作成日 1998年3月吉日


Flanker 表紙絵を毎号プレゼントして下さる絵本作家

「鈴木純子さん」からの

     新春メッセージ


 プロップのみなさま、ふらんかー読者のみなさま、明けましておめでとうございます。

わたしはクリスマスに始まって、年の暮れ、そしてお正月と続くこの時期が大好きです。クリスマスにはどうしても毎年もみの木を買ってしまうし、(枯れてしまうんだなぁ、これが!)子どもを押しのけてひとりでツリーを飾り付けてしまうし、年の暮れのあわただしさも、幸せそうにファミリーしている人々を見るのも楽しみなんです。

そして厳粛に年が暮れ、し〜んとした夜半、森の精霊たちが新しい年を運んでくる時、不肖なわたしが犯した数々のあやまちも、しでかしてしまった失敗も古い年が持っていってくれ、なにもかも洗い流してくれるような気がします。

 このことがわたしがお正月が好きな本当の理由かもしれません。

 ところで、わたしはこの頃、ファンタジーの必要性を強く感じています。

 ファンタジーは言葉に出来ない想いが積もってできたものです。

 ファンタジーは心の言葉です。

 日々の日常の中にそれはあって、どんなところにもその入り口はあります。

 そしてその気にさえなればだれでもその中にはいりこむことができます。

 ファンタジーは疲れた現代人のわたしたちを癒してくれる一番のものです。

 反面、ファンタジーにどっぷりはまり込むことも危険です。

 なぜならそこは天国ではないからです。

 神もいれば悪魔もいます。

 悪魔の支配する暗い森に迷い込んでしまったのが酒鬼薔薇です。

 なぜなら、心の叫びは暴力だからです。

 さらにいえば家庭内暴力とファンタジーの根は同じものなのです。

 わたしたちのとって必要なことは、現実と仮想世界のバランスです。 現実と仮想世界とを考えるとき、一番頭にうかぶのは私の好きなまんが家、しりあがり寿のことです。

 しりあがり寿のまんがのひとつに「天国プロジェクト」というまんががあります。

 このまんがはある会社がバブルの絶頂期にうめたて地にこの世の理想郷をつくろうとして、企画部に「天国プロジェクト」を依頼するという話です。

 でも結局、それはできませんでした。

 「金や技術ではなく、わたしたちにないのはあの空き地に天国を思い浮かべることのできる想像力だ。」

 この言葉でまんがは終わります。

 それを読んでからわたしはわたしにとっての「天国プロジェクト」を考えながら生活しています。

 みなさんもぜひ、そうして下さい。 もうひとつ、わたしが気に入っている彼の作品に「真夜中のやじさん・きたさん」があります。

 2人はホモで薬中毒です。 やじさんと、きたさんは幻想とリアルのはざまでただよいながらもおたがいに真実に愛にささえられて、原罪のみそぎを受けるために、おいせ参りをするのです。

 この2人のすがたは今の時代に生きる者にとって本当に指針になるとわたしは直感しています。

 ぜひ、読んでみてください。 もって生まれたものは変えられません。

 それが現実です。

 でもファンタジーを信じれば、だれでも幸せになれます。

 それがわたしたちの「天国プロジェクト」です。

 新しい年が明けました。

 まっしろな再生の時の始まりです。

 さあ、やじさん、きたさんのように新しい一歩を踏み出しましょう!

鈴木純子さんのプロフィール

生まれ・・・神戸でX年の4月です。

育ち・・・・過去のことはいいたくありません。

趣味・・・・家事一般--特に料理(主にパーティ料理)

    *クリスマスのごちそう、おせち料理が得意。 特製のおせちは「美しすぎて、はしのつけられない恐怖のおせち」として有名。

    お菓子づくりも大好き。 保育園のお別れ会の時は、保育園の形のケーキを作った。

    ヨガ、クラシック・バレー、ファンクにも傾倒。 路上観察。 それをもとに「夢みた街」の絵を描く。

    小林よしりん、しりあがり寿のまんがが大好き。 (同士の方、お便りください)

読書傾向・・

    「死」「ホスピス」「深層心理」「精神異常」「異常犯罪」関係の本をよく読みます。 立花隆の「臨死体験」はおもしろかった。 あと「死にゆく人の言葉」とか「死にゆく子供たちの言葉」とか・・・ 河合はやおの著書はだいたい全部。 あと、東海林さだおの大ファンです。 1日に1回は読み返しています。


[up] [next] [previous]


トップページへ

TOPページへ