プロップの仲間には、福祉施設の中で起業した重度のチャレンジドが何名かおられますが、その第一号がこの川本浩之こと「わびすけ」くん。 もと自衛官という異色の経歴を持つ「わびすけ」くんが、モトクロスの事故で頚椎を損傷しチャレンジドとなったのは15年前。 プロップのコンピュータセミナーで学び、技術を身につけ、福祉施設を「SOHO基地」として働く「わびすけ」くんが、日々の暮らしを率直に語りました。 |
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上育堂最大の危機
ベッドの上で仕事をするにしても、体を起こしてもらい、パソコンのセットをしてもらい、そしてパソコンの電源を入れてもらい、すべてに介助が必要です。
施設スタッフの喜びは入居者の生き生きした生活です。私が仕事を始めるにしても何一つ異論・妨害はありませんでした。 こんな状態なので、上育堂開業時に私は何とかアシスタントの確保が必要となりました。ネット通販をするとなれば商品の管理、伝票の整理、書類の代筆と私の動かぬ手ではできない事が山のようにあるのです。これらのことを業務中の施設スタッフにやってもらおうなどと考えれば甘すぎます。
何より現実な問題は、上育堂に常時アシスタントを雇うだけの十分な資金も、見通しもありませんでした。頼みたい仕事も週に1〜2回、それも1〜2時間程度手伝って欲しいだけ。出せるギャラも交通費程度。この条件を呑んでくれるアシスタントはそう容易く見つかりません。
しかし彼女も大学の三回生、就職活動に入らなければならなくなりました。もういつまでもゆかりちゃんを都合よくアシスタントとして引きとめておくことはできません。ましてや上育堂は彼女を正職員として迎えるだけの力もありません。 これから私の「運」と「力量」が試されるのです。 上育堂最大の危機(2) もともと、ゆかりちゃんは私が入居している療護施設へ実習生としてやってきました。実習が終わってひと月ほどたったある日、ふらりとゆかりちゃんが施設に遊びに来たのです。ちょうど私は見たい映画があったので、ゆかりちゃんに映画の付き添い介助を頼みました。
後日二人で映画に行った日のこと、駅で切符を買おうとした時、ゆかりちゃんが自分の財布からお金を出そうとしたので、私は「出さなくていい」と言いました。 私の外出につきあった事で、ゆかりちゃんはボランティアのあり方について考えの幅が拡がりました。これなら彼女に上育堂のアシスタントを頼めると、私はゆかりちゃんにアシスタントを依頼することに決めました。
しかし、ゆかりちゃんが初めて上育堂のアシスタントをしてくれたときのこと、やはり彼女はギャラの受け取りを拒みました。このときは無理やり受け取らせましたが、このままでは彼女をアシスタントとして使う事ができません。
こうして私は、ゆかりちゃんという強い支えを得て約1年半上育堂を営んできたのですが、残念ながら、大学三回生となったゆかりちゃんは就職活動に入らねばならず、上育堂を離れる事になりました。私はまたイチから上育堂のあり方を理解してくれるアシスタントを探さねばなりません。 アシスタント探しに焦る一方、ゆかりちゃんを上育堂に引き止めることのできない自分を悔しく思います。私にしてみれば上育堂は私一人ではなく、ゆかりちゃんと二人で築いたものなのです。 ゆかりちゃんには、こう言いました。「上育堂を繁盛させて、いつか必ず重役にヘッドハンティングする。」
もしくは愛人・・・はは・・・・ |
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