村木厚子さんの裁判を見守り支援する部屋

平成22年2月24日 第8回公判がおこなわれました。

元係長・上村勉被告が証人として出廷しました。

第8回公判 傍聴記 平成22年2月24日
by 花ずきんsナミねぇ

「傍聴メモ2010.2.24 by 花ずきんs」

<上村証人尋問>

実際に虚偽有印文書を作成したという上村証人の証言だけに大いに注目して傍聴席に着いた。大柄な人が入廷してきたが、声はこの人も消え入るように小さい。身を乗り出すようにして聞き取った。

 

「稟議書を作って凛の会にFAXし、証明書の作成を先送りしてきたが、先送りでにっちもさっちも行かなくなり、もうやっちゃえ!と・・・作った」と。

開廷から1時間ほどたったころ検事が、「あなたの先ほどからの証言にある“この件を目の前から消したかった”と言うこと“先送りのため”との関係はどういうことですか?」という質問に上村証人は上のように答えたのだ。

 

村木さんは当時企画課長でお顔は知っていたが、仕事の話をしたことは無いと冒頭から村木さんからの指示を受けていないと思われる証言で始まった。

 検事が問題の虚偽有印文書を示し、「これを作成したのはあなたですか?」と質問すると「はい」と認めた。

前任の村松係長からも凛の会の件について引き継がれた記憶はない。4月半ばに凛の会河野氏からの電話で初めて証明書の発行を求められていることを知ったが、4月は係長になり立てで予算の仕事をするのがまず第一だったので、この件は先送りにした。前任者(村松)には、予算に関しては電話でたずねるなどしたが、この件では記憶に無い。と。

 検事が「上司である室長補佐や企画課に相談したことはなかったのか」と質問すると「ありません」と。村松さんが知っているだろうとは思ったが、他に誰も知らないと言う認識だった。上司に相談しなければいけないとも思わなかった。と。「上司に報告しなければいけないとは思わなかったのか」ときかれ「予算が仕事の中心だと思っていたので、証明書は勝手に出してしまえばいいと思っていた。いつまでも引きずらず自分の前から消してしまいたかった。5月中旬あたりから予算の仕事はどんどん忙しくなった。制度が変わったので去年の予算をいじればよいと言うものではなかった。抱え込んで堂々巡り・・・自分の性格もあり・・・・と。当時を語り、冒頭の証言となったのだ。

 ばれることは無いと思ったとも。上司は誰もこの件を把握しているとは思わなかった。とも証言。

 

 検事が「村松係長は、先日の証言で国会議員絡みの案件だと口頭で引きついだと証言したが」と聞くと、きっぱりと「私は引継ぎなど受けていない」と。

  凛の会 河野に私が手渡し、走って帰った

夜中に偽の証明書を作り、翌朝八時に課長の印を押してその日のうちの厚労省近くの喫茶店で河野さんに手渡した。サンダル履きのまま行って走って帰った。けりをつけて1分1秒でも早く職場に戻りたかった。河野さんに渡した時、河野さんの名刺と倉沢という名刺をもらった。その倉沢の名刺の上に手書きで石井一事務所と書いてあった。このことがすごく印象に残っており、このとき初めて石井先生が絡んでいるんだなと思った。渡した相手は河野さんだったと明言できる。怪しい団体だと思った記憶は無い。その後、凛の会のことは一切話していない。縁が切れた、とも。

 

 嘘です  倉沢証言、河野証言 

河野証人は「証明書を受け取ったのは私ではない」と証言し、倉沢証人は「私が村木課長から受け取った」と証言したがと、検事に言われ「嘘です」と即座に二つの証言を否定した。

 

またしても、「村木さんが指示し作らせ、渡した」と言う検察側の主張は覆された。

上村証人は、自分で作り自分で渡した。罪の意識はあったが自分の胸にしまっておけばばれないと思ったと言うのだ。この証明書が莫大な利益を生むために使われることなど考えもしなかったと。国会議員絡みとは、渡す時知ったのであって、その圧力があったとは言わなかった。河野からの圧力も無かったのだろうか。明日もっと聞きたい。

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「厚子さん、第8回公判傍聴記 by ナミねぇ」

2月24日(水)am9時45分、すっかり通い慣れた大阪地裁に到着。
今日の上村元係長の出廷は「事件の天王山」とあって、傍聴券の抽選を待つ人の列が。
私は東京から来られた厚子さんのお嬢さんと合流し、家族傍聴席に着席。

今日の弁護団は、弘中弁護士はじめ8名が臨席。検事側は5名。報道関係者がいつもより非常に多い!

10時ジャストに裁判長が開廷を告げ、証人席で上村氏が自分の氏名を名乗った後「決して嘘を言わない」との宣誓文を読み上げ、第8回公判がはじまる。

結論から言うと、今日の公判は「天王山」どころか、「検察発表と真逆の」まるで「大山鳴動して鼠一匹」とも言えるような、あきれ果てる結果であった。

「大きな法改正の直前でもあり、予算策定という重要案件の前には、こんな瑣末な(障害者団体への証明書発行という)案件は、偽造してでも早く片付けようとの思いから、偽造も手渡しも全て自分の独断でやったことである。」というのが、今日の上村証言の発言要旨でありかつ、結論だ。

上村元係長は、まず平成16年のゴールデンウイーク頃に「公的証明書発行手続きのための稟議書」を偽造。
その後、6月1日未明に、誰れも居ない職場の自席で公的証明書をパソコンで偽造。
そして、午前8時過ぎにプリントアウトし、(課員なら)誰でも取り出せる所においてある「企画課長印」を押印し「凛の会」に連絡。
その日のうちに、厚労省と隣接する弁護士会館の地下の喫茶店で河野に会って、証明書を手渡した。

後ろめたい思いがあったので、厚労省内に河野を入れたくなかった。
手渡してすぐ、厚労省に走って戻った・・・と証言する上村氏。

この証明書で河野らが何億もの利益を上げるなど予想だに出来ず、従って偽造証明書の発行がバレルとは、全く思わなかった。
証明書を手渡した後は、瑣末な案件を処理出来たので「これで重要な予算の仕事に専念できる」と安堵した。

消え入るような小さな声で、ぼそぼそと、淡々と証言する上村元係長。

今日は検事側尋問だったが、検事もあきれたように「上司に相談しなかったのはなぜか?」「何度も正式な決済を仰ぐ機会があったのじゃないか」「公務員として偽造に不安などを感じなかったのか?」と、公務員の倫理観について問いただすが「早く処理したかった」「目の前からこの案件を消したかった」と、応え続ける上村氏。
その声は聞き取れないほど小さく、時折、鼻水をすすり上げて泣き声となる。

この人には、公務員としての倫理観も矜持も無いのか!?
こんな部下の一人芝居のために、厚子さんは逮捕され、長期間勾留されたのか!
厚子さんの無念を思い、傍聴席で怒りに身体を震わせながら私はメモを取り続ける。

上村氏の証言が続く。
河野からは、脅かしも、強い催促もなかった。議員案件と言われているが、石井議員の名前については、証明書を手渡した喫茶店で河野に見せられた名刺に、手書きで「衆議院議員 石井一」と書いてあったので、あぁ政治家も関わってた案件だったのか、と感じた程度だ。

自分には政治家のことなどどうでもよく、早く偽造証明書を渡して職場に戻りたかったことだけ覚えている。決してバレないと思っていたのに・・・・・こんなことになるなんて・・・と、まるで「自分は不運だった」と言わんばかりの上村氏の証言に、怒りと驚きを通り越し、遂には情けなさが胸に広がってくる。

と同時に、大きな疑問がわきあがる。

上村氏は、検察での取調べ当初「独りでやった」と供述していたようだが、いつの間にか「村木課長の指示」「政治案件なので急いで、と言われてやった」などと証言が変わって行った。
それはなぜなんだろう?

上村氏が河野被告に偽造証明書を直接手渡したのなら、「倉沢被告が、受け取った日付けも思い出せないくせに、村木課長から、課長席で証明書を手渡されたと、執拗に言い続ける」のはなぜなのか?

今日、上村氏はこの倉沢証言を「全くの嘘。自分が河野に渡した」と何度も明言した。
「厚子さん関与説」の決定的証拠とも言うべき「倉沢証言」の筋書きを創造し、彼にそれを言い続けさせているのは、いったい誰なのか!!??

巨額の利益を得た河野、倉沢らが罰金刑で短期間で保釈され、上村氏も250万円の保釈金で釈放。厚子さんの元上司は逮捕すらされず、厚子さん一人が「逮捕され、地位も名誉も剥奪され、5ヶ月間も真夏の冷房すら無い拘置所に勾留されたうえに、1,500万円もの保釈金を積まねばならなかった」のは、いったいなぜなのか!?

裁判の行方を見つめる私たちにとって今必要なのは「現代日本に起きた、こんな理不尽な出来ごとのプロセスを、きっちり解明することだ」と、私は思う。

今日の厚子さんは、ごげ茶色のスーツにクリーム色のとっくりセーター、そしてひっつめ髪といういつもの清楚な(っていうか、地味っ!)な姿。
傍聴席で私の隣に座る厚子さんのお嬢さんも、厚子さんと同じように髪をキュッと後ろでまとめ、でもそこには愛らしいリボンが揺れている。静かに公判を見守るお嬢さんからは、「母が突然逮捕・勾留される」というショッキングな出来事を前にしても、母の無実を信じる強い意思が伝わってくる。

「人は弱いものだから・・・」
取調べに「ポロポロ落ちて」、その結果、厚子さんを陥れた男たちを私が非難した時、静かにつぶやいた厚子さんの声を思い出す。
そしてその厚子さんは、いま法廷で、泣きながら偽造証明書作成の顛末を証言する上村氏を、慈母のような眼差しで見つめている・・・

「私も冷静に公判を見つめ続けよう・・・」そう心のなかで誓った時「午前の公判はこれで終わります。」と、裁判長の宣言が耳に届いた。

13:20、午後の公判が開廷。検事側尋問が続く。
尋問のポイントは「上村元係長は、なぜ今日の公判で供述調書の内容を覆し、単独犯だと証言しているのか」「どのような取調べが行われたのか」に絞られて行った。

公判担当のS検事は、取調べで作成された何通もの「供述調書」を、時系列に上村氏に示し「あなたはこの調書を確認し、署名し、指印を押していますね」と問いかけ「はい」の返事を聞いてから、「今日の公判での証言と調書の内容がなぜ違っているのか」を問いただしていく。

S検事「あなたの今日の証言は、供述調書と同じですか?」

上村氏「全く違います。調書では、『石井議員からの依頼を部長が受け、村木課長を通じて指示が社会参加推進室に降りてきて、公的証明書の偽造がなされた』という流れになっているけれど、すべて検事の作文です。いくら『私が単独でやった!』と言っても全く聞いてくれなかったんです。全部でっちあげです。」

S検事「100%作文なんですか?」

上村氏「真実を語ってる部分もありますが、単独でやったことが書いてないので、すべて作文といえます。」

S検事「でもあなたは弁護人から、供述内容と調書が違っていたら署名しないようにと、アドバイスを受けていたでしょう? だからあなたは、調書が証拠になると分かっていたと思いますが。」

上村氏「全然知らない所に連れてこられて(注:上村氏はいったん東京地検で取調べを受け、その後検事に新幹線で大阪地検に連行され、そこで逮捕された。ちなみに、自分の旅費はATMでその時に下ろしたという)自分に起きていることが何が何だか分からなくて・・・ドキドキしたりして・・・眠れなくて睡眠薬を頼んだけど、医師の診察で却下されました。今も睡眠薬が必要な時があります。」

S検事「取調べの時、検事が怖かったんですか?」

上村氏「いえ、優しい・・・普通の人です。でも自分に都合の良いことだけをメモして調書にして・・・私の言うことはメモも取らないんです。この事件は、厚労省の組織犯罪だ。あなたはトカゲの尻尾切りされてるのだ。厚労省の膿を出し切って良い組織にするには、事件を糺さねばならない、というのがその検事の口癖で、何度も何度も聞かされました。ノンキャリはキャリアに蔑視され、差別されてる・・・というのも検事が言ったのに、僕の供述のようになっています。たしかにキャリアとノンキャリとはあまり交流がないし、ノンキャリ同士でつるむ(飲みに行ったり?)ことが多いけど、それを伝えたら蔑視や差別と書かれたんです。」

傍聴席から失笑が漏れる。

S検事「でも、村木さんの関与について書かれている調書に、あなたは署名してますよね?」

上村氏「村木さんの関与なんて、自分は一度も言ってないのに、拘留期間が長引くよとか、再逮捕をちらつかされたり・・・有形無形の圧力が有って、関与について『はい』と言ってしまったんです。それだけじゃなく、あの人はああ言ってる、この人も認めてるって、外堀を埋められるような感じで言われると、弱い立場なので、もういいや・・・と諦めの気持ちになってしまいました。自分の意思とは違うけれど、大人しくしないとダメだ・・・と、ずるいかもしれないけど、自分の身を守ることだけを考えるようになってしまいました。検事さんはね、体調はどう?とか食事はちゃんと食べれてる?とか、優しく聞いてくれるんですが、僕の供述は無視して、自分の考えをどんどん冷静な態度で調書にして行くんです。この人が豹変したら僕はどうなるんだろうって・・・その冷静さがすごく恐ろしかったです。話が、どんどん大きくなって行き・・・恐怖感でいっぱいでした。」

上村氏が、涙を流し鼻水をすすりあげながら語るのを聞きながら、私は思った。

上村氏の小心な性格、公務員としての倫理観の希薄さなどによって、証明書が偽造されたのは確かなことであり、恥づべきことである。
でも上村氏の小心につけ込んだり、厚子さんの上司であった元部長に「嘘の証拠」を突きつけて偽証を引き出したりしてまで「この事件は、国会議員案件から発した厚労省ぐるみの犯罪であり、その要は村木厚子元課長である」とのストーリーを創作し、厚子さんを極悪な犯罪者として逮捕・勾留し続けた検察の卑劣な行為は、偽証させられた証人たちの比ではない。

なぜこのようなストーリーが創作されたのか、かならずや明らかにしなければいけない、と。

今日の公判が終わり、法廷を後にする人の中に「見知った女性」がいたので、思わず会釈すると、彼女も少し怪訝な顔をしながら会釈を返してくれた。
「誰やったかなぁ・・・?」考えながら地裁を出たとたんに「あ、ジャーナリストの江川紹子さんやったんや!」と気づく。
見知った人と思ったのは、TVでよく拝見するからだったのですね。
怪訝な顔をされたのも当然と、一人で赤面。

江川紹子さんも今日の傍聴記をツイッターに書いておられるので、ぜひ読んで下さい。
http://twitter.com/amneris84

上村氏の声が小さくて私には聞き取れなかったんやけど、江川さんのツイッターには
「もう一つ上村証言より。村木課長(事件当時)の逮捕は、検事総長が了解したと、(國井検事が)言っていました」 との記述があります。
さすがにジャーナリストの耳、ですねっ!

明日は、検事側が1時間、その後弁護側尋問。
私は、午後神戸で講演するので、午前中のみ傍聴する予定です。

<文責:ナミねぇ>

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