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ワンパーセントクラブニュース 1998年12月号より転載



     
 

地域社会との共生を目指す
関西電力樺n域共生本部の活動

 
     



 

 関西電力が行う社会貢献活動は地域共生本部にある地域共生グループが担当です。同本部は、「共感を重視する経営」の経営理念のもとに、企業活動のあらゆる側面でお客様や地域社会との「共生・共感」の具現化をめざし、全社的に方向づける部門として1993年に発足しました。その活動は従業員啓発、広聴活動、組織間調整、地域振興、社会貢献活動など多岐にわたっています。絹川正明地域共生本部副部長は部門発足の一年前、人事異動で本社の課長にと呼ばれ、社会貢献特命課長の任命を受けました。それがボランティアの担当課長と聞いた時に、「こんなつまらない仕事をさせて!」と思ったそうです。青森、富山、姫路と電力事業の第一線を歩いてきた絹川さんは、「ボランティアやる暇があったら仕事せぇ!」と言っていたタイプ。「当時は正直言って、ボランティアやっている人間は少し変わった人やと思ってました。一般のサラリーマンと同じ感覚だったのですね」。「まあ3年の辛抱かな」との思いに反して、今年で6年目。当初は気乗りしなかった仕事でしたが、初めて参加したボランティア活動の鮮烈な体験に、企業と異なる社会にもう一つの軸足を持つ大切さを実感しました。また、大阪ボランティア協会で開催される企業の社会貢献担当者の勉強会「リンクアップフォーラム」にも積極的に参加。会社の外で培うネットワークの重要性も認識したと言います。今では、関西電力の社会貢献といえば絹川副部長と、社内外で高い評価の活躍をされるお一人。ここでは「企業の社会貢献とNPOの関係」について、絹川副部長の中心にまとめました。関西電力の社会貢献については、別表の体系図をご参照ください。
 
地域共生活動はフィランソロピー+3S
 
関西電力では電気を使うお客様と地域社会はイコールの関係と位置づけています。発電所、変電所、配電、送電、などすべての部署は面として地域社会と密接な関係があり、地域への貢献活動は、それぞれの事業部署で日常的に実践されていました。地域を大切にするマインドは全社の各セクションにいきわたっていたと言えるでしょう。関西電力の企業風土から考えると、企業の行う「社会貢献活動」は、「地域共生」という言葉で表現する方が受け入れやすい名称でした。一般的に企業の社会貢献活動は寄付と、自主プログラム、社員のボランティア活動支援の三本柱。しかし関西電力が進めている地域共生活動は更に深い意味があると絹川さんは言います。なぜなら、地域共生活動は社会貢献活動と企業の社会的責任を一体のものとして進めるもの。「必ずしも社会に対する満足を高めるだけでなく、お客様の満足を高め、従業員が生き甲斐をもって働き、さらに社会参加していく視点、即ちSS(社会の満足)CS(お客様の満足)ES(従業員の満足)の3S(満足)を高める活動。社会貢献は本業から離れたものではなく、もっと本業と一体となってやっていくもの。新しい企業の社会的責任というものではないか」と絹川さん。
 
地域共生本部は経営の中枢に影響を与える存在
 
 企業の中で社会貢献を担当する部署はいずれも小規模で、それだけに組織の中で浮き上っては何もできません。組織全体にどのくらい影響力を与える存在かが重要です。社会の中で実験的、先駆的に多様な活動を行うNPOについても、担当部門だけで評価するのではなく、社内の大きな委員会などで企業とNPOの関係性をきちっと位置づけていく。経営にどれだけコミットしていかれるかが問われます。しかし、いきなりNPOだNGOだと言っても大抵の企業では通用しません。社内で理解できるよう説明するのも担当ラインの役目。関西電力では21世紀にむけた企業のチャレンジプランを作成しています。この中で、絹川さんは「これからの日本社会の中では、NPOやNGOの存在は非常に大きなものになるはず。市民団体と企業との関係性をきっちりと位置づけていくのも地域共生本部の役割」と、現在6部門合同の委員会をつくりNPOの現状把握からパートナーシップのあり方まで、幅広く調査・研究を行っています。NPOやボランティア団体が地域社会の中で大きな存在になり、有力なステークホルダーであること、関西だけでも和歌山県に匹敵するボランティア人口があるなど、社内で理解を求めやすい説明を心がけています。
このプランは1年がかりで、全社的見地で推進するもの。社外のさまざまな組織、個人とのネットワークと共に、社内各部門に対する方向性の明示とリーダーシップなど企業人としての力量が問われます。
 
21世紀に誇れる高齢者福祉施設の設立
 
 関西電力は1999年11月竣工予定で、高齢者福祉施設の建築を進めています。この施設は、特別養護老人ホーム、老人保健施設、ケアハウス、在宅介護支援センター、など高齢者福祉をすべて網羅したかたちの大がかりなもの。いわば一つの街づくりにあたります。阪神・淡路大震災で崩壊した従業員向け福祉厚生施設跡地の有効活用を図るため、地域密着型企業として、社会貢献・地域共生の観点から、高齢社会に向けて老人福祉の向上に寄与しようと設立するものです。
絹川さんは県行政との窓口を引き受けるとともに、プランづくりにも積極的に関与。「このプランのコンセプトは『環境共生』『市民参加』、それからさまざまな人々をつなぐ『ヒューマンネットワーク』の三本柱です」。新機軸がたくさんありますが、アイデアの多くをNPOやボランティア団体からいただきました。例えばコンピュータの活用で障害者の就労を進める「プロップ・ステーション」(活動内容は次章で紹介)からは、施設でのワープロやパソコン教室の講師に車いすのメンバーを、高齢者介護ボランティア団体からは「福祉用具リサイクル工房」の設置を、環境団体からは雨水利用や生ゴミなどの処理システムを、と言った具合。これ以外にも施設運営をバックアップするボランティア団体が新しく結成されるなど、夢は実現にむけて大きくひろがっていました。絹川さんは演芸同好会の代表で、時には落語や漫才の相方、司会もつとめます。関西では「これはおもしろい人間やなと感じると異質なもの、正反対なものも、取り込んでしまう度量と言うか、余裕がある。企業とNPOの関係にもいえると思います。関西のお笑いに通じているのかな?」。懐の深い関西文化を明快に説明していただいたインタビューでした。
 
チャレンジド(障害者)を納税者に!「プロップ・ステーション」の挑戦
 
 プロップ・ステーションはコンピュータとインターネットを媒体として障害者の自立にむけた就労を支援するNPOです。プロップとは「支え合う」という意味。またプロップ・ステーションでは『神様から挑戦すべきことを与えられた人』と言う意味を込めて『チャレンジド』と呼んでいます。代表の竹中ナミさんは、通称ナミねえと呼ばれるパワー溢れる女性。一人娘が重度心身障害者であったことをきっかけに、20年以上にわたって各種のボランティア活動に携わりました。そして1991年、障害を持つ人、持たない人が力を合わせて生きていける社会の創造を願って、大阪ボランティア協会内に机を一つ置かせてもらったのが組織の出発。「大阪ボランティア協会は知名度が高く、そこに机があるだけで信頼していただける。すごく大きなメリットでした」と竹中さん。立ち上げ時のアンケートに「コンピュータは武器になる」と答えたチャレンジドが多数だったことから、コンピュータとネットワークが活動の柱になりました。プロップの活動の第一はチャレンジドと高齢者を対象したコンピュータセミナー。取材日はIBM大阪システムプラザでの「インターネットホームページの制作」。生憎の雨の中、定刻六時半には車いすの方々や高齢者で教室は満席、活気に溢れていました。講師は松下情報システムの岡善博氏、助手はチャレンジドの岡本さん。ポリオの後遺症で使えない両手の代わりに、足で器用にマウスを操作しての熱心な指導ぶり。とても印象的でした。プロップのセミナーはいつも晩です。理由は、プロのコンピュータ技術者に来ていただくには、仕事後でないと無理だから。「ボランティアをお願いするには、相手が来やすい状況を作ることが原則。それと無償の行為には、何かそこで達成感が得られないと続かない。プロップがセミナーを始めたのはバブルのあと。丁度SEの方々も会社以外に何かを求めていた時代だったのかもしれません。スキルが活かせる場があると、すごい人たちが集まってくださった。来やすい時間帯で、コンピュータで、"えっ!こんな人たちが出来るの!!"と思っているチャレンジドがぐんぐん伸びていく。教える意欲が湧いて先生も燃え、チャレンジドも必死でついていきました」。初期の受講生チャレンジドが今では講師を務め、企業からの仕事も請け負います。
竹中ナミさんは、「何かしたいと思うと、そういう人が必ず現れる。すごい人に恵まれている」と言います。セミナーでパソコンが必要だった時は、アップル社に関わるボランティア氏の紹介で、5台の依頼に、間違って10台の寄付を受けました。必要なときに、企業人、自治体や官庁、大学教授など多くの支援者が現れています。マイクロソフト社の成毛真社長もプロップ応援団のお一人。同社にはチャレンジドが在宅社員として2名採用され活躍しています。関西電力の絹川副部長は、同社の記念事業のひとつとして行われた「電気と夢」のテーマ作文にコンピュータ・グラフィックで絵を描く仕事をプロップに依頼。作品は創造力溢れる見事な出来栄え。主催した関西電力もチャレンジドの参加を通じて、企業の社会的評価を高めました。今はNTTのホームページ「ハローボランティア」の中で「チャレンジドの夢」というリレーエッセイとイラストも担当して、新しい仕事に燃えています。 企業との良き関係づくりの秘訣は「過剰な期待をしない。自分の力量の範囲でしか仕事を引き受けない。超えたらコケますから。支援してほしいとは言わず、"こんな活動をしているなら支援してみようか" と企業が思う活動するのが先」と明快です。「恵まれた運を逃さないためには、常にアンテナを張り時代の要請を敏感にキャッチする。NPOは企画が勝負、つまらなければ自然淘汰される。世の中に選ばれるのがNPOですから」。
プロップは今年、社会福祉法人となりました。チャレンジドを納税者に!、理事長竹中ナミさんのエネルギッシュな活躍はまだまだ続きそうです。
 
プロップ・ステーションのホームページ http://www.prop.or.jp/
● 関西電力の社会貢献活動●
 
社会貢献活動
 
本業から一歩進んだ形での地域貢献
地域の一員としての貢献
地域の発展への貢献
経営資源を活用した社会貢献
従業員の活動への支援
 
「感謝月間」での社会貢献活動
「環境月間」での社会貢献活動
事業所での地域活動
設備と地域との共存
地域開発計画への参画
関係諸団体の人材派遣
新規事業への進出
環境保全
技術協力
研究助成
社会貢献活動(企業フィランソロピー的活動)
教育・文化・スポーツ支援活動(メセナ的活動)
従業員の社会貢献活動支援
 
文化財電気設備診断
独居老人宅訪問
植樹活動、資源リサイクル
清掃(美化)活動
地域行事の主催、参加
地域への施設開放
環境調和、環境美化
地域受容度の高い設備形成
関西国際空港、学研都市等
日経連、関経連等
通信事業、熱供給事業等
地球環境問題への対応
環境改善技術研究開発
熱帯雨林再生技術協力
海外への技術者派遣
「関西エネルギーリサイクル財団」の設立
福祉施設への寄付、慰問
子供人形劇、コンサート、カルチャー講座
民間非営利団体への支援
「かんでんエルハート」設立
スポーツ施設の一般開放、関電病院の一般開放
海外研修生受入、スポーツ助成
芸術文化イベント後援
「あかりコレクション」
ボランティア休暇、休職制度
マッチングギフト等
 

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