リレーエッセイ 「チャレンジドの夢」

 井上 雅友さんの場合

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井上さんカット「犬いろいろ」

 私の弱いものは昆虫と犬です。昆虫はあの足に捕まれると、もうどうにもなりません。犬、こいつは噛まれた経験がある訳でも無く、何故弱いのか分かりませんが只怖いのです。こちらの恐怖心が敵に伝わって何時もワンワンと吠えられるのが嫌いに拍車を掛けているのでしょう。その上、私の歩く姿も普通ではないので犬も怖いのでしょう。
 かと言って我が家に犬が居ないかと言えばそうでもありません。私の小学校以前の写真にはシェパードの背中に乗って御機嫌に私が写っています。我が家には二頭(匹)のシェパードがゲージの中で暮らしていました。これは四、五歳の時の話で、普通には小学校入学の時点で私は病院にいましたから、その犬たちが死んだのも記憶にはありません。
 二十年か、三十年か前ですが、盲導犬が近くにいました。今でこそ市民権を得ようとしているかに思えますが、その当時はまだまだ珍しい存在で私も「盲導犬」はテレビで存在は知っていましたが実際見るのは初めてでした。私が近くを歩いても吠えないのです。それを見ていた父は「あんな賢い犬が良いなぁ。」と言っていたのを思いだします。
 余談ですが「介護犬」も早く今の盲導犬ぐらいの市民権を与えるべきだと私は考えますし、今の「盲導犬」ももっと社会が受け入れるべきだ思っています。「盲導犬」とはほど遠いのですが父の犬好きにも困ったもので、今の家に引っ越してから家族に内緒でチワワとパグを買いもとめ、チワワの方は交通事故で死にましたが、パグの方は少し太り過ぎですが元気に暮らしています。
 犬の散歩が父の日課だったのですが、その父の急死(平成十年十一月)で、今は私がその係りを受け継いでいます。そして散歩の途中、父の犬仲間の人達から父の話を聞く機会が出来ました。父の人柄が良かった為か、只の犬好きだったのかは分かりませんが余所の犬も可愛がっていたと聞かされ、それはそれで良い話だと思います。そのパグは頭が悪く、今は七才か八才になるのですが私のパソコンの部屋で時々「お漏らし」をするのです。私のパソコンの腕を馬鹿にしているとしか思えないほどです。逆に大変賢いのかも知れませんが。ただ、ボスが変わった事だけは何とか分かっているらしく、私が服でも着替えようものなら私のうしろを付いて離れません。私の犬嫌いは変わりませんが散歩のお陰で健康的な生活と、俳句らしきものが出来るのは良い事だと思っています。

  平成十年十二月
湯気立てて尿(しと)ながながと父の犬
                井上雅友

 この俳句は朝の散歩で出来た一句です。意味は単純に言って「生と死の象徴」です。上記の俳句について一言だけ言い訳を致しますと、「湯気立」と言う季語は本来、冬の家の中の乾燥を防ぐ為に湯気を立てる事を指しますが、私のこの句ような使い方が許されるものかどうか、はっきり致しません。が、冬の寒さが伝われば幸いに思います。
 カットもこの一句にしました。デジタルカメラで撮ったパグを俳句と合わせてみました。

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