

 その意味で、公明党議員さんは非常によく現場を見て、現場から吸い上げたことを政策にしていこうとされるので、大変ありがたい。しかも与党として国の政策を動かす立場ですから、期待感は大きいです。

 北がわ 現在のような変化の時代では、永田町の世界に閉じこもっていては、新しい発想やアイデアは生まれません。現場にこそいろんな知恵があります。

 最近、全国各地の中小企業を回りました。現場の中小企業の人たちは不況で大変な中で、苦労しながら工夫をされています。知恵を出し、アイデアを出して頑張っている民間をサポート(援助)していく。それが政治の大事な仕事です。徹底して動き、現場を回っていきたいと決意しています。

 竹中 大変な激務だと思いますが、一層のご活躍を期待します。

 北がわ ありかとうございます。頑張ります。