リレーエッセイ 「チャレンジドの夢」

 貝本 充広さんの場合

バー

「MOVIE・こぼし話(後編)」
 
貝本さんカット 正月気分もそこそこにムービーの残り部分制作に着手した。元旦は朝の8時頃家に帰ってきたので二日から気合いを入れることにした。と、思ったが個人作品の制作があったのでとりあえずそっちにかかった。ノリノリで作品を仕上げた僕は8日からムービーの方に取りかかった。恐らくその時点で半分ほど残っていたと思う。そこからの記憶はなぜかほとんどない、多分朝から晩まで同じ事をずっと繰り返していたんだと思う。ただ申し訳なく思ったのは、僕自身が仕上げに使うアプリケーションのことを何も分かっていなく勝手気ままに思うように作ってしまったので、その分事務所で完成させて下さった方々に多大な苦労をかけるハメになってしまったのである。本来なら僕もそっちのアプリケーションで作れば良かったし、そのつもりだったが今回は時間がないので勉強しながらには無理があると思い断念した。でもその無理をやってのけた人がいた。ピンチになるとそれを救ってくれる人材が現れるもので、つくづくスゴイ人だと思った、あの分厚い解説書を何冊も入れた重い鞄には脱帽した。そして結果として都合が分かっていなかった僕の自由奔放な表現によって実に倍の4ヶ月という苦労をスタッフの方々にかけることになってしまった。
 2月に入りしばらくして僕サイドではほとんど仕上がってきた。ここで先生が二度目のダウンを喫した。この段階になると手直し、追加の連続で大変だったが、もうココまで来るとそれくらいは大したこと無かった。あとショックだったのが5〜6秒のシーンなのだが丸一日を費やした部分があって、そこが1秒ほどに・・さらにはカットという話になって、そればっかりは泣いてお願いをした。最終的には苦心のたまものなのだろう、カットされたシーンというのはほとんどなく僕の渾身のシーンも尺もそのままに残していただくことが出来た。「おもいおもいのe-letter」というタイトルが出た後すぐのシーンです、もしコレを読んだ後見る機会があれば、そんな裏話もあったんだなと思いながら見て下さい。
 僕はゴールが見えてほっとしていたのだが、それもつかの間、ムービーの本編制作を引き受けたときにフッてもらったつもりのパートがなんと手つかずで残っていると言うではないか。ハッキリ言って僕の家から神戸の事務所までは結構遠い、その距離を打ち合わせで通っていた時の何度目かのことだった。そしてその部分は僕がやることになってしまったが、ガクッと気を落としたと同時にやり切れない思いに包まれていた僕に先生がかけた一言はさすがだった。知ってか知らずか僕のおバカな部分をチョイチョイっと刺激し、思わず「そぉ〜ですかー?」などとニヤけて受けてしまった。乗りかかった船とばかりにやってはみたが結局時間や容量などの関係で一部を除きほとんど採用されることはなかった。
 その後も間際になってのシーンの追加などがあった。不思議なモノで手を休めてしばらく経つと自分が作ったはずのキャラクターも描き方を忘れてしまっていた、息を抜きすぎたのだ。あんまり関係ない話かも知れないがこの制作期間中、部屋の冷蔵庫に缶コーヒーやその都度大量にお菓子を買い込んで食べ続けたが、いっこうに体重は増えなかった。そんな苦労もあってプロップステーション初の一般向けCD-ROM「おもいおもいのe-letter」は出来上がりました。文字通り僕達のいろんな想いが詰まっています。もしどこかで見かけることがあったら一度手に取ってみて下さい。
 
バー


戻る