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【資料】
成長力底上げ戦略(基本構想)


平成1 9 年2 月1 5 日
成長力底上げ戦略構想チーム

T.基本的な姿勢


1.「働く人全体」の底上げを目指す

〇 「成長力底上げ戦略」は、成長戦略の一環として、経済成長を下支えする基盤(人材能力、就労機会、中小企業)の向上を図ることにより、働く人全体の所得や生活水準を引き上げつつ、格差の固定化を防止しようとするものである。

・ 本戦略は、大きく(ア) 職業能力形成の機会に恵まれない人、(イ) 経済的自立(就労)を目指していながら、その機会に恵まれない人、(ウ) 生産性を向上させ賃金の底上げを目指していながら、その機会に恵まれない中小企業を対象として取り上げている。これらの機会に恵まれない人や企業の問題は、このままでは格差の固定化に結びつく懸念があることから、これらの事例に正面から取り組むことにより、問題解決を目指すものである。

2.「機会の最大化」により「成長力の底上げ」を図る

〇 「成長力底上げ戦略」は、単に『結果平等』を目指すような格差是正策とは異なり、意欲のある人や企業が自らの向上に取り組める「機会(チャンス)」を最大限拡大することにより、底上げを図るものである。これにより、労働力人口が減少する中で、人材の労働市場への参加や生産性の向上を図り、他の成長戦略と相俟って、経済の活力を維持・向上させ、経済成長を高めていくことを目指している。

3.「3本の矢」―「人材投資」を中心に

〇 「成長力底上げ戦略」は、戦略の柱を以下の3つとし、「人材への投資」を中心に据えている。

@『人材能力戦略』
「職業能力を向上させようとしても、能力形成の機会に恵まれない人」への支援

A『就労支援戦略』
「公的扶助(福祉)を受けている人などで、経済的自立(就労)を目指していながら、その機会に恵まれない人」への支援

B『中小企業底上げ戦略』
「生産性向上を図るとともに、賃金の底上げをしようとしているが、その機会に恵まれない中小企業等」への支援




U.戦略の基本構想


1.人材能力戦略

◎ ”能力発揮社会”の実現

― “誰でもどこでも職業能力形成に参加でき、自らの能力を発揮できる社会(能力発揮社会)”の実現を目指す。このため、将来に向けての突破口として、国、自治体、産業界等社会全体で、以下の取組を進める。

(1)「職業能力形成システム」(通称;『ジョブ・カード制度』)の構築

@「職業能力形成プログラム」の提供
・ 希望者(フリーター、子育て終了後の女性、母子家庭の母親等の就職困難者のほか、新卒者も対象)に対し、協力企業等における「雇用訓練方式」と「委託訓練方式」によるOJT(実地訓練)と座学を組み合わせたプログラムを積極的に提供。

A「ジョブ・カード」の交付
・ プログラム履修者に対し、プログラム参加状況や実績に関する評価の認定の内容を記載する「ジョブ・カード」を交付する。「ジョブ・カード」には、技能検定実績やこれまでの職務実績、後述する実践型教育プログラムの履修証明等も記載することができるようにし、本人がこれを提示することにより、求職活動に活用できるようにする。

B「職業能力形成」に対する経済的支援
・ プログラム参加者や参加企業等に対して経済的な支援を行う。

C「キャリア・コンサルティング」の拡充
・ プログラム参加者に対し、ハローワークやジョブカフェにおいて訓練参加の相談・準備から就労まで綿密なキャリア・コンサルティングを行う。

(2)大学・専門学校等を活用した「実践型教育システム」の構築

@ 大学・専門学校等における「実践型教育プログラム」の提供
・ 希望者(フリーター、子育て終了後の女性、母子家庭の母親等の就職困難者のほか、新卒者やキャリアアップを目指す人も対象)に対し、大学・短大・高専・専門学校の高等教育段階の教育プログラムを開放。

・ 教育プログラムの作成にあたっては、既存プログラムを活用するとともに、業界・企業とも連携して新たなプログラム開発を行う。

A 履修証明書の交付
・ プログラムの履修者に対し、履修証明書を交付するとともに、「ジョブ・カード」にその内容を記載する。

(3)官民共同推進組織の設置

○ 上記の「職業能力形成システム」及び「実践型教育システム」の具体的構想を検討するとともに、地域や産業界における能力形成機会の提供を含め、円滑な実施を推進するため、官民からなる推進組織を設置し、以下のスケジュールで取り組む。

◆ 平成19年度(本格実施に向けての準備)
・ 官民からなる「構想委員会」の設置と「先行プロジェクト」の実施。

◆ 平成20・21年度(本格実施)
・ 官民からなる「推進協議会」の設置と本格実施(準備が整った業種・企業・大学等から実施)。

◆ 平成22年度以降
・ 実施状況を検証しながら、対象業種・企業・大学等を拡充。


2.就労支援戦略

◎『「福祉から雇用へ」推進5か年計画』の策定・実施

― 「福祉から雇用へ」の基本的考え方を踏まえ、公的扶助(福祉)を受けている人などについて、セーフティネットを確保しつつ、可能な限り就労による自立・生活の向上を図る。このため、平成19年度を初年度とする『「福祉から雇用へ」推進5か年計画』を新たに策定し、関係機関間や産業界等との連携を図りつつ、本計画を実施する。

(1)『「福祉から雇用へ」推進5か年計画』の策定

@ 具体的目標の設定
・ 母子家庭世帯、生活保護世帯、障害者等の就労移行に関する5年後の具体的な目標を設定し、実績を検証しながら本計画を推進する。

A 推進方策の計画的な実施
・ 母子家庭世帯、生活保護世帯、障害者等を対象とした就労支援方策として、福祉(就労支援)及び雇用(受入促進)の両面にわたる総合的な取組を進める。19年度〜21年度を集中戦略期間として施策の展開を図る。

〈主な施策〉

○ 地域の特性を活かした就労支援体制の全国展開
・ 「障害者就業・生活支援センター」を全障害保健福祉圏域に設置(約400 ヵ所)
・ 各省庁・各自治体において、障害者が一般雇用に向けて経験を積む「チャレンジ雇用」を推進・拡大
・ 障害者に対する「就労移行支援事業」を全国展開
・ 平成19年度までに「生活保護の就労支援プログラム」を全自治体で策定
・ 母子家庭等就業・自立支援センターやマザーズハローワークなどの子育て女性重点支援拠点を全国展開

○ ハローワークを中心とした「チーム支援」
・ ハローワークを中心に福祉関係者等と連携した「就労支援チーム」の体制・機能強化
・ ハローワークにおける「就労支援アクションプラン」の推進により、支援対象者(生活保護・母子世帯)の就職率を60%に引き上げ

〇 障害者雇用促進法制の整備
・ 短時間労働・派遣労働を活用した雇用促進、中小企業における雇用促進等を図るための障害者雇用促進法制の整備

○ 関係者の意識改革
・ 企業の経営者・労働組合・従業員、福祉関係者等の意識改革と、相互の協力関係の構築等を通じ、雇用機会を拡大

○ 「工賃倍増5か年計画」による福祉的就労の底上げ(後述)

(2)「工賃倍増5か年計画」による福祉的就労の底上げ

○ 授産施設等で働く障害者の工賃水準を引き上げるとともに、一般雇用への移行の準備を進めるため、『「福祉から雇用へ」推進5か年計画』の一環として、産業界等の協力を得ながら、官民一体となった取組を推進。

@ 「工賃倍増5か年計画」を全国で策定、推進
・ 平成19年度中にすべての都道府県において「工賃倍増5か年計画」を策定。関係行政機関や地域の商工団体等の関係者を挙げた協力の下、5年間で平均工賃の倍増を目指す。

A 企業的な経営手法の活用
・ 民間企業の有するノウハウや技術を積極的に活用。このため、コンサルタントの派遣、企業OBの紹介・あっせん等により、商品開発や市場開拓、障害者が能力を発揮でき作業効率の向上につながる職場環境の改善等を推進。

B 工賃水準の確保につながる企業からの発注に対する措置
・ 障害者雇用促進法による、障害者に対する企業からの仕事の発注を奨励する仕組みについて、対象となる福祉施設の範囲を拡大して運用し、工賃水準の確保と一般雇用への移行に取り組む福祉施設への仕事の発注を奨励。


3.中小企業底上げ戦略

◎ 「生産性向上と最低賃金の引上げ」に向けた政策の一体運用

― 働く人の賃金の底上げを図る観点から、中小企業等における生産性の向上とともに、最低賃金を引き上げるため、産業政策と雇用政策の一体的運用をはじめ、地域活性化等を含めた官民をあげた取組を強力に推進する。

(1)「生産性向上と最低賃金引上げ」に関する合意形成

〇 「成長力底上げ戦略」を推進するために設置する「成長力底上げ戦略推進円卓会議(仮称)」(後述)において、生産性の向上を踏まえた最低賃金の中長期的な引上げの方針について政労使の合意形成を図る。

(2)「生産性向上プロジェクト」の推進による賃金の底上げ

@ 下請取引の適正化 ― 生産性向上の成果を下請業者に適正に配分
・ 業種ごとに下請取引の適正化のためのガイドラインを策定、遵守を指導
・ 独禁法及び下請法による取締強化
・ 取引価格の決定において下請事業者に十分配慮するよう要請
・ 下請の取引拡大のための支援

A IT化・機械化・経営改善
・ 「生産性向上特別指導員」による経営改善やIT導入のためのコンサルティング(あわせて、小規模事業者データベースを構築)
・ 設備投資等のための金融・税制
・ 小規模零細企業同士の共同事業化

B 中小サービス業等への取組
・ 自動車、電子機器など生産性の高い製造業におけるノウハウを移転
・ ファンドによるサービス業等の生産性向上投資への資金提供

C 中小企業の人材能力の向上
・ 前述の人材能力戦略を通じ、中小企業の人材能力の向上を図る。

(3)最低賃金制度の充実

@ 最低賃金の周知徹底
・ 最低賃金遵守のための事業所に対する指導の強化
・ 最低賃金の国民への広報の推進

A 最低賃金法の改正(改正法案を国会提出予定)
・ 最低賃金額決定における生活保護との整合性の考慮
・ 違反に対する罰則の強化等

B 最低賃金引上げに向けた取組
・ 前述の円卓会議における政労使の合意を踏まえ、最低賃金の中長期的な引上げに関して、産業政策と雇用政策の一体運用を図る。


4.「成長力底上げ戦略」の推進体制

◎ 官民一体となった推進体制

― 「成長力底上げ戦略」の推進のため、官民一体となった推進体制を国及び地方のレベルで構築する。

(1)戦略推進体制の整備

@「成長力底上げ戦略推進円卓会議(仮称)」の設置
・ 「成長力底上げ戦略」が、国民各層の理解を得て適切な効果をあげることを目指し、官民からなる「成長力底上げ戦略推進円卓会議(仮称)」を設置する。国レベルだけでなく、地方のレベルにおいても同様の推進組織を設置する。

A 政府部内の推進体制
・ 「成長力底上げ戦略」を推進するための政府部内の体制づくりを行う。

(2)戦略の進め方

@ 推進スケジュール
「成長力底上げ戦略」は、原則として3年間に集中的な取組を行うものとする。ただし、各戦略には、本格実施に準備を要する施策が多く盛り込まれていることから、平成19年度中は、基本的には本格実施の準備及び各施策を有効に組み合わせた先行的取組みを展開する期間とし、本格実施は平成20年度からとする。22年度以降は実施状況を検証しながら施策を展開するものとする。

A 政策の一体運用
「成長力底上げ戦略」の効果を最大化させるため、官邸主導により雇用政策、社会保障政策、産業政策、文教政策の一体運用を目指す。また、再チャレンジ支援、労働市場改革等との連携を図りつつ、地方のレベルでも、同様の取組を促す。



成長力底上げ戦略構想チーム構成員

主査       内閣官房長官
主査代理     内閣府特命担当大臣(経済財政政策担当)
  〃       再チャレンジ担当大臣
副主査      内閣府副大臣
  〃       内閣府政務官
         内閣官房副長官補
         内閣府事務次官
         内閣府審議官
         内閣府政策統括官(経済財政運営担当)
         財務大臣官房総括審議官
         文部科学事務次官
         厚生労働事務次官
         厚生労働審議官
         経済産業事務次官
         中小企業庁長官


・ 根本・世耕両内閣総理大臣補佐官をアドバイザーとする。
・ 戦略構想チームは、必要に応じ、その他の関係者の出席を求めることができる。
・ 戦略構想チームの庶務は、関係行政機関の協力を得て、内閣府成長力底上げ戦略担当室において処理。

【資料提供:成長力底上げ戦略構想チーム】
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