「人」 クローズアップ!


―――山下徹さん―――

 山下徹さんは全盲。3才の子どものお父さんです。山下さんと私たちの出会いは、1991の夏。プロップ・ステーション設立準備委員会が発足したことを知った日本ライトハウスから「情報処理科の卒業生の、就職相談をしたい」とご連絡があり、面談をさせて戴いた事がきっかけでした。準備委員の一人である亀山くんも全盲のプログラマーなので、視覚障害を持つ人がコンピュータ技術の修得可能だということは分かっていましたが、その教育機関を見学させて戴いたのは始めて。

 見学をし担当のお話をお聞きするうちに、情報処理分野における同障の人たちの血のにじむような努力に頭が下がるとともに、その可能性をひしひし感じました。

 山下さんは労務災害で全盲となり、日本ライトハウスで3年間生活訓練と情報処理技術を学ばれましたが、年齢がネックとなり就職先が見つからない状態でした。準備委員との出会いがきっかけで、現在はソフトハウスのプログラマーとして活躍しておられます。

 この「人」クローズアップのコーナーは、重度障害を持ちながらもコンピュータ分野の第一線で活躍しておられる方々を、ご紹介していきたいと思います。


☆☆ 山下さんからのメッセージ ☆☆

コンピュータと視覚障害者

 早いもので視覚障害者(全盲)の私が、現在の会社にコンピュータ・プログラマーとして入社して半年が過ぎようとしています。「視覚障害者がコンピュータ?」といって驚かれる人も多いでしょうが、私のほかにも数多くの視覚障害者がおり、またワープロや趣味としてパソコンを使う視覚障害者も増えています。

 現在、パソコンの音声化も進み、視覚障害者でも画面を容易に確認できるようになってきました。また、コンピュータのキーボードは、ブラインド・タッチ(キーボードを見ないで打つ)が基本ですから、キー配置を覚えてスムーズにタイピングができれば、健常者の人と大差なくコンピュータを取り扱えます。ソフト開発は、コンピュータにどのように仕事をさせるかのロジック(論理)や手順が重要であり、コンピュータのハード・ソフト的な特性を考慮し、組み立てていけばよいわけで、これは障害者と健常者との区別はありません。つまり、コンピュータに接する環境さえ整えば、視覚障害者に限らずコンピュータは無限の可能性を持っているといえます。ただし、障害者がコンピュータを健常者と同様に使用しようとすると、肉体的、精神的に負担がかかり、無理をすると体をこわしてしまうことがあります。まして、仕事となるとよけいに無理をしやすくなり、注意が必要です。

 この点にさえ気をつければ、後は能率の問題であり、仕事としてやっていけるかどうかは、本人の努力と周囲の人達の理解です。コンピュータ分野は、障害者にとって可能性のある仕事の分野の一つであると思います。興味のある方は、ぜひ挑戦してみてください。


【業務内容】  
○ データ解析: POSレジ・データ、
CADデータなどのデータ分析及びデータ・コンバート
○ ユーティリティ・プログラム開発:
  異機種間ファイル・コンバート、
プロッピ・ディスク関係ユーティリティ
  〔全体的にコンピュータの内部的な処理が多く、毎日16進数や0と1のビット列とにらめっこしています。視覚的な部分は、苦手なため画面処理の少ないプログラム作成をしています。〕
【サポート機器】  
○ 音次郎:音声合成装置
○ VERSAPOINT:点字プリンタ
○ オプタコン:墨字や画面の文字を触知信号に変えて確認する
○ 立体コピー:用紙の黒い部分を浮き上がせたコピーをとる機械
  〔通常は音声と点字プリンタを使用しています。オプタコンは印刷物の確認や音声で確認できない画面イメージの確認に使用しています。〕

山下 徹 (やました とおる)。
  昭和36年3月25日生まれ、30歳。
  平成3年9月、株式会社メドック入社。大阪市在住。


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