作成日 1998年3月吉日


障害者(チャレンジド)の在宅ワーク特集

"ええ仕事しまっせ!!"


バーチャル工房の現状と実績


なかむら ひろこ


1964年生まれ
学生時代に油絵を描いていました。10年ぶりに絵筆をマウスに換えての創作活動でした。この度はデジタルアートの特性を生かすことに重きを置いています。

 ちょうど2年前Macセミナーを見学した際、年賀状制作をされていました。パソコンといえば表計算やワープロといった認識しかなく、絵に自信のない私は思わず「絵が描けなければWindowsコースを選択したほうがいいですか」と ナミねぇに尋ねると、「結局やっていることは同じだから」と言われ、兄弟がMacを使用していたこともあり、Macコースを選びました。
 Macセミナーを受講させて頂くようになり、出てくるのはIllustratorやPhotoshopといった美術系ソフトばかり、大変な事になったというのが実感でした。その想いは今も変わりませんが、全く知らなかったこと、新しいことを次から次へと教えて頂き、驚きと感動の連続で夢中になってパソコンに向かっていました。手に障害がある者にとって、直線が簡単に描けるパソコンは魅力的に思えました。
 2年目に入り、突然アート展の作品を制作することになり、まだまだパソコンを使いこなせない状態の私は戸惑いました。先の見えない、手探りの状態でのスタートでした。9ヵ月間でボランティアの先生方のご指導を得て、無事数点の作品を完成させることが出来ました。この経験で大きな自信を得ることが出来ました。
 アート展の作品が完成し、一息ついた処に関西電力からのお話を頂きました。時間的余裕がなかった事、テーマが設定されていた事、何より「仕事」である事のプレッシャーがのし掛かってきました。半年前新しいパソコンを購入する際に「仕事をするようになればMOが必要」との助言を先生から頂きましたが、その時は仕事が出来ることが信じられなかったため、MOの購入を見合わせました。半年前に考えられなかった事が現実に起きているとは、まるで夢のようです。良いスタッフ、良い仲間に恵まれたことを幸運に思います。そして何より、ご自身の仕事を終えて私達のために駆けつけて下さるボランティアの先生方に感謝致します。
 私達に仕事を下さる方々は、最初は、社会貢献が目的であると思います。きっかけはそのような事でも、仕事を通じて徐々にでも、私達を対等な仕事のパートナーとして考えて頂ける方が増えていくことを願います。私達は多くの事を諦めてきましたが、納税者になることはまだ諦めていません。
 発足したばかりの工房です。皆様のお力添えをよろしくお願い致します。


くぼ りえ

大阪府枚方市在住。 生年月日 1974.11.8病名 ウェルドニッヒ・ホフマン病
3歳…絵画教室に通いはじめる
中学生…美術部に所属
高校生…美術部に所属
短大生…美術系の短大で日本画を学ぶ
1995.6…プロップMacセミナーに通いはじめる
1995.8…初個展を開く(枚方市市民ギャラリー)
1996…某会社のパッケージイラストの制作/某会社の記念事業で使用されるイラストの制作/インターネットのホームページで利用されるイラストの制作/某会社のポスターで使用されるイラストの制作など

 97年は、プロップ・ステーションでMacの勉強をさせて頂いた中で一番色々な事があった年でした。ちょうど1年前の1月から『Challenged Art 展』の準備で作品の制作を始めて10月には無事開催出来る事になったり、5月には自分の新しいホームページをオープンさせて頂く事になったり、関西電力さんからイベントのポスターイラストを描くお仕事を頂いたり、『第3回Challenged Japan Forum』に参加したり…。そして、何より私が一番驚いた出来事は、『Challenged Art展』に作品を出品したメンバーで力を合わせて工房という形でお仕事ををさせて頂ける事になって、しかも私がそのリーダーに指名された事です。今まで個人プレーでのお仕事しか経験がなかったので、もう何をどうしたら良いのか分からなくて、先生方やメンバーの皆に迷惑をかけてばかりでしたが、何とか全員で力を合わせて、そのお仕事も無事終了して、今ホッとしています。今年1年工房がどうなっていくか全く分かりませんが、とにかく経験も実績もない私たちにとって今出来る事は、悩みまくって失敗をたくさんして自分の腕を磨く事しかないと思っています。どこまで出来るか分かりませんが、とにかく頑張りたいと思っていますので、今後ともどうぞよろしくお願いします。


すぎもと むつこ

私は、小学校のときに高熱が出て障害者になったのですが、今だにはっきりした病名も原因もわかっておりません。小学校、中学校、高校と普通学校に通い、大学は通信で仏教大学を卒業いたしました 。それから、プロップでパソコンをさわってから2年弱の未熟者で、初めは訳もわからずただ夢中で覚え、作品展があると聞き一生懸命がんばりました。

 私は、正直いって工房の方々(すごいメンバー)の中で、その一員としてお仕事をさせてもらったという実感がまだあまりないんです。アート展でも、絵の技術など何もなかったので、最初の第1作品を作るまでかなり時間がかかりましたし、いろんな人にたすけてもらって、やっと完成、ホッとしてこれで少しゆっくりできると思っていました。今まで何枚も絵など描いたことがなかったので、かなり疲れていました。それで、アート展が終わればまた来期は、初級コースで1から勉強などとのんびり考えていたので、まさか工房のメンバーに入っているとは、夢にも思いませんでした。
 12月の関電の仕事もハードで、何度投げ出したいと思ったかわかりません。でも、アート展の時もそうだったのですが、作品を納めたあとのやり終えたという充実感はこたえられないものがありました。
 これからは、私も工房のメンバーの一員だと胸をはっていえるように、頑張っていきたいと思います。


よしだ いくとし

1957年生まれ。大阪府堺市在住。
「脳性マヒ」による肢体不自由。プロップ・ステーション会員。 プロップ・神戸プロジェクト・インターネットセミナー講師。マルチメディア クリエーター志望。堺市展洋画の部入選。第六回堺市美術新人展新人賞
不便な右手でもマウスを握れば、細密緻密、あるいはラフで大胆と、どんなことも出来てしまうパソコン画ですから、時間を忘れてしまうほど絵を描くのは楽しいです。

 「工房」。辞書で引くと芸術家の仕事場・アトリエと書いてありました。格好良すぎて照れてしまいますが、責任の重さも感じてしまう名称です。 昨年の秋のアート展では、多くに方々に自作のCGを観て頂き、嬉しさ半分、未熟さも存分感じてしまっていたので、工房発足の話を聞いたときは驚きよりも嬉しくなりました。というのは、独りパソコンに向かっていると好きなことであっても煮詰まってくることがあり、こんなことで、いいのか?不安になってくることがありました。それが、グループとなれば、相談しあい刺激しあいながら作業を進められるだろうと考えたからです。事実、工房の初仕事となった関西電力のアイデアコンテストでは、個人レベルでは到底、生まれなかったものが提出出来たかなぁと思っています。これから先「工房」も筆の誤りでは済まない多くの難問にも、きっと出逢うことでしょうが、メンバーの力をあわせれば何とかクリアー出来るかも知れない、そんな頼もしさも覚える今日この頃です。デザインは、色とかたちです。私たちメンバーの個性という色が、工房という器の中で磨かれ発光して一つのかたちを生み出していければと願っています。一同、頑張って良い仕事をさせて頂きますので、皆さん、よろしくお願いいたします。


こじま かよこ

大阪市住之江区在住。1974年11月14日生まれ
幼稚園を卒園した春に、突然高熱に襲われる。即入院し、「若年性関節リュウマチ(原因不明)」と診断される。その後、熱、病気を抑えるために使った薬(ステロイド剤)の副作用で太り、体重を支えきれず神経を圧迫し、胸椎の5番目を圧迫骨折する。それより車いす生活へ。脊椎の手術を受け2〜3年入院したのち退院。退院しても小学校へは通えず、訪問教育を受ける。小5の時現在の家に引っ越ししてから地域の中学校へ通えることになる。初めて学校というものに通うことになる。初めのうちは体調も良くなかったが、2年より普通に通う。無事卒業し、公立の高校へ進学。

 プロップに出会ってから早2年が過ぎました。その間にMacセミナーに通い、様々な技術を身につけてきました。はじめはパソコンに触るのも慣れていない状態で、わからないことも多々ありましたが、ボランティアの先生方に指導してもらいながら、何とか落ちこぼれずにここまでこれたと思います。そして、昨年1月からはチャレンジドアート展を開催するにあたっての作品づくりをしてきました。パソコンで作品をつくるのは、初めてだったのでなかなかアイディアが浮かばず、苦労しました。それにアイディアが浮かんでも、それを絵にする、形にする事もむずかしく、大変でした。それでも半年以上制作を進めていくと、作品がだんだん完成に近づくと、ホッとしてうれしくなってきました。そして昨秋アート展が開かれ、多くの方に見に来ていただき、感想をいただき、貴重な体験をさせてもらったと思います。そのアート展が終わってから、バーチャル工房としての初仕事を関西電力の方からいただきました。仕事を進めていくうえで、初めての事が多かったのでかなり不安と心配がありましたが、川畑先生をはじめ工房のみんなと一緒だったので、大丈夫だと思えたしやってこれたんだと思います。これから先、お仕事が順調に入るかどうかわかりませんがこれまで習ったことを生かして、工房のみんなと一緒に励まし合いながらやっていきたいと思います。


いのうえ まさとも


昭和27年 大阪大阪府生まれ
昭和47年 大阪府立堺養護学校高等部卒業
現在、大阪府立堺養護学校高等部講師、俳人協会会員,大阪俳人クラブ会員、俳句会「遍照」代表。著作、句集「風神」。(俳号 雅友)
 プロップステーションへは平成七年にパソコンの基礎からの勉強の為入会、自身の手で句集を作るのが「夢」であります。現在、パソコン通信のプロップネットにて『プロップ俳壇』というユーザーボードを開設していたのですがネットの都合で休眠しています。インターネット上で何らかの形で再開するつもりですので宜しくお願い致します。

 去年は私にとって面白い年でした。プロップステーションの「ChallengedArt展」に出品したこともその一つです。この展示会ではテーマである「チャレンジド」を「みち」に象徴させた俳句とそれに合う画像との融合を試みてみました。例えば「元旦へわたつみのみちしるべかな」という句があると、それに灯台の日の出の写真を少し化工して組み合わせてみました。これを我々はデジタル俳画と呼んでいます。それは正に一つの新しいジャンルを開拓だったのかも知れません。その意味においてプロップステーションに感謝して居ります。「Art展」が終わり、私も「工房」の一員にとのお話があり、関電の仕事が入ったとお聞きしましたが私は今回の仕事は都合により休ませて頂きました。只、外からみていると仲間の頑張りに頭の下がる思いで一杯でした。今後は私の出来る範囲で「工房」に力を入れて行く積もりです。


いしだ けいすけ

1959年大阪府泉大津市生まれ。
文学部国文学科卒。大阪市在住。
仮死状態で生まれ、後遺症として障害が残る。全身麻痺で、己が意志に反して手が動く。言語障害あり。幸いにして不自由ながら歩行は出来る。パソコンは高校卒の頃より独学で習得。パソコンで大学の卒論を書き、それを母に規定の原稿用紙に清書してもらう。俳句は約10年になる。師匠のご指導の下、賞を頂ける力が付く。著書に句集「猫の恋」。現在大阪府立堺養護学校高等部の時間講師、プロップステーションのインターネットセミナー講師、企業のホームページ作りをしている。他に妻と二人で自費出版やパソコン指導等を請け負う工房「圭優堂」を設立。(俳号 京愛)

 プロップ工房には途中から参加しました。「チャレンジドアート展」というグループ展が開催されると伺い、参加させて頂いた次第です。動機は、以前から漠然とアートがしたいなと思っていましたが、手がことのほか自由が利かないため、デッサンもからっきしダメで、諦めておりました。しかしここ数年来のデジタル技術の目覚ましい進歩のお陰で絵が描けなくても想像力と根気さえあれば「デジタルアート」というジャンルのアート作品を創造できるようになりました。幸い私には「俳句」という創造物をほんの少しだけ人よりも生み出す力があります。俳句はビジュアル的な要素が多分に含まれています。デジタル技術は私のこの唯一の能力をアートに活かせるのではないか、と思い、「チャレンジドアート展」に出展しました。「チャレンジドアート展」には俳句を全面に押し出しつつビジュアル的にも「見せる」点に注力しました。今回の関西電力のお仕事は工房としては初仕事になる訳ですが、仕事のノウハウから蓄積せねばならなず、大変でした。ビジュアルのお仕事は大変ですが、あれこれ想像し、それを「デジタルアート」へ創造出来るのは大変魅力的かつエキサイティングなことだと感じています。私の夢は「デジタル俳画」の第一人者です。


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