リレーエッセイ 「チャレンジドの夢」

 久保 利恵さんの場合

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くぼさんカット「本当にある夢の街」

 ショッピングへ行く為にバス停でバスを待っていたら、バスが来て私の目の前に止まり、運転手が「どこまで行くんですか?」と私にたずねました。「アラモアナショッピングセンターまで行きたいんですけど。」と答えると、「ちょっと後ろへ下がって。」と言い、バスから車椅子用のリフトを下ろしてくれました。案内されリフトに乗ると、あっ!という間にバスの中へ。そして、すばやく座席を2人分折りたたみ、備え付けの専用の機具で車椅子をバスに固定させ、その後、他のお客さんを乗せると、何事もなかったかのように走りだしました。この時、私は、生まれて初めてリフトバスに乗ったのです。しかも、日本ではなく初めて訪れた外国であるハワイのワイキキで!!!
 その、感動と驚きはその日だけではありませんでした。翌日の夜、ディナークルーズに出掛けた時、さらに驚くべき出来事にそう遭遇したのです。普通の観光バスにも車椅子用のリフトが付いていたんです!!!街を走っている路線バスとは、ちょっと構造が違っていましたが、バスの座席の中央辺りの壁がバカッ!っと電動ではずれるようになっていて、そこが車椅子用の出入り口になり、リフトが出て来るんです。前回のバスのように、座席を何人分か取り外して車椅子用のスペースを確保していたので、車椅子使用者が乗らない場合は、座席をはめ込んで普通の観光バスとして使用しているようでした。添乗員さんに「凄いバスがあるんですねー!」と驚きながら言うと「アメリカでは、常識ですよ。」。こんな凄い事がアメリカでは、常識だったんです。信じられませんでした。
 日本では、外出しようと思った時、まず駅までバスに乗るのですが、そのバスには、リフトがない為、乗る事が出来ません。じゃー、どうするかと言うと、車で行きます。だから、運転してくれる人と私のスケジュールを合わせなければなりません。合わなければその時点でその外出は、アウト。タクシーという手もありますが、ちょっとした買い物で毎回乗れる程、私はお金持ちではありません。なんとか、目的地に着いても、階段があって入れないお店があったり(大体、事前に調べてから出掛けますが)、通りがかりに寄ってみたいお店を見つけても入り口が狭くて入れなかったり…。私は、面倒だと思いながらも、ずっとそういう生活をしてきたので、それが当り前だと思っていました。でも、違ったんです。そんな事、気にしないで過ごせる街があったのです。私は、その街で初めてやって来た外国人観光客だったにもかかわらず、市販のガイドブック1冊で、しかも車椅子で行きたい所にすいすい行けたのですから。凄いですよね。私が行った全てのお店にスロープやリフトがっあったので不自由さは感じなかったし、そこで生活している人は、凄く便利なんだろうなぁ〜と思います。ガイドさんの話によると、街を走っている路線バスの8割がリフト付きで、車椅子で1人でバスに乗り、通勤している人が何人もいらっしゃるそうです。きっと、その人達は、通勤以外でもバスを利用して遊びに行ったり、生活をエンジョイしているんでしょう。私もそこに住んでいれば、思い立った時に「ちょっと、友達の家に行って来るー。」なんて事も夢じゃありません(1人で友達の家に行った事なんて1度もないので)。
 昨年、初めてハワイへ行って、できれば私もこんな街に住みたいなぁ〜と強く感じました。本当にあった夢の街の話です。

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