KOBEフォーラム2002へのメッセージ・・・
               
 野田 聖子
 野田聖子です。今回、『Letユs ユニバーサル・シティ KOBE フォーラム2002』のパネルディスカッションに参加させていただきます。どうぞよろしくお願いします!
 皆さんはきっと、「なぜ野田聖子が神戸に来て話をするの?」という素朴な疑問をおもちのはず。併せて、「ユニバーサル・シティって、何?」と思っているかもしれません。私は今回のフォーラムの仕掛け人の一人である、(社福)プロップ・ステーションの竹中ナミ理事長と浅からぬご縁をいただき、私たちの日本をユニバーサル社会に作り変えよう!という活動を展開し始めたところです。国会において、与党の女性議員だけで構成される政策提言協議会なる組織があるのですが、その下部組織の一つとして、同じく今回のパネラーである公明党の浜四津敏子衆議院議員のご指導のもと、『ユニバーサル社会の促進形成に関するプロジェクトチーム』を結成し、その座長を務めさせていただいております。
 私は広範にわたる議員活動のなかから、自分のライフワークとして、3つの分野を選んでとりわけ力をいれて勉強したり政策提言を行っています。第一がIT、情報通信。第二に人権、そして第三が環境。どれもこれも、わが自由民主党ではちょっと前まで、重要議題と思われていなかった案件です。私のような女性で、比較的年齢も若い議員が、自分の存在感を見出しつつ先輩議員と伍して活動していくには、先輩たちが苦手としていたり軽視している分野に長じるほかない!という、生きる知恵から出てきた取り組みです。
 なかでも、情報通信を学ぶことを通して、実に大きな収穫を手にすることができました。もともと自分自身がパソコンお宅的要素をもっていたのですが、国会議員に先立つ県議会議員のころ、厚生関係の視察の一環で重度身体障害者ホームへ立ち寄りました。当時20代であった私と余りかわらぬ世代の男女の生活する場に通されて説明を受けるものの、彼らとの意思疎通は図れない。そう思っていたところ、そのなかにパソ通ができる方が数人いることを知ったのです。初めは、えっ!?という感じでしたが、帰宅してすぐに彼らとのパソコン通信が始まりました。長らく寝たきりの生活を強いられてきた彼ら、彼女らがパソコンを通して私に語りかけてくれることは、同世代の私の心にビンビンと響くことばかり。気持ちを知り合えば、私もみんなも変わりないじゃない!と思い、ひどく感激したことを覚えています。
 その感動はすなわち、情報通信の存在意義そのものでした。手足も動かず、表情にさえ訴えられない障害者の友たちにとって、ITは限りない可能性を与えてくれます。障害の有無に関わりなく、意思を明確に伝え思いを表現するツールが存在するこの時代だからこそ、「障害者」を一括りの定義の下に取り扱い、個々の能力や個性の違いを軽視しがちだった行政のあり方を大きく変えていく可能性がある、と私は思うようになりました。
 そんななか出会ったのがナミねぇこと、竹中ナミ理事長でした。彼女は「障害者を納税者にする」ことを目標に掲げ、私たちの国・社会の仕組みをよりユニバーサルなものに作り変えていくことを提言されていました。この国に生きる全ての個人が、人種、信条、性別、社会的身分、門地、障害の有無、年齢等にかかわりなく、互いにその人権を主張しつつ、責任と権利を分かち合い、その個性と能力を十分に発揮することによって、誇りをもって共生し、また、自立できるような社会、「ユニバーサル社会」を築き上げていこう、との思いで私たちは深く共感しました。
 個人が自分の生き方に責任をもちつつ、自分の能力を開花させたいとチャレンジする際に、国・社会として、その夢や希望ができる限り実現できる方向で、さまざまな選択肢やチャンスを与える−それこそが成熟した国家にふさわしい社会づくりのあり方だと固く信じています。政策提案や立法という議員の本職を通じ、努力する人にとって大きな支えとなったり満足感を与える制度やしくみを、一つでも多く実現していこうと、ナミねぇの力を借りながら一生懸命取り組んでいるところです。
 このたび、神戸市の皆さんが辛い震災の被害から立ち上がり、21世紀にふさわしい街として神戸を復活させる方途として「ユニバーサルなまちづくり」を目指されていると知り、とても嬉しくおもっています。神戸市が時代の先端を切ってこの目標に取り組まれ、一定の成果を収めることが、今後、多くの地域によき前例として波及していくことが大切です。このフォーラムにおいて、日本全体を包み込むユニバーサル社会の基礎がしっかりと据えられるよう、出席者の一人としてお話申し上げご理解賜れるよう、私も頑張りたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。