郵政省委員会レポート その1

by 竹中 ナミ


 郵政省が設けた「高齢者・身体障害者の社会参加支援のための情報通信の在り方に関する調査研究会」第一回会合が5月31日(水)霞ヶ関の通産省別館において開催され、プロップ・ステーションより竹中ナミが委員として「バリアフリー部会」に出席。「阪神・淡路大震災と情報通信」というテーマで発表を行いました。

以下はその発表内容の一部ですが、発表時間が大変限られたものであったため、充分な意を尽くすことができず残念でした。

調査研究会は今年度4〜6回開催の予定で、研究会全体のまとめは改めてご報告したいと思います。


 サリンや毒ガスによる無差別殺人など大きな事件が続く中、今年初頭の大震災がすでに風化し始めていることを強く危惧していますが、これについては新聞、TVなどマスコミ報道の一過性という問題点を感じずにいられません

。震災後半年を経た現在も、関西圏では新聞紙上2面程度を使って、阪神・淡路大震災関連情報(交通情報、被災者の現状、支援のための窓口情報、避難所や仮設住宅の問題点など)を毎日報道していますが、首都圏及び他の地域では全く報道のない日がどんどん増えています。brマスコミの、個々人に与える影響の大きさを考えるとき、大震災を風化させないための努力を何よりも先ず報道機関にお願いしたいと思います。

 仮設住宅ひとつを見ても、被災者間の格差の増大など新たな差別も生まれています。
すべての人が活断層の上で生活しているといって過言でない日本において、大震災の経験を風化させることは決してあってはならないと思うのです。
そして、生活の取り戻しに懸命な努力をしている被災地の人達に、絶えることのない支援の心を寄せてください。

 震災当日から数日間の状況を伝える報道の問題点として、ミクロな情報がほとんど得られなかったということが挙げられます。
特にTVに関しては、例えば長田区、東灘区で火災が起きていると伝え、ヘリコプター映像で炎が映し出されてはいるものの、長田区のどこなのか、といったその地域に関係のある人々の一番知りたいことが全く情報として得られなかったし、どこに避難すれば良いのかなどという情報も皆無でした。

 また、被災者の中では特に情報過疎の状態に置かれたのが視聴覚障害者と高齢障害者でしたが、これらの障害者の場合、電話が通じにくかったことにより(特に公衆回線はかろうじて繋がるものの、個々人の家庭の回線は全く通じないという状況に置かれ)自宅からの情報の受発信がほとんど不可能でした。
中でも聴覚障害者においては字幕のないTV報道や公衆FAXの不備も重なって、最後まで安否の確認すら困難でした。
また自分の周りの状況を視覚以外の感覚で記憶して生活している視覚障害者にとっては、震災による環境の変化(異変)は突然異国に放り込まれたに等しい状況を生み、避難すらできなかったことが報告されています。

 このような事態の中で、自立組織系のネットワークを持つ若い身体障害の人たちの行動は、今後の緊急時のネットワークを考える上で学ぶべき点の多い、特筆されるべきものだと思います。
支援団体による安否確認、救出活動、物資の配給、義援金の独自の集約など困難と混乱の中で日頃のネットワークを活用した精力的な取り組みがなされ、行政に先んじる支援活動が展開されました。

しかしこのネットワークは決して社会からお膳立てされたものではなく、日頃から行政施策の不備を身を持って体験している障害者たちが、自ら構築してきたネットワーク>であることを思うとき、こうしたネットワークを持たない単身高齢者、高齢者夫婦、在宅介護の家庭などに「情報と福祉のネットワーク構築」が、いかに重要な課題であるかを痛切に感じます。
人と機器、両方の備えによって情報弱者を生み出さない施策の素早い検討と達成が望まれます。そしてそのために行政の枠を越えた、多様なニーズに応える自律的で多彩な市民組織の誕生を願わずにはいられません。

 プロップ・ステーションでは、独自のBBSプロップ・ネットを通じ、震災直後から会員同士の安否情報の交換などが活発に行われました。
現在のパソコン通信は電気と電話回線に依存しているので、それが使えない状況下では機能しないという大きな問題点は残るものの、一度に何十人、何百人(大手ネットでは何万人)という人たちとの情報交換が可能であるという点で、非常に有効な緊急時のツールであることが確認されました。
専用回線によるインターネット通信、携帯電話などの有効性も確認されました。

 現在、パソコン通信のための電話料金を軽減するという案が検討されているようですが、現状では深夜料金の見直しのみと聞いています。
これでは情報過疎に陥りやすい障害者、高齢者、主婦など、今後ますますパソコン通信など情報網の役割が大きいと思われる人々にとって朗報とはなりません。
なんとか前述のような視野に立った料金体系が組まれるよう希望するものです。また実施に際しては大手商用ネットのみを対象とするのではなく、草の根などボランタリーに運営されるネットもぜひ対象に加えていただきたいと思います。

 最後に、パソコン通信など情報網の拡充には「誰でも使える(通信機能付き)コンピュータ」が必須のものになって来ます。
高齢者を含む肢体、視聴覚障害、記憶力の低下などを視野に入れた、「五感の延長として使える情報機器」の開発を、企業はもとより関係省庁のご努力によって、何卒よろしくお願いしたいと思います。

 プロップ・ステーション自身は草の根のNPOとして、情報弱者といわれる人たちや多くの支援者の皆さんとともに、パソコンセミナー、独自の通信網の拡充などの努力を続けていきたいと思います。


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