リレーエッセイ 「チャレンジドの夢」

 貝本 充広さんの場合

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貝本さんカット「稼ぐことの価値」

 最近僕もボチボチと仕事による報酬が頂ける身分になってきました。今絵を描くと言うことは直接的・間接的、その望む望まないに関わらず、夢物語を語ろうと少なからず金銭に結びつくことが多くなってきていますし、これからは益々そうなっていくことでしょう。
 僕は現在車椅子での生活を余儀なくされていますが、少し前は色々なアルバイトをすることもありました。その時は別に何も考えずカラオケや家庭教師などのバイトをしていました。しかし今になって思うのは"仕事"をして"お金"を貰うことの意味。サラリーマンは営業や事務などで給料を貰っているが、恐らく毎日の自分の行動に対して「あ〜、仕事をしたぁ」とは思っても「今日も良く稼いだーっ」なんて思う人は少ないのではないでしょうか。それにそれが自分の本当にやりたいことと思っている人はもっと少ないはずです。アルバイトともなればそれは顕著でしょう。
 僕もバイトしていた時分は逆に「今日は6時間やから幾らかなぁ?」とかゆう風でした。ポジティブシンキングが僕のモットーなんですが、普通に考えても自分が好きでやっている事が評価を受け、ダイレクトに返ってくる状況は"稼ぐことの意味"、"お金の価値"を再確認させる素晴らしいものだと思います。自ら紡いだ直線や曲線、センスやアイデアの一つ一つが自身の評価や稼ぎに関わってくるのです。それは今は忘れ去られがちで、一部の人だけが気づいていて、分かっている者だけが得をする、だけどなくても十分楽しく暮らしていける素敵な財産なのです。
 今の僕が絵の評価で得られる見返りはホンの僅かです。しかし金額の高に関係なく、その価値はかなりの、そして相当な「円高傾向」にあります。この先自分自身の稼ぎがどうなっていくかなんて分かるはずもないですが、多かれ少なかれその価値を見失わないようにしたいと思います。
 今や日本では本質を失った言葉や金銭感覚が横行しています。過剰な表現や氾濫によって本来の言葉の意味合いが希薄になりがちで、金銭感覚もそれに平行するように、心的なインフレが起こっているかのようです。その中にあって自分たちの絵に練りこむ想いやメッセージ、稼ぎに対する喜びなどが色褪せていかないように心懸けていきたいです。
 色々書きましたが、実際仕事でお金を頂けると言うことは本当にうれしくて、"生きごたえ"という言うのでしょうか、とてもいい影響をチャレンジドに与えてくれます。

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