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作成日 1997年7月6日

こんなことしてます BBさんのパソコン要約筆記

米田 勉(ハンドルネーム・BB)

◆ パソコン利用による要約筆記活動

 最近聴覚者向けにパソコンを使用して情報保障活動を行うことが増えてきています。こうした試み自体は、数年前から徐々に各地で行われてきていますが、その中で私が関っている部分の紹介を行います。

◆ 概要

 講演会・パネルディスカッション等において、発言者の言葉を会場の音声により聞取り、話す速度が遅い場合は全文、早い場合は要約を行いパソコンに入力し、その表示をもって聴覚障害者に対して情報保障を行うもの。

◆ 活動に入った経緯

 ニフティサーブのFHANDフォーラムで平成6年1月からTVに字幕を付ける試みがスタートしていて、私も参加していました。これはリアルタイム会議機能(RTやチャットと呼ぶ機能)を利用して、多人数でTVドラマのセリフを聞取り入力し、通信上にそのまま流すことで同じ機能を利用している聴覚障害者向けに、TVドラマを楽しんでもらおうという試みで、現在も続いています。(便宜上「字幕RT」と言っています。2月現在主な番組は「バージンロード」「踊る大捜査線」「今君が人生の時」です。なお、この字幕に参加したきっかけは、別フォーラム(FCB)のRTで雑談をしていた時に、字幕RTの発起人の一人から勧誘されて遊びにいったことから始まっています。
 そして、平成6年6月頃、「字幕シンポジウムin名古屋」の実行に関った方がFHANDに対して、情報保障への協力要請が来たことから前述の字幕RTを引き続き入力していたメンバーや、手伝ってみたいという人がメンバーになりました。そして平行して入力環境をどうやって手配するか? ということになりLANカードや電話回線網を引いてしまうとか、MACを利用するとかの案が出ていましたが、ここで私が ULACS-K(超近距離キーボード会話システム)を推奨し同時に借用について交渉した結果、快諾されたことからU-LACS-Kでやることになりました。
 この「字幕シンポジウムin名古屋」以降、この時の成果を見学に来ていた人達が次に実施した聾研究大会全国大会や全国身体障害者スポーツ大会関係者だったことから現在の活動へ繋がっています。

◆ 今までのイベント実績

1994年7月2,3日 字幕シンポジウムin名古屋
1994年10月19,21日 第28回全日本聾教育研究大会鳥取大会
1994年11月12,13日 第30回全国身体障害者スポーツ大会(ゆめぴっくあいち)
1994年11月12,13日 第30回全国身体障害者スポーツ大会(同上 後夜祭)
1995年10月18日 第29回全日本聾教育研究大会愛知大会
1995年10月28,29日 第31回全国身体障害者スポーツ大会(うつくしまふくしま)
1996年9月1日 宇宙の日イベント(宇宙塾'96):【東京】
1996年10月26,27日 第32回全国身体障害者スポーツ大会(おりづる大会広島)
1996年10月27日 第32回全国身体障害者スポーツ大会(同上 後夜祭)
1997年2月2日 国際親善アイススレッジホッケー競技大会:【大阪】

 各イベントそれぞれ紹介したい出来事はありますが、今回は割愛させて戴きます。

◆ 映像出力用機材

  1. ULACS-K
     ULACS-Kは、たまたま平成6年の4月頃にプロップ・ステーションの主宰で川崎医療福祉大学の太田教授の講演会を見学していて、ULACS-Kというものがあり、これは面白い装置だと記憶しておいたことが、今の活動に役立っています。装置そのものは、大きさが弁当箱くらい、電源はAC100VをアダプタでDC9Vに落して使用する簡易LAN装置で、RS−232Cを持つパソコンやワープロを最大8台まで接続してチャット環境を作れる装置です。通信機能さえ持っていれば、ワープロやパソコン(MAC・DOS/V等)に自在に接続が可能です。この機種を選ばないということは、入力者が自分に取って一番入力しやすいハード環境で入力できることでもあり、タイプ速度が落ちないところが魅力です。現在のバージョンは3ですが、私達の要約筆記用に改造してもらいまして、特種ポートが増設された物も使っています。このULACS-Kを利用して多人数で打込んだ文字列を合成しています。
  2. 表示専用ソフト
     入力されてきた文字列をどのように会場の聴覚障害者に伝えるか? 巨大な画面や、プロジェクターを使用したとしても文字を拡大しなければ読む事はできません。また、文字を拡大しつつ、長すぎる行は自動的に折返して表示する機能や、文字と画面の色を自在に変化することのできるソフトが必要になります。つまり、条件は4つあります。
    1. 文字の拡大 36ポイント以上。ゴシック体が出ること
    2. 行の折返し 自動で折返し
    3. 文字色/画面の色 自在に変更できること
    4. スクロール スムーズスクロールが可能なこと。
     現在の所、下記のソフトが主に使われています。  EgTalkはV2.0ではバグがあるので、それ以前のバージョンが必要です。RT.EXEは、FHANDの仲間が作成したソフトです。

◆ 入力に関する工夫

  1. まず、原稿が入手できるのであれば、事前に入手して 整形しておく。
     この整形は、表示の制約上全角文字で13文字程度で折返す必要があるため表示がおかしくならないように文節で折返します。
  2. テーマに沿ってよく出てくる単語を漢字登録する。
  3. 4〜5人でチームを組んで入力する場合は、配置と分担を決めておく。
     例えば4名ならば、テキスト送信1名、リアルタイムメイン1名、サブ2名という構成です。テキスト送信は定型原稿や、人名などの送信を担当し原稿なしの講演は、リアルタイムの3名で入力していくことになります。
  4. 打込みの正確さも重要ですが、漢字変換にこだわるあまり遅れてしまうことがあります。この場合、「ひらがな」で出すことや要約を加えて出すことを心掛けています。

◆ 今の抱負

 手話・要約筆記・PC字幕どれがいいのか?という問いがありますが、簡単に結論を述べる事ではないと思っています。それぞれ、独特の文化があり長所短所があります。私達の活動はコミュニケーションの手段を増やすことになるのかなと思っています。

氏名:米田 勉
昭和38年10月広島で生れる。昭和57年4月、工業高校卒業後関西電力入社、現在は関西電力大阪南支店火力課に勤務。火力発電所の計装制御システムの技術管理や工事管理を手掛ける。平成6年 月から始めたTVに字幕を通信でつける試みからボランティアへの道に入った。PROP には平成6年夏からセミナーにてパソコン要約筆記を行っている。


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