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ガバナンス 2002年4月より転載

     
 
チャレンジドが「福祉」を変える!
 
 
 
 
第5回 ユニバーサル社会に向けて踏み出した第一歩
 
     


 これまで多くの方々の支援をいただきながら、プロップがやってきたこと。それらは少しずつですが、社会の理解を得て扉を押し開いてきました。でも私たちがスローガンにしている「チャレンジドを納税者にできる日本」というのは、最終的には政策として実現し、国のシステムに組み込んでもらわないと到達できない課題なんです。

 そうした意味で、先日、私たちにとって画期的なことがありました。2月18日に与党3党の女性議員政策提言協議会のなかに「ユニバーサル社会の形成促進プロジェクト・チーム〜チャレンジドを納税者にできる日本」(※1)が発足したんです。

 中心となっていただいたのは、浜四津敏子・参議院議員と野田聖子・衆議院議員です。「働くことにカベがあるのは女性も障害者も同じ」が持論の浜四津さんは、長年、弁護士としてアメリカADA法(※2)の研究をしてこられた方です。数年前に私が公明党の国会議員の皆さんの前に講演する機会があったのですが、その後、わざわざ神戸まで多くの議員さんを連れてプロップの現場を見に来て下さいました。

 また、野田さんは2人の重度のチャレンジドを秘書として採用し、「彼等の力を生かせないいまの日本は情けない」が口癖。彼女のパソコンの師匠はそのうちのおひとりだそうです。すっかり意気投合した私たちは、昨年から何度も打ち合わせを重ねて、ついに女性議員政策提言協議会のなかにユニバーサル社会を目指すプロジェクト・チームを設けていただくことになったんです。

 これまで、さまざまな方々に支援していただいてきたプロップですが、具体的な国の政策づくりを仕事にしている政治家の方々とのネットワークはこれが初めてです。

 私は本来、特定の政治集団や党派にくみするものではないし、そうであってはいけないとも思っています。ただ、理想の実現には政治の力が必要なことも事実です。超党派の、しかも女性議員が中心となってプロジェクトチームができたということは、日本のチャレンジドにとって大きな力ですし、私にとってもすっごく嬉しいことなんです。浜四津さんのおっしゃるとおり、働くことにカベがあるのは女性もチャレンジドも同じです。その共通認識を持つ人間たちから声を上げ、社会を変えていくということ。そこに大きな意義があると思うんですね。

 これから具体的な議論を始めます。男性議員も野党議員も巻き込んで、必ずいい結果を出したい、といまは胸躍る心地がしています。


(※1) ユニバーサル社会の形成促進プロジェクト
 2月18日、与党3党の女性国会議員21名で組織する「女性議員政策提言協議会」(会長、森山真弓・法務大臣)のなかに「ユニバーサル社会の形成促進プロジェクト・チーム」が発足。同日、参議院議員会館で記者会見した。すべての人が能力を発揮できる社会づくりを目指し、障害者の自立支援に向けて、教育・雇用・労働行政を連携させて共生社会の構築を図ることが目的。具体的な取組みとして、現在の関係各個別法の精査(???)を図りながら、将来的には「チャレンジド基本法」の視野に置くとしている。座長には野田聖子・衆議院議員、副座長には浜四津敏子・参議院議員が就任した。竹中ナミ氏は発令式
で基調講演を務めた。

(※2)ADA法
 「障害をもつアメリカ人法」と訳される。日本でいう障害者基本法、障害者雇用促進法、ハートビル法、交通バリアフリー法をひとつにしたもの。90年、ブッシュ大統領(当時)がサインして移行された障害者への差別を明確かつ包括的に禁止した法律。4つの柱があり、雇用・公用サービス(移動)・公共施設・テレコミュニケーションについて想定しており、違反者に対しては損害賠償や権利回復義務などの罰則規定が設けられている。


 

たけなか・なみ 
1948年、神戸市生まれ。娘が障害をもって生まれたことをきっかけに、以後30年にわたっておもちゃライブラリ運営、肢体不自由者の介護をはじめ、各種のボランティア活動に携わる。91年、コンピュータとインターネットを利用したチャレンジド(障害者)の自立と就労を支援するNPO「プロップ・ステーション」を立ち上げ、99年、社会福祉法人格を取得、理事長に就任。その活動には行政をはじめ経済界、研究者の間でも支援の輪が広がっている。著書に『プロップ・ステーションの挑戦−「チャレンジド」が社会を変える』(筑摩書房)。

社会福祉法人 プロップ・ステーション 
TEL 078−845−2263   E-mail nami@prop.or.jp   HP http://www.prop.or.jp