日経産業新聞 2003年12月22日より転載

 

 
 
チャレンジドや高齢者が
元気で誇り持てる環境へ
 
 

 

竹中ナミの写真
プロップ・ステーション理事長 竹中 ナミ氏


 日本において障害を持つ人たちは主に福祉施策の対象とされ、手を差しのべてあげることが重要…。つまりチャンスより保護の必要な人たちと位置づけられてきました。しかし、プロップ・ステーションでは、チャレンジド(障害を持つ人)の持つ意欲や可能性に着目し、情報技術(IT)によるコンピューターネットワークを活用して、自立や就労促進、社会への貢献を目標に活動しています。

 そんなプロップにとって12月9日の「障害者の日」は、チャレンジドや高齢者が誇りを持って働ける環境をつくり、社会で活躍できるようにしよう! という福祉観に日本が変わっていく一里塚であって欲しいと思っています。

 プロップのチャレンジドは「ITは自分たちにとって、人類が火を発見したほどの革命的道具だ!」と語っています。ITを活用してコミュニケーションの輪を広げ、社会と繋がり、在宅や施設に居ながらも仕事ができる時代が来たことを、本当に喜ばしく思います。プロップでは様々なレベルのコンピューターセミナーを開催するとともに、企業や行政からの仕事を受注し、個々の能力に応じて仕事ができるようなコーディネートの仕組みを構築してきましたが、この仕組みが社会システムになるよう制度づくりにも取り組んでいます。

 道具といえば車いすに対する考え方の変革も重要です。日本では長時間車いすに乗っていると背骨がゆがんできたり、床ずれができるなど、体の状態が悪くなるのは「障害者の宿命」といわれています。でも米国やスウェーデンでは、チャレンジドが働くことを前提とし、身体状況の悪化を防ぐことのできる車いすの開発が盛んです。日本でも介護や福祉の受け手であったチャレンジドが提案者となり、それを担う職業人であったりする時代がくることを私は期待しています。

 いまは世界の様々な情報がインターネットで瞬時に入手でき、情報を持てば人は自分自身を変化させることができます。情報から遮断されていたチャレンジドたちにとって、まさに大きな社会変革が起ころうとしています。働くことでだれかの役に立ちたいという気持ちは、人間ならではの素晴らしい感覚です。チャレンジドや高齢者が誇りを持って、社会を支える一員であることが出来るような、そんな日本にするために、これからも努力を続けたいと思う私です。