[up] [next] [previous] |
大阪日日新聞 2002年11月20日より転載 |
人物 なにわ点描 | ||
チャレンジドを納税者に
|
||
プロップステーション理事長 竹中 ナミ(神戸市東灘区)
|
||
|
||
|
障害者が誇りを持って働くことのできる社会にしたい−。竹中ナミ(たけなか・なみ)が理事長を務める社会福祉法人・プロップステーションは、コンピューターとIT(情報通信技術)を使って働きたいという意思を持つ、障害者のための組織だ。障害を持つ人のことをプロップステーションでは、神から挑戦することを与えられた人という意味の「チャレンジド」と呼んでいる。「チャレンジドを納税者にできる日本に−」。チャレンジドたちから「ナミねえ(姉)」と親しみを込めて呼ばれる竹中の一番の願いだ。 (奥本敬大記者) □ 眠っている力がもったいない プロップステーション設立のきっかけとなったのは、30年前に竹中が重度の心身障害を持つ子どもの母親になったことだった。どう育てていいのかわからず戸惑っていたが、医者は“治療できない”患者にはなにもアドバイスをしてくれず、看護婦にも同情されるだけだった。 自立と就労促進を目指す そんな竹中が「娘の気持ちを理解するため」に選んだのは、ボランティア活動に参加して、障害を持つ人たちと実際に触れ合うことだった。目が見えない人、しゃべることのできない人の気持ちはどんなものなのか、一緒に時間を重ねるうちに障害者たちが感じていること、なにをして欲しいのかがわかってくるようになったという。 ◇ ◇ ボランティア活動を続けていた竹中は、91年にプロップステーション準備会を設立する。それからの7年間、全国で活動するために必要な大臣認可を受けるため、プロップステーションの活動を知ってもらう地道な草の根活動を全国各地で続けた。98年に厚生大臣認可の社会福祉法人格を取得。本格的に「チャレンジド」の就労を支援するための基礎ができあがった。 企業から仕事を受託 これまでにプロップステーションのコンピューターセミナーに参加したチャレンジドは千人を超える。そのうち百人は実際に在宅で仕事をしている。チャレンジドたちの仕事は、プロップステーションのスタッフやセミナーの講師などがあるが、竹中は「理想の形」と話すのがセミナーに協賛してくれた企業から受託する仕事だ。チャレンジドがセミナーで育っていく様子を見てもらって、働けることを企業に知ってもらい、実際に仕事を請け負うシステムができあがりつつあるという。 □ コンピューターは打ち出の小づち チャレンジドたちにとって「コンピューターは打出の小槌(こづち)」「ITは人類が火を発見したのと同じレベルの変革の道具」と話すほど、コンピューターとITはチャレンジドの世界を広げた。障害があっても多様な働き方ができるんだということを知るきっかけとなった。 人と人とをつなぐこと チャレンジドの中の一人が初めて自分で働いて報酬を受け取ったとき「お金はこんなにも公平なんだ」と話したという。竹中は「まったく不可能だと思ってあきらめていたことができるようになったとき、人はすごい誇りを持つことができるのでは」と考えている。
|