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神戸新聞 2004年5月3日より転載

 

(1面)

 
 
第58回神戸新聞平和賞
文化、社会、スポーツ賞
 
 

 

 第58回「神戸新聞平和賞、文化賞、社会賞、スポーツ賞」が決まりました。本賞は、平和憲法発布を記念して、1947(昭和22)年から、文化、福祉、スポーツなど各分野で優れた業績を挙げた兵庫県内の個人、団体を表彰してきました。各界から推薦された多数の候補を、本社選考委員会で審査した結果、平和賞、社会賞、スポーツ賞各1団体、文化賞1人が選ばれました。表彰式は5月25日にニューオータニ神戸ハーバーランドで行います。

(13面に受賞者紹介)


平和賞
三ツ星ベルト株式会社
神戸市長田区浜添通
 1919年創業の工業用ベルトメーカー。阪神・淡路大震災では、工場のある神戸市長田区・真野地区で地域住民と協力、消化活動に当たるほか、体育館を避難所に開放するなど救援・救助活動を展開した。その後、住民の強い要望にこたえて神戸ハーバーランドの本社を創業地の同地区に再移転、多彩な交流活動を通して住民の心の復興に貢献、地域との共存という企業の新たな価値観を示す取り組みを続けている。
文化賞
俳人
伊丹 三樹彦(いたみ みきひこ)さん(84)
尼崎市南塚口町
 俳人。俳誌「青玄」主宰。13歳から俳句を始め、「無季・口語・分かち書き」という独自の変革を推進した現代俳句の第一人者。1970年に写真と俳句を組み合わせた「写俳」を創始し、世界40カ国以上を旅して創作を重ねるなど、精力的な活動を続けている。
社会賞
社会福祉法人
プロップ・ステーション
神戸市東灘区向洋町中
 障害のある人を「神から挑戦する使命を与えられた人」という意味の「チャレンジド」と位置づけ、パソコンを活用した就労支援を展開。「チャレンジドを納税者に」をスローガンに、情報技術(IT)を身に付けた障害者が自立できる社会を目指した運動を、神戸から全国に向けて発信し続けている。
スポーツ賞
須磨学園高校陸上競技部
神戸市須磨区板宿町
 昨年12月に行われた全国高校女子駅伝競走大会で、1時間7分46秒のタイムで、兵庫勢として初優勝を遂げた。今年1月の全国都道府県対抗女子駅伝競走大会にも6人の選手を送り出し、兵庫県チームの連覇に大きく貢献。「陸上王国・兵庫」の名を全国にとどろかせた。

 

(13面)

 
 
第58回神戸新聞平和賞
文化、社会、スポーツ賞
 
 

 

 第58回神戸新聞平和賞、文化賞、社会賞、スポーツ賞の各賞に、震災を契機に地域に開かれた経営を志向する三ツ星ベルト株式会社など3団体と、個人1人が選ばれた。障害者の自立に向けて挑戦を続ける社会福祉法人「プロップ・ステーション」、現代俳句の第一人者、伊丹三樹彦さん、そして昨年の全国高校女子駅伝で悲願の初優勝を果たした須磨学園高校陸上競技部。それぞれに、兵庫の誇りだ。

(1面参照)


写真:受賞を喜ぶプロップ・ステーションのメンバーたち
受賞を喜ぶプロップ・ステーションのメンバーたち。
中央、胸に花をつけた女性が理事長の竹中ナミさん
=神戸市東灘区向洋町中6の事務所

「チャレンジドを納税者に」

社会賞 プロップ・ステーション
 
(社会福祉法人)
 

 チャレンジド。神から挑戦すべきことを与えられた人。障害者をそう位置付け、「チャレンジドを納税者にできる日本」をスローガンに掲げる。

 就労による自立と社会参画は、かねてから障害者支援運動の目標だった。しかし、ここまで明言した運動は日本にはなかった。手にしたコンピューターと通信ネットワークの飛躍的な機能向上が、その呼びかけに現実味を与えた。

 重度心身障害の長女がいる竹中ナミさん(55)=神戸市東灘区在住=が1991年に設立。98年に社会福祉法人として認可され、竹中さんが理事長に就いた。

 チャレンジドや高齢者らを対象にしたコンピューターセミナーの受講者は千五百人を超え、このうち一割が在宅の仕事を体験した。難病や脳性まひ、頚椎(けいつい)損傷などで重度の障害がある人らも取り組んだ。2003年1月には、兵庫県、神戸市、通販大手のフェリシモ(本社神戸)と共同で、通販ルートによる小規模作業所商品の全国販売を実現した。取り組みは、障害者施策を一変させる可能性を秘め、産、官、学、民から幅広い支持を集め、発展を続ける。

 「障害者が、働くことによって誇りを持てるようにしたい。高齢者や女性が老化や子育てなどの事情に応じて働ける社会をつくることにもつながる」。「ナミねぇ」の愛称で知られる竹中さんは、そう話す。