リレーエッセイ 「チャレンジドの夢」

 北岡 理都子さんの場合

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北岡さん 「今年のチャレンジ」
 私は、三重県に住む障害者の女性です。年齢は、ご想像におまかせします。障害は、生まれつきの脳性小児マヒ。緊張が強く、不随運動、言語障害もあり、歩行はもちろん、身辺のことは何もできません。自宅で家族(おもに母)の介護を受けながら生活しています。
 私は、書くことが好きです。好きというか、書くことで自分が表現できる、認められる嬉しさかも知れません。10年ほど前、地元の町制30周年記念で標語を募集していたので「ものは試しだ、出してみよう」と出したところ、最優秀賞になりました。3年前、三重県の『童話と絵本のコンクール』に創作童話を書いて応募しました。いろんな人に見てもらってアドバイスを受けたりして、自分が納得いくまで何度も何度も書き直しました。すると、その甲斐あってなんと佳作に選ばれたのです。気をよくして翌年も応募したら再度、佳作に選ばれました。また、ある商工会議所が募集していた俳句にも、ろくに季語も知らないのに入選ということもありました。 これらのことで私が一番嬉しかったのは、どれも大勢の一般の人達(つまり健常者)の中で争って勝ち取ったことです。このことは、私にとって書くことへの自信につながっているし、私の誇りだと思っています。
 そして、私は外に出ることも好きです。外に出ようとすると身じたくを整えて、理解して送り出してくれる母の協力もありますが、歩行ができない私が一人で外出できる強い味方は、なんと言っても電動車椅子です。
北岡さん  三重県を走っている近鉄の大半の駅は乗り降りしました。遊びもありますが、ちゃんとした目的があり、外出しています。私は、いろいろなことに首を突っ込んでやっています。電動車椅子サッカーの練習や遠征試合・大会など、点字ボランティアの勉強会、自立生活センターをつくる会、体の機能を維持していくためのリハビリetc・・。これらのことで週3回は外出します。点字の勉強会以外、津市の身障センター(自宅から約35キロ)であるので、雨の日や体調が良くない時は母に送ってもらっていますが、できるだけ自分で電車に乗って行くようにしています。
 三重県は、まだまだ田舎で南北に長いこともあり、交通アクセスが整っていないせいもあって、家に閉じこもりがちな障害者、事情はどうであれ療護施設に入る障害者が多いようです。仲間と、そうした人達を引っ張り出し、なんとか三重県にも一日も早く自立生活センターをつくりたいと思っています。そして思いあがりかも知れませんが、こうして私たち重度障害者が外に出たり、電車に乗ったりすることで人の心を、社会を変えていきたいと思います。一銭にもお金にはなりませんが、これが私の仕事なのです。 そして私は、この世に生まれてきた以上、生きた「あかし」を何か残したいのです。
 最近、私にも脳性小児マヒの宿命というべき二次障害の兆候が出始めています。今までは考えもしませんでしたが、新年を迎えて思ったことは今日、今の時間を大切にしていこうと、いうことです。 これから先、二次障害の進行が進んで今の状態より悪くなるかも知れません。でも、私の周りにはかけがえのない家族、友人、サポートして人達がたくさんいます。そういう人達にささえてもらいながら、私は自分のできる範囲で、できることをやっていくつもりです。
この「チャレンジドの夢」コーナーへの自己紹介掲載を契機に、今年も、私にしかできないことにチャレンジしたいと思っています。それが何かということは、まだ私にもわかりませんが。
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