リレーエッセイ 「チャレンジドの夢」

 久保 利恵さんの場合

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「年令」
 
久保さんカット 私は、実際の年令よりも若く見られていると思う。いや、絶対に幼く見られている。中学生の頃、あるエレベーターで、知らないおじさんに、いきなりこんな事を言われた。「ぼく、どこの小学校?」。私は、ムッとして「村野中学です。」。おじさんは、私を見つめて「・・・・・。」。真っ赤な車椅子に乗ってて、スカートまではいているのに、一体このおじさんは、どこを見て「ぼく」と思ったんたんだろう?「どこの小学校?」は、まだ許そう、でも「ぼく」は、ないんじゃないの?
 それから、成人した二十歳の頃、ある作品展で絵画を出展した時の事。私が、たまたま当番で受付に座っていたら、またしても、知らないおじさんがやってきて、「あの浮御堂の絵、どなたが描いたんですか?とても良いですね。」と言ました。「それは、私が描いたんです」。それから、そのおじさんと、絵の事やいろんな話をしていると、どうやら私が子供ではないという事に気が付いたらしい。おじさん、曰く、「ところで、あなたは、何歳なんですか?」。「短大も卒業して、二十歳なんです。」。おじさんは、凄く驚いて「それは、失礼しました。子供が描いた絵にしては、ちょっとませた絵だから、それを注意しようと思っていたところなんです。本当に失礼しました。」っと、何度も、謝られてしまいました。
 友達と買い物に行った時だって、店員に「今日は、お姉ちゃんと買い物なの?良いわね〜。」っと、言われ、いつもムッとする。「友達なんです。」っと、笑顔でやんわりと答えているけど、心の中では、「何で良いねん!ちっとも良くないわぁ。同級生やっちゅーねん!」っと、突っ込みを入れている。  背も低いし童顔だから、少しくらい若く見られるのは仕方ないかもしれない。でも、歳相応に見られない!と言うのが、私の悩みなんです。
 だけど、悪い事ばっかりでもないんです。たまには、良い事もある。短大の研修でイタリアに行っていた時、その日の勉強を終え、クラスの皆と、あらかじめ学校から予約されていたレストランで夕飯を食べました。最後に出てきたデザートを見てビックリ!私だけ、皆と違うんです。皆は、ピスタチオのアイスクリームだけなのに、私のは、チョコとストロベリーのアイスに、かわいいハート形のウエハースがのっかっていて、お皿も「おこちゃまチック」だったけど、とってもかわいらしいモノだったんです!皆に、かなり羨ましがられ、私はとっても幸せな気分でした。明らかに、皆と同じ短大生に見られていない!っという事なんだけど、その美味しさと、食べ切れない程の大盛りアイスクリームに「全てを許そう!」っと思ったのでした。
 国内で「得をしたなぁ〜。」って思った事もあります。あるレストランで、家族3人で同じものを食べたら、何にも言ってないのに、何故か私だけ、お子さま料金になってたんです。あるホテルに宿泊した時もそうでした。まぁー、そんな事もあるんです。だから、結局は、プラスマイナス0かな〜?って感じなんですけどねぇ〜。それに比べて、インターネットの世界は良いですよ。プロフィールに年令を書けば、自動的にプラスマイナス0ですから。私は、インターネットのそんなところも好きなんです。
 
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