作成日 1998年3月吉日
昨年10月にスタートした「在宅スキルアップ・セミナー翻訳者養成コース」が、迫田さん、服部さんという素晴らしいお二人の講師のご指導と、マイクロソフト社員会(ボランティア委員会)の皆さんのご協力により、厳しくもまた温かい雰囲気で進行しています。
全国から20名のご応募がありましたが、選考テストに合格された7名の方が現在メーリングリストを使って在宅で勉強を続けておられます。
しかし、このセミナー、開始後にすぐ大きな問題が発生しました。受講生のうち2名の方は視覚に障害(お二人とも、ほぼ全盲に近い状況)があるため、講師がオンラインで出す課題は音声装置で聞き取って解答できるのですが、自習用テキスト(日本工業英語協会の「工業英検2級対策」(1800円)を使用)が読めず、これでは他の受講生と同じ深さの勉強ができない、という状況に陥ったのです。
そこでこのテキストを発行される社団法人日本工業英語協会に、講師であり、プロの翻訳者でもある服部さんが相談を持ちかけて下さったところ「養成セミナー受講生が図書を購入した場合、その内容をテキストデータ化しても良い」という許可を戴き、MS社員会の皆さんがデータ化にご協力下さる、という体制をつくってセミナーを継続することができ、今日に至っています。
このセミナーへは社団法人日本翻訳者連盟からも「協力しましょう」という心強いお申し出を戴いており、今後の進展が期待されます。
インターネットなどの発達にともない、ますます国際化が進む日本において、翻訳の仕事は今以上にニーズが高まると思います。チャレンジドの在宅ワークの一分野として、翻訳の仕事が定着することを願ってセミナーを充実させてゆきたいと思います。
では、講師のお二人の自己紹介と、翻訳者をめざす人へのアドバイスなどを、メーリングリストから抜粋してご紹介しましょう! お二人とも、お忙しいご本職のかたわら、ボランタリーに講師を務めて下さっています。
英語が好き、あるいは得意なチャレンジドの皆さん、このアドバイスを参考にして、ぜひあなたも翻訳者セミナーに挑戦してみて下さい。ただし、選考テストのレベルはかなり高いので、覚悟してねっ(^^)
by ナミねぇ
いよいよ翻訳セミナーの開始です。参加いただきありがとうございます。
プロの翻訳者として身を立てることは簡単なことではありませんが、その分に応じたやりがいや価値があると思います。これからお互いに一生懸命頑張っていきましょう。
翻訳は職人の仕事です。年季(経験)が要ります。一般には、英語の読解力は英検1級の能力が基本的条件で、その上で一人前になるには自分の背の高さと同じくらいになるほどの原稿を翻訳しなければならないと言われているほどです。 ですから一流の翻訳者になるには最低10年から15年の経験が必要とも言われます。しかし在宅でできるということは大きな魅力ですし、完全に能力本位で年齢や性別にまったく関係ないことも翻訳の仕事のよいところです。
翻訳の場合、腕さえよければいくつになっても仕事がきれるということはありません。 ですから努力する価値は十分にあると思います。
以下によい翻訳者になるためのヒントをあげておきます。
一つの言語を自由自在に翻訳するということは不可能に近いほど至難のことです。死ぬまで英語を勉強し続けるという姿勢がないと成功しません。
英語ができれば翻訳はできると錯覚しがちですが、優れた翻訳者となるためには、英語力はもとより日本語力、言語的センスがきわめて重要です。近頃は翻訳者でなくても多少、英語のできる人は掃いて捨てるほどいます。翻訳者はコミュニケータであるということを忘れず、常に日本語を磨く心がけが必要です。自分が翻訳するジャンルを中心にいろいろな優れた日本語の書籍、新聞、雑誌などに意識して目を通すようにしましょう。
専門家レベルに近い知識があると「鬼に金棒」になります。 4.パソコンに強くなること。
翻訳者が紙に翻訳原稿を書く時代はとっくに終わっています。これからは、パソコンと通信に強くないと仕事はきません。
初心者のときはもとより、いつまでたってもわからないことだらけですから、良い知人を持つことは宝になります。自分で調べることも重要ですが時間やその他の制約上、どうしても調べきれないという時もあります。そういう時に頼れる知人がいるのは大変重要なことです。自分と世界の違う人とつきあいが多ければ多いほどいいということになりますね。できるだけい広く興味・関心をもつようにこころがけることです。
やはり翻訳に限らず健康第一です。体が資本ですから。どんなにすばらしい翻訳をしても納期に間に合わなければ仕事はまかせられません。実際、エージェントから「健康よりも原稿を」と催促されている方もいるぐらいです。(^_^) ですから「家でのんびりと翻訳でもしよう」というような気持ちでは、特に駆け出しのころは大変だと思います。
と、最初から脅かしてしまいましたが、これくらいの心構えで今後勉強に励んでいけば大丈夫です。(^_^)一緒にがんばりましょう! (中略)
できるかぎりわからないところは自分で調べてみて下さい。最初は大変かもしれませんが、調べるうちに調べ方がわかってきます。 やりながら方法は改善していきましょう。建設的意見があればお願いします。
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講師の迫田さん(左)と服部さん。プロップ事務局にて |
みなさん、はじめまして。講師のかたわれの迫田浩(さこだひろし)といいます。
私は兵庫県の西宮市内の県立高校で英語の先生しています。生徒からは英語の先生と言うよりも、「陸上の先生」と思われているかもしれませんが。(~_~;) 最近、芦屋の方から吹田市の方へ引っ越してきてやっと落ち着きかけたところです。吹田へ引っ越してきた理由はジョギングできる緑地公園がすぐ近くにあるからです。(^_^)
肝心の英語の方は英語の本やタイムはわりと読むのですが、翻訳なんてほとんどしたことがないので、みなさんといっしょに勉強していくという方が正確だと思います。きっと私もたくさん間違いをすると思うのできっちりと指摘して下さいね。
通信の環境は以下の通りです。MSN、SONETともISDNで接続しています。
通信はニフティの方はもう10年ぐらいしています。インターネットはまだ1年にもなりません。ニフティではCARPE DIEMというハンドル名ですでに名前がけっこう売れているので(?)、インターネットの方にも使わせてもらっています(CARPE DIEMの意味知っている人いますか?)。
この翻訳セミナーも服部さんと竹中さんに頼まれて(?)、実力もないのに駆り出された次第です。いろいろ不手際もあると思いますが、よろしくお願いします。
服部 優子です。年齢は・・・若いつもり、とだけいっときます。
このセミナーのボランティア講師をすることになったのは、とある所でナミねぇさんとお知り合いになったのがきっかけです。
あのナミねぇのエネルギッシュな話しぶりに何となく惹かれ、しかもちょうど非営利組織の経済学関係の翻訳をしていたこともあって、プロップに関心を持ち、迫田さんを誘って神戸のセミナーを見に行ったんです。そしたら、またまた、あのナミねぇのエネルギッシュな言葉に乗せられて、気がついたら講師になっていた、という感じです。
あっ、迫田さんは、私が地元(大阪の北千里)で2年前から主催している英語のディスカッションのサークルの、設立当初からのメンバーです。
ニフティに入っている方は見たことがあるかもしれません。今では迫田さんが毎月2回、fengの掲示板に案内を出してくれています。
そうそう、彼の自己紹介ではずいぶん謙遜気味でしたが、実は英語の先生といっても「ただ者」じゃないんですよ。ニフティではボランティアで英検一級合格セミナーを開いていたし、ずっと前の、先生になる前のアルバイト時代には、某全国有名大学進学予備校で関西地区の人気トップ講師だったとか。現職の高校英語教員としては、全国で数人のうちの一人として文部省に選ばれて米国留学を経験されています。近頃はといえば、いつも洋書を持ち歩いていて、驚異的なスピードで読んでるらしい、はい。私など、洋書なんて仕事でないと読まない怠け者とは大違い。あんまり言うと本人が怒るのでこの辺にしときます。
ところで、私自身は、現在フリーで産業翻訳や通訳のお仕事をさせていただいています。翻訳を仕事として始めたのは7年くらい前で、当初はある企業の翻訳部門に所属していました。
それ以前は、商社、メーカー、サービスといろんな業種でいろいろな仕事を経験しましたが、女性としてキャリアを、しかも自分が満足できるキャリアを一生続けていくのはなかなか難しいものです。最終的にフリーになったのも、ダンナの転勤と引っ越しや、出産、子供の入院・手術(長女は先天性の障害を左下肢に持っています)など、いろいろな「就労障害」があっても続けられ、なおかつ、やりがいのある仕事をと思って選びました。
そういう意味では、程度の差はありますが、就労に関して私もみなさんと同じ「Challenged」だと思っています。
最初に仕事として翻訳を始めた7年くらい前は、おもに、自動車や工作機械、電力関連の翻訳がほとんどで、技術系の翻訳をしていました。フリーで翻訳通訳を開始したのは、4年8ヶ月くらい前になります。それ以来、徐々に分野を広げていくうちに、今では専門は、経済、経営、ビジネス関連の法律といったところでしょうか。原稿のタイプは、レポート、論文、契約書、製品案内や広告などの販売促進資料、各種マニュアルなどほとんどすべてを扱っています。
最初は(今でも?)非常にきついスケジュールでも、何でも文句をいわずにやってきました。そのうち質も認められるようになり、現在はエージェント(翻訳会社)に重宝がられるようになっています。
翻訳は、自宅で悠長にできる仕事だと思っている人が多いように思いますが、それほど楽な仕事ではありません。(英→和)の翻訳についていえば、英語力はもちろん、日本語の表現力、論理性、いろいろな分野の専門知識を常に蓄積していく勤勉さ、わからないことを調べていく忍耐力、原稿の不明点などを放置せず、発注者にしっかり伝える誠実さ、納期を守る責任感などが求められる仕事です。このような能力や資質が求められる仕事だからこそ、在宅でできる非常にやりがいのある仕事だとも思います。
優秀な翻訳者はまだまだ不足していますから、翻訳は、チャレンジする価値のある職業だと思います。Challengedの中から、優秀な翻訳者がたくさん生まれることを期待して、みなさんのお手伝いをしたいと思っています。
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マイクロソフト調布技術センターにて、 講師とボランティア委員会の皆さんとの打ち合わせ |
揃えておきたい辞書・辞典・参考書を以下にあげておきました。決してすべてが必要というわけではありません。必要に応じて揃えていったらいいと思います。しかし全く何もないのは大きなハンディになることも覚えておいて下さい。「辞書はお金で買える実力」です。(服部)
とびっきりコストパフォーマンスの高い辞書を一つ紹介します。技術評論社が出している「ハイパー英語辞典」というものです。ニフティのライブラリからダウンロードすることも可能ですが、買っても2200円ですから、(省略)全部をハードディスクにいれても100Mにもなりません。以下に電子辞書を紹介します。
★印は特にお薦めです。
電子辞書(CDROM、電子ブック)
電子ブック版・リーダーズ英和辞典
★電子ブック版・リーダーズ+プラス
(収録語数45万語、現時点では最強の電子英和辞典)
電子ブック版・ジーニアス英和辞典
電子ブック版・大辞林
EB科学技術用語大事典・日外アソシエーツ
インタープレス版130万語大辞典
(ジャンル別の典拠付きで130万語、とにかく収録語が多いのが特徴)
EBコンピュータ用語辞典第2版・日外アソシエーツ
(10年ぶりの改訂でインターネット等の用語が追加された)
★マイクロソフト・ブックシェルフ'97
★マイクロソフト・エンカルタ
(最新版はインターネットと連携して引けます。「障害者という項目に、プロップの紹介があり、リンクされてます)
マイクロソフトコンピュータ用語辞典第二版(アスキー出版)
☆電子辞書を活用して辞書引き作業の効率をあげることは、重要なことです。
それに引きやすくなければ辞書は引きませんからね。スピードを要求される産業翻訳では特に重要です。
NIFTYserveで公開されているコンピュータ用語集(フリーウエア)
コンピュータ用語集リリース#5版(FHONYAKUデータライブラリ)
SUPER ASCII MAGAZINE Glossary Help '95(FASCIIデータライブラリ)
翻訳という仕事(ジャパンタイムス) 特に出版翻訳を目指す人には必読。
翻訳英文法(バベルプレス)
翻訳96のコツ(バベルプレス)コツを項目ごとに索引で引いて読める。
翻訳上達法(河野一郎著:中公新書)
頭からの翻訳法(亀井忠一著:信山社)
英日翻訳の基礎技法(小沢勉著: バベルプレス)
大学入試英文解釈その読と解(筒井正明著:駿台文庫刊)
英文法解説(江川泰一郎著:金子書房)英文法の名著。
★楽しい英文法(三友社)文法を易しく解説。基本的な文法に不安のある人は必読。
コンピュータ専門誌
朝日パソコン
★日経パソコン
日経バイト
洋雑誌
BYTE
★PC MAGAZINE
それからNHKの宣伝をするわけではありませんが「やさしいビジネス英語」は、安くて質のいい番組だと思います。「ビジネス英語」となっていますが、内容だけでも十分にアメリカのトレンドがわかりますからね。(迫田)