作成日 1998年3月吉日


ナミねぇ

 Mr. ビル・ゲイツに迫る!?


 プロップの機関誌 Flanker を熱心に見るビル・ゲイツさん

1997.12.9 in Tokyo

 ナミねぇは、マイクロソフト代表取締役社長:成毛真さんのご紹介で、ビル・ゲイツさんにお目にかかりました。
 ビルさんは、その日の午前中に、橋本総理や加藤幹事長など政府首脳に会われたということでしたが、ナミねぇがお目にかかった夕刻からの会では、CSKの大川会長、ソフトバンクの孫社長、アスキーの西社長、ディレクTVの増田社長なども居られ、まるでパソコン雑誌の「豪華特集」の一場面のようなロケーションでした。
そういう雰囲気の中で ( 講演会などで聴衆として遠目に、というのでなく) プロップの活動についてビルさん(はじめ、参加者の皆さん)に直にお話しする機会を戴いたんです。
 ひゃぁ〜、もう完全にミーハーになってしまいそうやったけど、はやる心を抑えて真剣にビルさんとお話しました。(というても、ナミねぇは英語が全然アカンので、成毛さんや、通訳の男性に助けて戴きながら、です)
 ビルさんからは成毛社長を通じ、前号の「flanker」に「ハンディキャップをもつ人の力になれれば、万人の力となれる」というタイトルの原稿を戴きましたが、その内容に共感したこともあって、ナミねぇはビルさんを「世界一の大金持ち」という視点からでなく「コンピュータで人類を幸せにする方法を真剣に考えている一人の男性」という視点で、お話しさせて戴きました。
 Windowsという世界標準であるコンピュータのOSを提供しているマイクロソフト社が、challengedユーザーを視野に入れた開発をして欲しい、と切に願うナミねぇにとって、ビルさんに直接プロップの活動や日本のchallengedを取り巻く現状などをお話しする機会が得られたというのは、とてもとても大きな出来事でした。

クラッカーをかじるビルさん(ナミねぇ写す)


意識改革と条件整備

 アメリカではADA ( 障害を持つアメリカ国民法 ) などにより、障害を持つ人も、持たない人も「機会は平等であるべき」ということが法的に規定されてるけど、日本では「憲法」で「平等の理念」をうたっているものの「平等であるためにどんな策を持つべきか」ということが具体的に法に落とし込まれてはいません。
 「平等でなければいかんよね〜」という暗黙の了解と「でも現実はそうはいかんもんね」というこれまた暗黙の了解のもとに「親切にしといたらええんちゃう」「愛の手をさしのべたらええやんか」という、結果としてチャレンジドに「期待しない」社会が出来上がっているんです。
 でも、コンピュータネットワークが発達し、在宅で情報を収集し、コミュニケーションを取ることのできる時代が到来したことで、日本のチャレンジドたちもチャンスへの道筋を自分たちで創り上げて行くことが出来るようになりました。
 プロップやトーコロなど、いくつかの民間組織がそのコーディネイト役を果たすようにもなって来ました。
 高齢社会を乗り切って行く、という大変な課題を抱えた日本においては「働く意欲を持った人」「社会を支える側に回ろう」という意志を持った人の力を最大限生かすことのできる「具体的な策」が必要です。
 巨大な象のように「方向転換」に時間のかかる行政にまかせるだけでは、コンピュータネットワークをうまく活用することはできません。(巨大な象も、いざというときは素早く方向転換するそうなんで、こういう言い方は象に失礼かな、ははは)
 「仕事」というのは「仕事がしたい人」と「仕事を提供する人」の共働作業なので、チャレンジドが「仕事がしたい」と叫ぶだけでは、彼等が「仕事人」になることは出来ません。特に日本では、在宅重度のチャレンジドの場合「福祉行政の範疇の人たち」と位置づけられているので、職安のような公的機関も彼等の力を伸ばす仕組みや、その能力を確認する手だてを持っていません。
 こういう社会においてはまず、企業との共働作業を可能にする条件整備が必要です。
 条件整備というのは、意欲有るチャレンジドが仕事人になるための技能取得のシステムを構築し、技能取得者と仕事(企業)を繋ぐ中立的で的確な技能認定のできるなコーディネイト機関を設け、行政も企業もその機関の安定的運営に寄与する、という「チャレンジド側と企業側との両者にメリットのある」社会システムが生まれることだ、とナミねぇは思っています。
 プロップでは、そういうシステムの雛形としてマイクロソフト社と共働で「在宅で技能を高めるセミナー(在宅スキルアップセミナー)」の実験を開始してますが、プロップだけではなく、コンピュータを取り入れた全国の作業所、養護学校、障害児者教育の現場、などでもぜひ「在宅ワークに向けた取り組み」を開始して欲しいものだと思ってます。
 ちなみに労働省では「重度在宅者5人を雇用する企業には、サポート担当社員1人の給与を、10年間にわたり4分の3補助する」という制度を持ってましたが「利用者が殆どいない」ということで、今年度末にも「見直す」計画やそうです。
 コンピュータネットワークの発達で、これからの10年にこそ必要な制度かもしれないのに、とナミねぇは大変残念に思っています。
 でも「廃止」ではなく「見直し」であるならば、上記のような社会システムの構築に向けた見直しをして戴きたいと、切に願います。



ソフトバンクの孫正義社長(左)と
CSK大川功会長

ディレクTV増田宗昭社長とナミねぇ

企業への期待

 企業の動きの中では、マイクロソフト日本法人が、成毛社長自ら7月のチャレンジド・ジャパン・フォーラムで発表した通り、アクセシビリティ機器開発を行っている人たちへOSの情報公開を開始し、先日も「Win98のアクセシビリティ部分のバグについて連絡したら、すぐレスポンスがあり、今までのMSと全く違う対応に驚いた」というサポート機器の開発者からの声がプロップに届くなど、会社全体の意識変革が始まっていることが明らかになっています。
 また、キヤノンでは御手洗社長の英断により、マルコ・ナビゲーションという視覚障害者のための(屋内)音声誘導装置の日本上陸が実現しようとしている、など「トップが変われば企業は変わる」「企業が変われば日本が変わる」ということを私たちは実感しつつあります。
 日本は「おかみ」の国で「自治がない」とよく言われるけど、企業も含めた「民」の力で社会を変えることが「自治ちゅうもんでっせ」ということを、日々の活動を通して社会に訴えてゆこう、と改めて思っているナミねぇです。
 12/9は、こういう話を全てではないけど、可能な限りビルさんに聞いて戴き、世界の企業トップとして力を貸して戴きたいとお願いしました。
 ビルさんだけでなく、同席された日本のコンピュータ業界トップの皆さんがナミねぇの話を真剣に聴いて下さり、「チャレンジドを納税者にできる日本」というプロップのスローガンが、企業関係者にも浸透しつつある、という手応えをしっかり感じた貴重な1日でした。

今年も、プロップをよろしく!

 9日のビルさんとの出会いに続き、ナミねぇは12月18日、マイクロソフト社の社員クリスマス会に招かれ、一昨年、在宅雇用されたプロップのチャレンジド・メンバー「長崎の森くん」や、マイクロソフトとコンサル契約を結んだ全盲の「細田和也くん」に久しぶりに出会いました。
 和也くんは(なんと)フィアンセ同伴で、彼女と点字サークルで出会ったなれそめ(!)や、春にはアメリカの大学院に留学し、米国マイクロソフト本社の技術者の皆さんとも連携して活動したい、という計画を聞かせてくれました。
 森くんも車いすを駆って一人で九州から出てきたそうですが、仕事以外の社会活動として地元の企業人たちと第2、第3の森くんを生み出すNPO活動を開始したという話を生き生きと報告してくれました。


フィアンセと参加した細田和也くん

長崎の森くんとナミねぇ

 受け身ではなく、自ら人生を切り開き、自らの努力でチャンスを掴んでゆくチャレンジドたちが、もっともっと生まれ出るような活動をプロップは今年も続けてゆきたいと思っています。
 8月には、復興の街「神戸」で(ビルさんの力もお借りして!?)国際フォーラムを開催する予定です。
 皆さん、1998年も、ますますのご支援、よろしゅうお頼もうします!



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