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週刊ポスト 2000/10/20・秋の感謝特大号より転載 |
世界の読み方(第925回) |
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竹村 健一(Kenichi Takemura) |
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IT時代に障害者の在宅勤務と納税を可能にするバリアフリーのための「チャレンジド革命」
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<社会福祉法人『プロップ・ステーション』竹中ナミ理事長に聞く>
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「神様から挑戦される人々」 |
竹村 プロップ・ステーションのキャッチフレーズは「チャレンジドを納税者にできる日本」だそうですね。このチャレンジド(challenged)って、どういう意味ですか? |
スウェーデンの国営企業「サムハル」とは |
竹村 日本では、民間企業〈従業員56名以上〉における障害者の法定雇用率を1.8%と定めている。だか、その現実を見ると、企業側はとにかくこの基準をクリアするために障害者を形式的に雇っておこうといった意識が強いようだ。 竹中 障害者側にも基準をクリアするために自分たちを雇えという意識が少なくない。 竹村 障害者も働ける人は働く。50万円だろうが1000万円だろうが、とにかく働いて収入を得た人は国民の義務として税金を納める。それもバリアフリーの考え方だと私は思うね。障害者に対する労働と納税のバリアを取り除かなければ。 竹中 たしかに企業の人事担当者は、「ウチは〈法定雇用率の〉ポイントが少し足りないので、誰かいい人はいませんか?」という相談にくる。「どんな仕事ができる人が必要なんですか」と聞くと「とりあえずポイントが不足しているので、車椅子の人を」と返ってくる。これには怒りを通り越して呆れるしかない。 そうではなく、企業側から「こんな仕事をしてくれる社員がほしい」、チャレンジド側からは「自分はこんな仕事がしたい」という声が聞かれる社会に変わっていく必要がある。 竹村 海外に参考になる国はあるんですか? 竹中 スウェーデンでは、30年ほど前に、サムハルという障害者の雇用を目的にした国営企業が生まれています。この企業は社員3万2000人のうち2万9000人がチャレンジドで、家具製造を中心に年間売上高は約1200億円にのぼります。 竹村 障害者の雇用促進を国全体で進めているんだね。 竹中 プロップ・ステーションでは、企業や自治体に働きかけてチャレンジドの仕事を受注している。グラフィック、プログラム、翻訳などの受注してきた仕事をチャレンジドたちに割り振ります。発注側からの細かい仕事の指示なども、全部ネットワークを用いています。 たとえばホームページ制作の場合、文字入力やグラフィックなどの作業を、それぞれ得意な人が担当します。中にはベッドから起き上がるところから介護が必要という人もいますが、パソコンを使えば在宅勤務が可能です。すでに40〜50人の、さまざまな障害のあるチャレンジドたちが活躍しています。 竹村 つまりIT時代の到来で在宅勤務の障害者の仕事も増える。まさに「チャレンジド革命」だね。ただ一社会福祉法人がやれることには、限界がある。スウェーデンの成功例もあることだし、関係省庁や企業側の意識革命が待たれるところだ。 |