2000.08.30(1日目)
記念講演2
「Webによる教育システムと新世紀」

総合司会
 清原 慶子:東京工科大学メディア学部教授、CJF副座長

講演者
 ラリー・ライファー:スタンフォード大学教授


清原 慶子:ただいまから、記念公演の2を始めます。ラリー・ライファー教授は現在、スタンフォード大学の機械工学部の教授でいらっしゃいますが、同時にスタンフォード学習研究所の所長であり、デザインセンター長にも就かれています。

 ライファー教授は、1978年以降、専門分野の学術研究の大部分を、身体・感覚・知覚の障害を持った人たちへの機能向上の補助技術の研究に打ち込んでこられました。今回はその中からもご紹介いただきます。教授は、ご本人も聴覚障害に挑戦し続けていらっしゃいますが、このような障害の中から機械や補助器具の開発を試みただけでなく、インターネットを活用した新しい学習方法も提言されてきています。

 今日はその研究と実践をもとに、Webを生かした教育システムについてお話しいただきます。それでは、よろしくお願いします。

スタンフォード大学 ラリー・ライファー教授
スタンフォード大学
ラリー・ライファー教授

ラリー・ライファー:コーエンさんと同じように、私も今回こちらに来られて光栄です。しかし、多分皆さんから学ぶことの方が多いのではないかと思っています。なるべく忌憚のない意見交換をしたいと思います。

 今日は、将来の学習方式についてお話ししたいと思います。コーエンさんからは「仕事へのアクセスに障害があってはならない」というお話がありました。私のメッセージは、「学習においても障害があってはならない」ということです。学習というのは、個人の自立のために必要です。そして、自分に本当に誇りを持つために、自立できると感じるためにするわけです。自立と学習を一緒にして誇り高く生きていきましょう。

 今日、技術に関心が集まっています。情報技術です。これ(スクリーン)は、WWWが将来われわれに約束してくれるものを表しています。このマンガは、私がインターネットを初めて使ったときのことを表したものです。クラスの学生を集めて、ピザをWebを使って頼みました。それから長い時間をかけて、インターネット技術の潜在的可能性について話し合いました。今日ではまだまだこの潜在的可能性は利用されていません。教育分野もこれを活用していない分野の一つです。

 それでは、スタンフォード・ラーニング・ラボラトリーの目標についてお話します。ラーニング・ラボですが、これはまさに精神にとっての人間工学のようなものです。つまり学習者を学習システムに合わせるのではなく、学習システムを学習者に合わせて行うというものです。われわれはサービスを提供しています。学生がどこにいても、何歳であっても、どのようなチャレンジドの方でも、学習サービスを提供しています。これは、応用研究です。つまり、将来の学習の発明のようなものです。これを学ぶ者と共同でやろうとしています。教育者側からも全面的賛同を得てやっています。私は教授で、自分を失業させるつもりはないんですが、この15年を振り返ってみると、よりよい教育は、学生から何かを学んだときに起きたように思います。

 では、ここでいくつかの事例を上げてお話しします。皆さん方にお伝えしたいのは、私が自分の学生からこの3年いろいろ学んだことです。学生は広く分散していて、一ヶ所に集まっているわけではありません。ほとんどの学生は自宅で学習していて、仕事場で学習してる者もいます。驚くべきことに、旅行中に学んでいる学生もたくさんいます。

 私どもは、プロフェッションルとしての能力を得るために遠隔的なプログラムが有効かどうかを試しています。もし雇用があって、チャレンジドが適切な教育を受けていれば、マッチングができます。教育が適切でない場合は問題が出てきます。ですから、スタンフォードでは、定期的・伝統的なクラスのような経験を提供しようとしてきました。今日はまだまだこのような形が主流です。

 私どもの教育プログラムは個人に提供するのではなく、会社に売ります。320社がこの教育プログラムに参加しています。ここで強調したいのは、われわれとこういった企業の間に大変密接な協力関係があるということです。このような会社からは、私どもにメッセージが来ています。障害には、身体的、知覚的、認識的な障害がありますが、この会場にいる皆さんも将来的にはチャレンジドになるわけです。このような懸念は、まさに広くみんなが持っている懸念です。

 われわれの夢は、クラスをデジタル化して、それを世界的に共有することです。ここに講師がいます。その姿はビデオで、学ぶ人のコンピュータのスクリーンに現れます。いま皆さんが見ているようなスライドも、コンピュータのスクリーンに現れます。そのスクリーンは、前に進めたり後ろに戻したりできます。いままでの講義と違うのは、この講義はいつでも自分が受けたい時に見たいときに、どこでも、自分のスピードに合わせて受けられるということです。これは大変効率的です。学生の50%がこのようなやり方で講義を受けています。つまり、キャンパスの中の物理的な空間で講義を受けるのでなく、コンピュータで受けているのです。これは革新的です。教授が失業し始めています。

 では、将来はどうなるのでしょうか?

 かなり今とは違うと思います。将来の方が、チャレンジドにとっては良いものとなるでしょう。われわれのキャンパスでの今までの研究から、以下のことがわかりました。これからの学習方式は分散化している。しかも、共同的な学習方式である。クラスは10人から20人ぐらいで、こうして200人以上もの人を前にしてやる大規模ではない。そして、その学習は仕事場と同じテクニックを使います。仕事と学習との間を縮めます。

 それでは、どのようなテクニックを使うか見てみましょう。ここにビデオがあります。今年、京都大学とスタンフォード大学で行ったコースです。


 1998年春、京都とスタンフォードを結んでこのようなコースが行われました。工学部のコースで、ME1100というコースです。スターフォード・ラーニング・ラボですが、これはスタンフォード大学長が設立したもので、将来の学習方式をクラスとOJTでやろうという考えで設立されました。一つの革新的な手法は、プロジェクト・ベイスト・ラーニングというものです。小グループで問題に対する解決法を見つけ出します。学生は共同で国を超えてやるので、文化的差異も学びます。

 この京都とやったコースでは、いろいろな革新的な教育方法を実施しています。日本の学生もグローバルなチームで効率的な問題解決を学びます。日本は技術、エレクトロニクス、いろいろな分野でリーダーです。しかし、日本をよく知っているアメリカ人は少ないのです。特に技術的な競争力について知っている人は少ないのです。学生たちは10週間チームを組んで一緒にやります。4つの日本企業、三菱重工、中西コンベヤー、ソニー、東芝などがこのコースを教授陣と協力してやってます。

 まず、始めにスポンサーが京都にやってきて、学生と会いました。業界と大学との間のコミュニケーションは、双方にとってとても重要です。

 われわれは現実を学生に伝えることができますし、彼らの考えをできるだけ取り入れていきます。実務に携わる人間だけだと考えが偏りますので、若い人のアイデアを取り入れるのです。グローバル化した市場では、異なったアイデアや発想法で臨まなければなりません。

 「単にお金儲けだけをやるのではなく、社会に対して何かを還元して行かなければいけない。ある意味で、日本人の国際親善の一つにもなると思います」。

 「これは、ずっと取りたかったコースです。資金調達といっても、現実的な経験ができます」。「このように工場内の様子も見ることができます。デザイン、工学なども実際的なものを学ぶことができます。まさに、現場にいるような臨場感があります」。

 本当に有用だと感じないと、学ぶことはできません。プロジェクト・ベースト・ラーニングでは、学生をそういう状況に追いやって、どういう情報が必要かを学生に知らせます。日本では大阪大学がこういったクラスをやりました。デザイン・センターはカリフォルニア。それから、スタンフォードのメカニカル・エンジニアリングなども使いました。

 あちこちに散らばった人たちからのインプットがあり、それを統合するコミュニケーションが必要になります。ですから、電話、ファクス、Eメール、実験的なインターネットの手法でコミュニケーションを取ります。

 プロジェクト・ベースト・コースの面白いところは、学生がいろんな分野からいろんなことを使って自分のプロジェクトを立ち上げなくてはいけないということです。三菱重工の助けを借りて、ソーラーシステムのプロジェクトをしましたし、いろいろなアイデアを使いました。管理的なアレンジはうまくできませんでしたが、特に問題はなく、チームメイトとしてうまくやっていけました。かなり時間をかけて、いろいろな考えを取り込みました。多様性があったことがグループの助けとなりました。

 学生に頼んで、いろいろな解決方法を見つけ出してもらいました。このフィードバックは非常によいものでしたし、生徒が正しい方向に向かっていることがわかりました。エンジニアはどんどんグローバルベースで事を行うことになるでしょう。

 最初のスライドは、オレゴンと日本を結ぶもの。エンジニアを日本に向かわせて、長期的には日本との共同作業によって、日本の文化等を使うような製品を作り出すということです。新しく世界を見直すことは、クリエイティブな新しいデザインに貢献します。日本の新しい文化に学びましたし、京都に行ったりしていろいろとりと教室以外でしかできない活動をしました。お寺や神社に行ったりして、そのうちにシステムの違いの大きさに気づきました。学生は毎日文化の違いを感じることができました。

 技術的な分野にいる学生が新しい体験をどんどんするチャンスが与えられました。そして、テクニカルコースを取ることによって、プログラムからも遅れをとらない手法が取られました。

 こういった工学部の学生は、日本にきて日本の技術の歴史と文化を学ぶことで、視野が広がったと思います。


スタンフォード大学 ラリー・ライファー教授 ここで強調したいのは、こういったグローバルな共同作業が、現在行われているということです。来年、プロップ・ステーションと共同で行うかもしれませんし、ほかの機関を取り込むかもしれません。実際に障害を持つ人たちを含めてプロジェクトを進めていくことになるかもしれません。皆さん、こういったことが展開されることも喜んで受け入れてくださると思います。

 技術的な面から見てみますと、インターネットの仕様に関する注目点ですが、皆と同じ時期に同じことをしなくていい。パーソナライゼーションということで、それぞれ個人が情報を収集でき、保存できる。そして、それを共有できる。ポートフォリオを作れるということがあります。ですから、学習は一回行うことではありません。所有して、状況によって、仕事によって使うものです。

 これは特に、障害を持つ人たちにとって価値のあることです。私が強調したいのは、他の人と一緒に仕事を行うことです。社会的な枠組みが非常に重要な問題になります。技術は二次的なものになります。インターネット技術を使うことによって、個人化することができる、そして再利用できるようになります。そこで重要なことは、オンラインのディスカッション、オンラインの討議。オンラインであるということは、どんなペースでもできるわけです。個人個人のペースでできるということです。しかも、それが一緒になることによって、非常にパワフルになります。それぞれの人が貢献し、それがどのように対応されているかを見ることができます。ですから、今までの教育方法よりも良くなります。

 もう一つの短い例をお見せします。プロジェクトベースの共同作業が、ヒューマニティのフィールド、たとえば文学でどのように行われるか、再びビデオでお見せします。


 歴史の教授、「これは、教授ではなく生徒が作ったものです」

 演劇の教授、「生徒がチームを作り、チームの幾つかは分散していました。そして、ライブシアターを作り、ビデオ・ドキュメンタリーを作り、それから人形劇も行いました。これが一番人気があったものです」

 学習の仕方は大きく変わります。いままでの講義を受けてきた方式から、自分で仕事を作るという方向に変わります。ここで強調したいのは、生徒がコンテンツを作るということです。学生がどこにいても、どんな能力を持っていても良いのです。技術的な点で、この貢献が反映できる方法を持っていれば、どこにいてもいいのです。


 チャレンジドの学習者を助ける技術についてお話しします。チャレンジドがどのようにこの学習方法に参加できるかを紹介します。

 重度障害者に対して、仕事のチャンスを創出しました。全身麻痺の人ですが、口にくわえたスティックで作業をしています。最新技術のロボットが、ワークスペースの上の方に付けられています。ここで行っているのは、マルチメディアの創造作業です。この絵で分かるのは、このロボットのバーチャル版です。簡単に見ると、左側がワークステーションで、右側がアームです。ここがBRMLリモートアクセスのコントロール・パネルです。では、この特徴のライブのデモンストレーションをお見せします。全身麻痺の人が使う状況をお見せします。

 これは、前から見たバーチャルロボットの図です。皆さんがWebブラウザで動かせます。ビューを見て……、ちょっとできませんので、違うことをやってみます。アームで捕まえて、技術が手助けしてくれるなら……、いつも、こういうことが起こるんですね。スケジュールはかなり速く進んでいると思いますので、もういちどやり直します。違う例をお見せします。

 これは、ユーザーの顔だけを個人化するものです。これは、頭でコントロールするメカニズムを作るものです。これが機能することを証明します。ユーザーは遠隔地から操作できます。このバーチャル・インタラクションの後、Webブラウザ機能というのを使って、物理的に作って、これが職業上役立つかを検証します。これは、コーエンさんのお話があったことを具体化したものです。ここで重要なことは、自分の感情を表すということです。

 これは、頭の動きで絵が描けるというものです。実際にはロボットが絵を描き、絵を描く人は世界のどこにいてもいいわけです。この製品はペンシルバニア大学で開発されて市場に出ています。次に、ここで見えるのは、環境開発の分野でどのように運転するかを訓練する装置です。車椅子を使ったり、車の中に車椅子を載せることを学べます。自分で職場に行くことを、この装置を使って学習できるわけです。画面で右側にハンドルがありますが、片手が麻痺している人のためのものです。機能は、それぞれの人に合わせて調整されます。Webベースでのインテレクチャルなスキルです。

 これは発作後の障害を持った人です。身体の左側が麻痺していますが、右側は問題がありません。ロボットが弱い腕をトレーニングできます。こういったWebベースの学習を使って、診断もできますし、療法も適用できます。そしてまた、学習・仕事ができるわけです。それらが相互に相乗効果をもたらします。これは歩行ができない人、あるいは感覚障害の人、視覚障害の人が訓練をする装置です。

 テーマを変えます。こういった装置には二つの面があります。まず、分散的な学習による共同作業があります。それから、技術的共同作業がこれからやってきます。

 そして、学習と仕事の違いを見てみたいと思います。学校で働いている人たち、実際に業界で働いている人たち。企業の顧客を抱えて働いている人たち例を見てみたいと思います。BMWの例を見ます。この黄色のチームは、スタンフォードの人がほとんどです。その他に、ある企業で働いている人が一人、60マイル離れたところで働いています。もう一人はミュンヘンで働いています。このチームの目標は、スマートドアを作ることです。このビデオは、学生が作ったものです。

 この学生はいろいろなセンサーを盗んで、1本の指でドアを開け、1本の指でドアを閉め、次に開けるときには隣の車にこするのを避けるような制御がかかります。自分でも傷つくのを避けるような機能がついています。この学生は、この特許の申請中です。彼はこのプロジェクトを楽しんでいます。これはトヨタ自動車との間でも完了したところです。

スタンフォード大学 ラリー・ライファー教授 東京都都立大学とスタンフォード大学、トヨタとの間で、「スマートな車」というテーマでこのプロジェクトをやりました。グローバルに共同でやったのです。この中には、身体的なチャレンジドの人もいます。

 この共同作業をするために使われた技術の一つが、バーチャリー・インパーソンというものです。ここにロボット・カメラがあります。これはWebブラウザでコントロールできます。いろいろなところにいる学生を、カメラで訪問することができます。カメラは動かせるし、ズームも合わせることができ、たとえば机の上のノートを読み取れます。ですから、9000キロ離れていても、お互いのノートを読めます、そして、お互いの存在を感じ取ることができます。

 このような技術で、身体障害者が自分でコントロールしながら世界各地を訪れることができます。特に、離れていても感情的な関係を維持していくのに有効です。離れて働いていても、感情的な繋がりが持てます。これが一番重要です。

 それでは、われわれが今まで探ってきたカリキュラムの中で、一番大きな変化はどういうところにあるでしょうか。環境・健康部門のコースのスライドをお見せしましょう。

 このAの部分ですが、クラスのいろいろなところに分散している学生に、宿題を与えました。「絶滅に瀕する種の管理をどうするか」という宿題です。Bの部分は地図です。インターネットですから、教授が用意しなくても、学生が必要なものを引っ張り出してきます。必要な情報を見つけたら、チームでCの部分に政策を書きます。そして、学生はお互いが作った政策に投票をします。他のチームが作った政策をどう思うかということです。もうちょっと詳しく見ましょう。AがWebでナビゲートするところ、Bは議論を行って政策を出すところ、Cは投票するところです。そして、Dでは同僚の意見を聞くことができますので、まさに学生同士で学べます。

 チャレンジドのコミュニティにとって重要なことは、お互いにコミュニケートするということです。そして、お互いに一緒に仕事をして目標を達成するということです。先生や専門家の助けを求めてもいいですが、そうしなくても皆で議論してやっていくことができます。Webがそれを可能にするのです。

 Webで試験を受けるときは、Web上の必要な情報を検索して答えを書けばいいのです。「何を学んだか」ではなく、「インターネットで引っ張ってきた事実をもとに、どういう議論を展開できるか」が重要です。このコースはなかなか難しいコースです。今までとは違った意味で難しいのです。しかし、新たな機会を提供するコースです。

 では、ここで少し時間を取りまして、スタンフォード・ラーニング・ラボの組織について説明します。われわれが重視してることは、社会的問題と技術的問題を統合して解決することです。チャレンジドのための調整にも、まさにこの統合が必要です。学び方は分散していて、ポートフォリオという言葉が出て来ますが、再使用できるような個人に合わせた学習方式です。

 われわれのリサーチ・プログラムは3つの分野に渡っています。まず、われわれにとって重要なのが物理的な面積です。物理的な障害は、まず超える必要のある障害です。そのために、最先端の技術センターを導入します。2つ目はパーソナルラーニング。これはチャレンジドに対する調整と同じで、どの仕事の場も学習の場も個人に対応したものでなければいけない。それこそ情報技術の活用の一つの仕方です。将来の学習方法は変えないといけません。あまり講義にしてはいけません。個人の学習に焦点を当ててやっていかないといけません。これが、仕事の場でも重要視されている点です。3つ目ですが、分散的かつ共同的な学習方式は、企業も必要としています。大学も、まさにグローバルな方式を学びつつあります。ですから、チャレンジドのコミュニティにとっても、このようないろいろな統合が必要になるでしょう。われわれの組織は、この3つを取り上げて物理的な側面に当てはめています。

 私はよく同僚を説得しないといけないのですが、まずグローバルでやるということにはプラスの面点があります。われわれは研究の大学ですから、いろいろ国際的にやってますが、学習方法や教授方法にもそれが必要です。日本の大学での評価も、日本だけでなく、アメリカでのものとも照らし合わせる必要があります。2点目は教育についてですが、皆さんは私の知らないことを知っているかも知れません。もしわれわれが共同してやれば、相乗効果が出てくるでしょう。

 興味深い点ですが、われわれはグローバルにやるための資金を得ました。地方だけでは得られない資金を得られました。これは、企業でも同じと思います。チャレンジドの利便性を図る上でも同じと思います。われわれのグローバルなパートナーシップを紹介しましょう。まず、これはスウェーデンの財団ですが、われわれのプログラムの最初の5年の資金を出してくれました。そして、スタンフォードとスウェーデンの3つの大学がプロジェクトを創設しました。最近は、ドイツもパートナーシップに加わりました。ここで提案したいんですが、ぜひ日本をこのグローバルラーニングの中に組み入れたいので、皆さんのお力をお借りしたいと思います。チャレンジドの方もこのプログラムにぜひご参加していただきたいと思います。

 お話ししたものよりも小さなプロジェクトは、こういった大学とやっています。これも日本や北ヨーロッパとやっているプロジェクトです。スタンフォード自体も、いろいろなキャンパスに分散しています。これが京都のキャンパス。これは最近行われたとてもおもしろい共同研究のキャンパスでした。

 私がなぜ日本を強調しているかというと、日本というのは実は共同してやっていくのがいちばん難しい国なんです。距離が離れていますし、文化的なギャップもありますし、言語の違いもあります。ですから、共同作業を成功させるのが難しい。だからこそ、学ぶことも多いわけです。

 もう一つだけ例を出して終わりにしたいと思います。まず、先生はどこにいてもかまわないんです。この場合はスタンフォードにいますけど。学生たちも各地に散らばっています。このプロジェクトでは、京都は含まれていません。

 コースの中核は、まずこういった各地の学生の間でチームを作ります。そして、それぞれのチームが、たとえば演劇、フィルム、喫茶店などについての文献を読み、そして、お互いに批判しあう、そして共同で働く。チームで働きます。この学習のための中核的な技術は、非対称学習方式と言います。われわれはこれに数式を作りました。Le=mc2乗という数式。みなさん、この数式をご存じですよね。つまり変数を変えていけばいいだけです。どういうことでしょう?

 チャレンジドの世界で、いちばん重要なのは「精神」、心の持ち方です。われわれは、皆ある意味で障害をもった学習者です。今までの学習環境では、われわれの心を合わせていくことが難しかったわけです。みんな切り離されていたわけです。しかし、これから将来一番重要になってくるのがコミュニケーションです。そして、いままで学んできたやり方をもっとラジカルに改革する、そして皆にとって有意義で意味にあるものにしていく。しかも、これをエナジテックにやっていく。

 どうもご静聴ありがとうございます。これから、素晴らしい議論をしましょう。


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