ああ、かつて、「わたくし、
消防署のほう、からやってまいりました。」の巧妙な物言いに
乗せられ
市価の3倍の消火器を買った。
釣り糸付きの紙人形を「たねも、
しかけもないよ。」といって
あやしげな外人から買わされた。
そんな過去を持つ私だが、もう、
それは過去のこと。
若気のいたり。
遅く起きた日曜の朝、
ふと、目にした情報誌に
目がさめる。
テレビチャンピオン某氏推薦の店!
今世紀最高のコックは私だ!
料理は科学だ!自身の料理理論を語らせたら、3時間半!
さながら実験室のごとき店内の置かれた数十種の粉と液体のなぞ!」
「インチキ臭い!」と疑う夫の反対を「これは、ロマンだ、冒険だ!」と説き伏せ、
高速に乗り、地図を便りに
たどり着いたはぼろぼろの古屋。
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その前に待つ人影もなく・・・。
勿論、店内とて客はなし。
おそる、おそる入る店内。
火元も消えて・・。
一抹の不安を拭い捨て
【なんとなれば、
店内に王貞治の色紙あり。】

いっぱい千五百円の
ラーメンを注文す。
落ち着いて見渡す店内、薄汚し。
ゴミの山にエロ雑誌。
店内は油と手垢でどす黒く。
NASA特性の水だけど、黄ばんだコップにそそげば、水垢の味。
ああ、よぼよぼの今世紀最高のコックの手際の悪さよ!
えんえんと待たされたあげくに
出たは、手垢によごれた丼。
さめたスープにまずい麺。
れんげまでもがずず黒い。
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今勇気をふるって一口すすれば・・
「ま、まずい!テレビチャンピオンの文章はこう続く。
「科学の実験室さながらに、何種類もの液体と、粉類のはいったビンが並ぶ・・」
チャンピオンさん教えてあげよう、丼のへりについていた、緑の粉はただの抹茶、
そして底に沈むは、煮干しの粉だよ!
「なにが、今世紀最高のコック、だよ!」
あまりのショックに怒る私にここをよく読め、と情報誌を指指す夫。
ああ、そこにかかれていたのは「幻妙な味」と・・・!
おいしい、とは一言も書かれていない!
「で、でも、王貞治のサ・サインが!」
「あほ!そんなもん、
どこでも手にはいる。
ほんまに店に来たんやったら
・・さん江って日付いりで
書いとる!」
ちゃん、ちゃん!
冷静な夫に完敗の週末でした・・はい。
【追伸】
三つ葉はラーメンに絶対合わない!
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