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【資料】

NEVER LAND 第18号掲載
対談「障害者は本当に働けるのか?」



《対談》

社会福祉法人桑友 武田牧子さん
社会福祉法人ふらっと 新田裕之さん

(文中敬称略)

<バリアフリー情報誌 NEVER LAND 第18号より転載させていただきました>

私に出来ること

新田: 今日は武田さんとの対談で心臓がドキドキしてます。

武田: 私がそげんに若く見えるかね?(笑)

新田:
武田さんとは8年前くらいに共同作業所まつりや、きょうされんの会合で一緒になり、新参者にも色々良くして頂いたり、リーダーシップも取っておられてすごいなあ〜と思っていました。

武田: そうだったねぇ。あの頃が一番楽しかったかもしれんね。井の中の蛙だったと思うけど・・・。作業所の補助金も2年間無いところからスタートだったし、「働きたい!」って周りで言ってくるし、必死でしたね。でも最初喫茶店の売り上げが1日5万円あったので何とかなりました。パンやクッキーもクチコミで広がってね。

初めのきっかけ

新田:
武田さんってなんでこの仕事始めたんですか?

武田:
私、臨床検査技師をやっていたんですよ。そこで精神障害の人と関わって話をする中で色々気付かせてもらって・・・。何で病院にいるんだろうって気になって。私はそうなると知りたくてたまらなくなる性分だからいけんだ。

新田: 何かわかる気がします(笑)。

社会福祉法人桑友
武田牧子さん
写真:社会福祉法人桑友 武田牧子さん
武田: 色々ある中で、ある人に「検査技師の前にあなたは人間でしょ。君にできることあるでしょ。」って言われて、ストーン!と理解出来て、私に何が出来るんだろうと思ってね。当時、子供の食べる物は全て自分で作っていたし、料理と畑作業しか出来なかった私には喫茶店しかなかったんですよ。畑では仲間に工賃払えないでしょ。

新田: なるほど。

武田: 無能な私が出来ることをやっただけ。料理は好きだったから。そうは見えないでしょ(笑)パンも子供達に自分で作ってたから・・・。一番忙しいときは24時間パンを作ってました。当時はメンバーも少なかったから平均工賃も5万円以上払っていましたよ。

新田: ウチもそうでしたね。パソコンしかできなかったし、人数も少なかった。人数が多くなればなったで、変化もしなきゃならない。工夫も必要ですよね。

工夫すること

武田:
そういえばPOSレジにしたら知的の人が働けるということがわかったし、どんどんチャレンジすることで何が出来て何が出来ないかわかってくる。そしたら出来ないことも工夫することで出来るかもしれない。それを考えることは面白いですよ。

新田: そうですね。サー管(サービス管理責任者)の研修もその辺に焦点がありました。

武田: ウチはサビ管って呼んでるけどサー管がいいかな。

新田: ところで自立支援法で色々言われてますが、本当に障害者は働けますかね。

武田: うーん、やっとその入り口に立ったところで、これからいくつも壁を越えていかないと。だって働くと言うことが今まで無かったんだもの。労働と言うことが出たばかりだもん。

本当に働ける?

新田: 僕は、この法律が出来て、やっと障害者が「働く」を本気で語れる時代がきたと思った。「障害者にとってはチャンスだと思うよ」っていつも言ってる。負担金1割っていうところで反対が多いけど、負担金が払えるほど働かせろと何故言えないのかな?

武田: そういう考えの人ばかりならいいけどね。たとえば負担金っていくら下げてもゼロ以下にはならない。逆に収入を上げることはいくらでも上げられる。だったら負担金がある分、工賃アップの施策の充実を何故訴えないのかと思うよ。

バリアフリー情報誌「ネバーランド」
写真:バリアフリー情報誌「ネバーランド」表紙
新田: 僕も重度障害なんだけど、結局最初から働けないって考えてる人達もいて、その人達の所得保障もない中で、大変だって思い込んでいて・・・。

武田: 本当に働けない人には国が絶対保障すればいいと思うけれど、働けるのに働かない人の声が強くてね。寂しく思いますね。

タダより高いものはない

新田: 僕なんかも同じ障害者ですけどちょっとね・・・。タダにするから我慢しとけって言われてもおかしくない。

武田: 美術館なんかも無料なんだけど、介助者もそうなるんだよね。

新田: そうそう。昔なら階段としか無かったから。今も大変な人もいるけどなんか変。でも利用しちゃうけど(笑)

武田: あるものは使わないと。

新田: 自立移動支援法って確かにまだ不完全な物だけど、悪いところは直していけばいいし、やめてしまえではないと思う。負担はあっても、みんなで永く持続可能な物にしていく事、社会も人もそう考えて行動して良いシステムにすることが、結局僕自身にも、それぞれ自身にも返ってくる事だと考えています。国を持続することにも繋がりますよね。

武田:
まったくそうだね。なかなかこんな話は出来ないけど今日は嬉しいわ。

新田: 僕が障害者だから言えるかな?でも運営も大変ですよね。収入も減るしね。

武田: そうねえ。

新田: あとはもっと労働と福祉が一緒になると良いですね。今はまだバラバラで。

武田: やっと国が話し始めたところだからねえ。もう少し時間がかかると思うわ。

変化の兆し

新田: もっともっと働きかけが必要ですよね。自分たちも変化しなきゃ。

武田: 企業にも働きかけや一緒に工夫していくことも必要ですよね。それで就労支援ネットワークを作りたいですね。

新田: いろんな制度も最大限使えばいいと思うし、実現させるためには何でも有りだと思わんと出来ることも出来ない。

武田: そうだよね。

新田: これから一体どうなったら良いのでしょう。僕らに出来ることはなんでしょうね。

武田: 型は決めたくなくてね。私なんかやろうと思えばやりたいことは出来るでしょ。障害や性別にとらわれずに、本当に誰もがやりたいことが出来る、好き放題と言うことではなくて、1人の人として生まれてきて何か役割を果たしたいと思っている人が、そのやりたいことを出来るようにしたいと思っています。ウチのメンバーは役に立ちたいと思っている人達が多いから。

雰囲気作り

社会福祉法人ふらっと
新田裕之さん
写真:社会福祉法人ふらっと 新田裕之さん
新田: 僕はどんなに障害が重くても働けるでしょ!と思っているので、身体は動かなくても例えば喋ることでも、たとえ企業のPR活動でも働けるし、役割はある。でもそれだけでは「障害者にやらせてる」ってことになる。でもそんな多様な働き方も誰もが認めていける社会の雰囲気を作って行けば何でも有りだと想えるようになる。そういう雰囲気にして行けたらいいなと考えています。そして二次障害で歩けなくなった僕でも、こうして役割はあるってことも知ってもらうことが雰囲気作りに役立つと信じてやるしかないと今は思っています。

武田: 私ある施設でね、重度の重複障害の人が地域で働いているのを知ってショックでした。私もどこかで線引きして考えていた。でも充分に働けているのを見て、働けなくしているのは私たちだと思った。障害によっても違うけれど、いろんな仕掛けを作っていかないといけないと思います。働くためのツール。物だったり人だったりするけれど少しづつ蓄積していくことが必要だと思います。企業は今、社会貢献という事を考えています。ISO取得もその一つ。企業が変わろうとしている今だからこそ福祉も変わらなければと思います。

(おわり)


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