検察の在り方検討会議 第6回会議 議事録

2011年2月23日

※村木厚子さんの発言部分は以下から参照できます

村木厚子さんの発言「その1」
村木厚子さんの発言「その2」
村木厚子さんの発言「その3」
村木厚子さんの発言「その4」
村木厚子さんの発言「その5」
村木厚子さんの発言「その6」
村木厚子さんの発言「その7」
村木厚子さんの発言「その8」

 

検察の在り方検討会議
第6回会議 議事録

検察の在り方検討会議 第6回会議 議事録

 

第1 日時  平成23年1月27日(木) 自 午後1時33分
                      至 午後5時52分

第2 場所  法務省20階 大会議室

第3 議題  
  1 ヒアリング
  2 意識調査(サーベイ)について
3 今後の検討事項等について
4 その他

第4 出席委員等 千葉座長,石田委員,井上委員,江川委員,郷原委員,後藤委員,佐藤委員,嶌委員,高橋委員,但木委員,龍岡委員,原田委員,宮崎委員,諸石委員,吉永委員

第5 その他の出席者 黒岩法務大臣政務官,事務局(神,土井,黒川)

第6 意見陳述者 若狭勝氏,小堀恒隆氏(浦田功弁護士同席),村木厚子氏(弘中惇一郎弁護士同席)

第7 議事

○千葉座長 それでは,予定の時刻を若干回っておりますけれども,ただ今から,検察の在り方検討会議の第6回会合を開会させていただきます。
   本日も御多用の中,御出席をいただきまして誠にありがとうございます。
   なお,吉永委員におかれましては,少し遅れて御参加いただけるとのことでございますので,御承知おきいただければと思います。
   それでは,議事に移らせていただきます前に,まず,事務局から配布資料の説明をお願いいたします。
○事務局(黒川) 本日,皆様のお手元にお配りしております資料は6点ございます。
   資料1は本日の議事次第,資料2は本検討会議の検討事項の柱立てに関する座長御作成の案,資料3は今後の議事進行に関する座長御作成の案,資料4は検察官に適用される倫理等に関する法令等の資料でございまして,今後予想される倫理に関する御議論の基礎資料としてお配りするものであります。
   なお,資料4は本日の会議には使用いたしませんので,お持ち帰りの上,お目通しいただければと思います。
   その他に皆様のお手元には,高橋委員御作成の「検察庁組織調査質問票設計案」と題する資料,宮崎委員御提出の大阪・札幌における弁護士会主催のヒアリングに関する資料をお配りしております。本日の配布資料は以上でございます。

1 ヒアリング

○千葉座長 では,議事次第1のヒアリングに移らせていただきます。
   御案内のとおり,本日は,若狭勝さん,小堀隆恒さん,村木厚子さんのお三方からヒアリングを行うことといたしております。本日の会合は午後4時30分までを予定しておりまして,今後の検討事項についても御議論いただく必要がありますので,ヒアリングの時間は,お話を伺う時間と質疑応答の時間を含めて,若狭さんと小堀さんにつきましてはそれぞれ40分程度,村木さんにつきましては1時間程度とさせていただき,おおよそ午後4時15分頃までを目途とさせていただきたいと考えております。ヒアリング対象者の方々の御都合もありますので,どうぞ議事の進行に御協力をお願い申し上げます。
   また,ヒアリングの方法でございますが,最初に,おいでいただいた方からお話をいただき,その後に,あらかじめ委員の皆様からいろいろな御質問を私の手元に頂戴しておりますので,それをまとめまして,まず冒頭に私から質問をさせていただきます。その後,時間に余裕がございますれば,委員の皆様から補充的に御質問をいただきたいと考えております。
   なお,私からの質問の内容に関連して御質問がある方もいらっしゃるかもしれませんが,まずは私から一通りの御質問をさせていただき,関連の御質問などは,その私の質問の終わった時点でお申出いただくようにいたしたいと思いますので,よろしくお願いいたします。
   それでは,ヒアリングの準備をいたしますので,少々お待ちいただきたいと思います。
(若狭氏入室)
○千葉座長 それでは,ヒアリングを始めさせていただきます。
   本日は,若狭さんにおかれましては,お忙しい中,当検討会議にお越しいただきまして誠にありがとうございます。本日は,検察官として御勤務された御経験などを基にお話を伺いたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。
   それでは,最初に事務局から若狭さんの御経歴を紹介させていただきます。
○事務局(土井) それでは,御経歴を紹介させていただきます。
   若狭さんは,昭和58年に検事に任官され,以後26年間にわたり検事として御活躍をされました。その間,東京地検特捜部に在籍された御経験もあり,平成16年から約1年間は特捜部副部長として勤務をなさいました。本日は,東京地検特捜部での御経験等を中心に,有意義なお話をいただけるものと伺っております。
○千葉座長 それでは,若狭さん,どうぞよろしくお願いいたします。
○若狭氏 弁護士の若狭です。ただ今御紹介にあずかりましたが,特捜部に勤務していた経験等を踏まえて,私の今思っていることなどについてお話しさせていただき,皆さんのいろいろな参考にしていただければ幸いかと思います。
   まず,20分ぐらい私の方から基本的な説明をさせていただきたいと思います。その流れとしては,まず,特捜部の捜査の実情と危うさという観点,それから,続いて,Aさん事件,あるいは証拠隠滅事件の原因,それから,私なりに考えている検察の改革,それから4番目としては,最高検が先だって出しました検証結果について,私なりにどのように考えるかということ,それから5番目としては,いわゆる録画・録音,可視化の問題について私の考えているところなどについて,話を進めさせていただきたいと思います。
   まず,特捜捜査の実情と危うさということですが,東京地検特捜部においては,私は平検事からサブキャップ,キャップ,一班の副部長として勤務させていただいたんですが,一言で言いますと,やはり特捜部の危うさというのは,一人二役ということ,それからもう一つは,一つの船に乗った上での人事評価といった点が挙げられると思います。
   その一人二役というのは,普通の警察送致事件ではなく,検察が独自にやるということですから,言わば証拠を集める立場と,その証拠を評価する立場というのを兼ねていると。つまり一人二役になってしまうということが,いろいろな問題を引き起こしていたというふうには思います。
   それから,一つ船に乗っているというのは,副部長とかキャップが,キャップというのは主任検事ですが,その部下を評価する際に,やはり,同じ船に乗って,同じ目的に向かうところの中での評価ですので,副部長とかキャップが,あるいは部長が目的としているところにきちんと沿った形での供述調書を作ってくる人に対しては,どうしても評価が高くなるという面があるだろうと。そういう意味においては,一つ船に乗った上での人事評価と,運命共同体の中での人事評価ということは言えるというふうに思います。
   そういうことから,いろいろな危うさというのが出てくるんですが,ただ,東京の特捜部の実情を若干申し上げますと,実際にマスコミやテレビなどで強制捜査だといって大々的に報道される事件というのはほんのごく一部でありまして,実際のところは,将来的には大きな事件に発展すると思われるような事件を,30件,40件,50件という形で,一応視野には置くんですよね。その中で実際に強制捜査までに至るというのが,そのうちの1件ぐらいということですから,逆に言いますと,何らかの,いわゆるストーリーというかシナリオというのを作るというふうに言われているところはありますけれども,そういう形で一応ストーリー的なことを描いたとしても,そのストーリーどおりにいかないというのがほとんどであるというのが実際のところだと思います。ですから,そういう意味においては,撤退するというようなことも,言わば日常的に,むしろ行われているという面はあると思うんですね。
   それから,これも東京の特捜部の話ですが,いわゆるブツ読みといって,証拠物をそれぞれ各検事に割り当てて,朝から晩まで,要するに証拠物を分析して読むというのが1週間も10日も続くということがままあるわけでありまして,そういう意味においては,やはり証拠物の重要性というのを意識しながら仕事をしているという実情もあるとは思うんですよね。
   それから,実際のところ,私もキャップだとか副部長をやっていたときに,部下の検事から非常に怒られたこともありまして,「そんなことできるはずないではないですか。」とかいう形で,相当きつく言われたこともありますので,そういう意味においては,トップダウンで物事が進んでいくというわけでは決してないなという実感は持っておりました。捜査会議や何かも頻繁にやっておりましたので,そういう意味において,今,大阪の事件が発覚してからいろいろと言われているような,問題点ばかりがひしめいていたというわけでは決してないというふうに思います。
   もっとも,先ほど申し上げたように,特捜部の危うさとして,一人二役とか一つ船の中においての人事評価という問題があるわけですから,それは今に始まったことではなく,それこそ前々からの話ですから,そうしたことからいろいろな無理が生じたりするのは,これは実感としてあっただろうというふうには思うところはあります。
   Aさんの事件について申し上げますと,これは正しく捜査の基本の欠如というのが著しいというふうに感じております。それは,客観証拠を前田検事がああいう形で隠滅をするぐらいですから,言わばそれが基本的な捜査ができていたかというと,正に推して知るべしみたいなものでありますから,捜査の基本が欠如していたというのが相当あると思いますし,また,我々が当時の東京地検の検事正の下で捜査基本10項目というのを作ったんですが,その中にありますように,被疑者の弁解をよく聞くというようなことについても全く実践されていないし,更には裏付け捜査,ある国会議員のアリバイ等についての捜査もされていなかったということを聞くにつけ,非常に捜査の基本ができていなかったというのは,私,元検事としても,すごく感じるところであります。
   また,その大阪の事件は正しく先ほど私が申し上げたように,一人二役,あるいは同じ船に乗った上での人事評価という,先ほど述べた危うさというのがもろに出ていたというふうに思えるところでありますし,正しく証拠の評価というのが第三者的になされずに走ってしまったというところもあると思うわけです。また,前田検事があれほど評価されていたというのは,私に言わせれば,全くもって見る目がなかったということになるのかもしれません。上の人がですね。これは,言わば一つ船の上に乗った人事評価というようなことだからこそ,ああいう形で評価されていったというふうに思います。
   それから,証拠隠滅ということについて言えば,検察はやはり性善説に立っていたということは間違いないと思うんですよね。ですから,部下の検事がそんな証拠なんか隠滅するはずはないと,あるいは,きちんと適正に仕事をするという性善説にこれまで立ってきたことは確かだと思うんですよね。ただ,いろいろな意味で,若い検事やなんかも含めて,必ずしも性善説に立って組織論を語っていくことでは足りないというふうには,私自身も実感しているところであります。
(黒岩大臣政務官退室)
○若狭氏 しからば,私なりにそういう問題点を踏まえて,今後の検察改革としてどうしたらいいかということについて申し上げますと,正しく一人二役とか一つの船における人事評価ということからの脱却ということは当然必要になると思います。それから,性善説の脱却ということ。必ずしも性悪説に立てということではないんですが,少なくとも性善説から少し舵を切っていくということは当然必要だと思います。
   具体的には,私はやはり,最高検の検証結果でも指摘されていますが,ただ,最高検の検証結果とはもう少し視点が違うというか,後ほど述べたいと思うんですが,一応は最高検が言っているように,言わばチェックする専門の検事を配置するということは必要だと思いますし,それが先ほどの一人二役あるいは一つの船ということからの脱却につながると思います。
   もっとも,それが形式的な形だけでの専門検事の配置ということだと,ほとんど絵に描いた餅になってしまうということですから,それをやはり実効あらしめるためにはどうしたらいいかというと,恐らく,高検に置くのかどうかという点についてはもっと議論を詰める必要があるでしょうが,少なくとも東京なり大阪の特捜部長と同格ぐらいの人をどこかに配置して,その検事に本格的にさせるべきでしょう。その際,特捜部の経験者ではない検事を配置するというようなことは考えてもいいと思います。言わば,そのチェックする検事というのは弁護士的な立場とか裁判官的な立場から,やはりチェックするということが必要だというふうに思うんですよね。その意味でも,特捜部の経験者だと,いろいろと特捜部の実情に鑑みると,どうしても踏み切れないところもあると思うので,そこは少なくとも特捜部の経験者ではない人をもって当てるというような方策を採るということが必要だというふうに思います。
   それから,事件をやっていると,キャップとか副部長のいないところで,部下が,「この事件駄目だよね。」とか,「この事件,無理しているよね。」というふうに話すことというのは,あることはあるんですよね。そうした声というのをやはり拾い上げるということが必要かなと思うんです。そのためには,言わば内部告発ではないんですが,そうした言葉を本当にきちんと上に伝えると。主任検事が無理しているのであれば,副部長とか部長,あるいはその上の地検の検事正とかに伝えられる,そういうシステム的なところを作るとか。あるいは,先ほど申し上げた専門検事の下で,その事件に関与している検事から,無記名でもいいんですが,逮捕の必要性というか逮捕の可否,必要性,それから今度は逮捕した後の起訴の可否というのを,アンケートみたいな形で,無記名でもいいから出させるというようなこと。それを専門検事のところで集約するということになると,実際は,キャップとか副部長のところではうまくいっているように見えても,当の実際に調べをした人の心証ではちょっとまずいなと思う場合が,きちんとそこに反映されてくるということはあると思うんですよね。
   それから,もっと大きなことを言うと,やはり私も弁護士になって,いろいろと外から検察を見ていると,違う面が相当目に付くんですよね。そういうことからすると,本当に法曹一元というのを,大きな目で見ると,目指してもいいなと。だから,弁護士が検事になるというようなこともいいと思いますし。少なくとも今,比較的若い検事が弁護士職務経験といって弁護士事務所に研修に行っていますけれども,あれなどは非常に良い制度だと思います。そういう,弁護士になってから弁護士の仕事をしながら検察を見るというような目を持った上で仕事をしていくということは,無理をしないということにもつながると,そんなようなことを考えております。
   後は,検事の教育ですけれども,少なくとも検事は,いつでも辞めてやれというぐらいの気概を持って仕事をしないといけないなという思いを,僕は常々思っております。
   後は,やはり1,000件のうちの1件でもAさんのような事件が起きてしまうと,計り知れない国民の信頼を失うことになるということを,本当に若い頃からきちんと検事に教えるというのは,もとより必要だと思います。
   続いて,最高検の検証結果についてなんですが,まず,いろいろな原因論を述べていますが,さらりと私なりに読んだにすぎないと言えばそうなんですが,いろいろと原因が書かれていますが,本当に,ではもう1度同じような状況が出てきた場合に防げるかなというのが,非常に疑問に思うところがありました。つまり,実際にはあの事件も,供述している人もいるんですよね。そういう中で,撤退なり引き返すというようなことが本当にできるかというと,多分同じような状況下においては,今の体制でやる限りだったら,少なくとも同じようなことになりかねないかなという危惧感があることはありますね。だから,いくらいろいろと問題点を,原因を探ったとしても,それだともう一回繰り返される。
   つまり,フロッピーディスクの問題にしても,あの日にちが違うといっても,結局は印刷を後日にしたんだろうとか,あるいは,フロッピーディスクが当時はいっぱいあって,入替え入替えしてフロッピーディスクに落としていたものの,最後に落としたやつが見つからないんだろうとかいうような推測の下でいろいろと議論していくと,あのとき本当に,では逮捕しなかったか,起訴しなかったかと。本当にそういうふうにもう1度同じような状況下において言えるかというと,多分言えないのではないかなという思いがあるんですよね。それは,結局は,もっと原因論に踏み込んでいないからという思いがしますね。
   今後の再発防止の観点のお話をさせていただきます。
   最高検においてもいろいろと考えておって,可視化の話になると,かなり,詳細はもう1度後で述べますが,踏み込んだ導入決定をしたということは,評価することはできると思うんですが,その他の再発防止の関係でいくと,高検・最高検に特別捜査係を配置するというふうになっていまして,これは私が先ほど述べたようなことでは同じなんですが,特別捜査係検事をなぜ配置するのかといったところを,もう少し踏み込んだ方がいいかなという感じはするんですよね。
   つまり,本当は,高検・最高検の決裁というのは,供述調書の結果だけ,こういう供述だという結果だけで今までは決裁してきているんですけれども,本当のやはり問題点を追究するには,その供述調書がそういう結果になる過程,プロセスがどうだったのか,つまり,最初は否認していて,いつ頃,どういう問い掛けをしたらどう答えてきてその供述調書になったのかとか,そういう言わば供述調書作成過程のプロセスというのをきちんと追究するなり,検討するなりすることによって初めて問題点というのが,とっかかりというか,きっかけができるわけですけれども,そういう形での特別捜査係検事の配置の役割というか,特別捜査係の役割というのをもっと論じないと,何か絵に描いた餅になって,仏作って魂入れずになってしまうと。
   あるいは,可視化するのであれば,その特別捜査係を配置して,その検事に録音・録画のチェックをさせるということも当然大事だと思いますし,録音・録画でも,本当にそういう意味においては,どういうふうに評価するかというのは,必ずしも検事の中でも,私の経験からすると,これは信用性があるとか信用性がないとか,意見が分かれるところもあるんですよね。ですから,正しく特別捜査係の検事を置くのであれば,そうしたチェックを,録音・録画のチェックなどもさせるとか。
   あるいは,証拠書類についての問題点の報告義務というのも掲げられておりますけれども,例えば今回の事件で,ああいう矛盾する証拠が出てきた場合に,ただ単に,先ほど述べたように,こういう可能性もあるからとか言って推測の下で合理性を説明するのではなく,やはりきちんと矛盾する証拠が何故にあるのかという形で,もう具体的に説明できるようでなければ,それこそ逮捕とか起訴というのはあきらめるとか。そういう根本的な要するに踏込みがないと,なかなか説得力がないという感じはしました。
   また,主任検事の補佐役の検事を置くということでしたけれども,それは,東京では結構そういう補佐役の検事というのはいるんです。実際はやっておるんですよね。ですから,もしそれをもう少し推し進めるのであれば,それこそ主任検事を2人か3人にして,合議制みたいな形にして,起訴状も連名で作成させるとかいう形で,それこそ責任をそういう形で2人,3人に負わせるとか,若しくは,それだけの意識を持たせるとかいうようなことをしないと,今の実態をそのまま文章にしたということになりかねないかなという感じはちょっとしました。
   それから,引き返す勇気というのが掲げられていて,それは非常に良いことだと思うんですが,ただ,逮捕しても起訴しないというような前例をもっと作らないといけないなという感じはしました。これは私の経験ですが,確かに逮捕して強制捜査をすると,もう起訴ありきというような結論的なところが実態としてある運用がされていたので,今まで1件ぐらいしかないと思うんですけれども,強制捜査して起訴しなかったというのは。京都の事件で,それ以外は大体起訴しているので。そういうようなことをそもそも,引き返す勇気うんたらかんたらと言うときには,そこら辺のところもきちんと踏み込んで,逮捕しても,もう起訴しないと,証拠上ちょっとでも問題があったら起訴しないということを鮮明にするとか。あるいは,上司がもう引き返す勇気と言ったところで,本当に部下が文字どおりその言葉を受け止めるかというと,そうでもないということですから,やはり本気で上司が言っているというか,検察組織が,全体がそういうふうに考えているということを,もっと目に見えるような形できちんと引き返す勇気というのを持たせるような,もう少し踏込みが必要かなという思いがしました。
   それから最後に,可視化の話ですけれども,私自身は,可視化というのは時代のすう勢からすると,天秤にかけて,可視化の方向を考えざるを得ないかなというのが持論なんですけれども,一つは,やはり無理な取調べというのをチェックできるという,非常に大きな効果があると思うんですよね。
   ただ,もう一つの天秤の方では,やはり録音・録画していると,特捜部のこれまでの事件の3割か4割ぐらいは実際事件ができなくなるかなという感じは実感としてあるんです。やはりオフレコ取材とか,オフレコというときには本当のことを言いますけれども,オンレコになると,なかなか本当のことを言えないというようなこともありますし。また,供述調書だけですと,検事に無理やり言わせられたという公判での弁解ができますけれども,逐一録音・録画されていると,「お前,自分でぺらぺらしゃべっているではないか。」というようなことで,一目瞭然になってしまうと。そうだとすると,やはり言うに言えないという人が中には出てくるということだとすると,そうした事件ができなくなるということはあり得ると思うんですよね。
   そういうのを要するに天秤にかけて,後は,えん罪や何かを起こさないというようなことを,いろいろな価値観を天秤にかけると,一つの社会のシステムとして,どっちを決定するかという問題であると思うのですが,私自身としては,もうこの今の時代のすう勢からすると,可視化というのは必要だと思います。
   検事の中には,正義感があるので,可視化して事件ができなくなるのは,そんなのはとてもではないけれども承服しかねると言う人もいると思うんですが,ただ,その辺はやはり,拷問ができるわけではないので,いくら何でも拷問ができないのと同じように,社会のシステムとして,そういう可視化を導入するということであれば,その範囲内において事件をやっていけばいいんだと,事件をやることが大事なんだというような思いを現場の検事がやはり持っていくということは,流れとしてはいいのではないかというふうに私は思います。
   私の基本的な説明としては以上です。
○千葉座長 ありがとうございます。
   それでは,まず私から何点か,委員の皆様からお出しいただいた質問をまとめてさせていただきたいと思います。
   まず,特捜部に入る検察官を,多くの検察官の中からどのように選別されているのか。また,特捜部内において検察官をどのように育成しておられたのか。お分かりになる範囲で御説明をいただければ有り難く思います。
○若狭氏 まず,選別の点については,要するに特捜部が大きな事件をやると,全国応援という形で各地検から応援をもらって,特捜部でいろいろな職務に従事してもらうわけですけれども,その際に,主任検事等が一つの評価をすると。その応援検事の,できるかできないかとか,非常にできるとかいう評価をして,そういう実績みたいなのが翌年度以降,配置をする際に一部反映されているということがあると思います。実際,応援に来た検事の評価というのはしていました。
   もう一つは,要するに推薦ですかね。各地検の検事正等が,この検事は優秀だから特捜部に入れてくれというような推薦があって,特捜部に入ってくるということだと思います。
   育成の点について言うと,特捜部は,戦場みたいなものになっていますから,言わば門前の小僧みたいな形で習うということはあるにせよ,逐一,これはこうだからと言って育成をするというようなところまでは,実際問題としては手が回らないということが実態だったようには思います。
○千葉座長 ありがとうございます。
   次に,近年,被疑者や参考人の意識が大変変化してきたということもあって,自白を獲得することが困難になったとか,あるいは,若手捜査官は自白獲得に向けた熱意が減少しているのではないかといった話を,捜査関係者の方から聞くことがございますけれども,こういう御意見などについては,どんなふうに感じておられますか。
○若狭氏 少なくともずっと前は特捜部のブランドというのがあって,聞くところによると,海外にいても特捜部の呼出しがあると,その翌日には出頭するというような話も大分前には聞いたことがあるんですけどね。そういう特捜部のブランドがもう崩れ去ってきたとか,崩れつつあったことは確かだと思うので,最近は少なくとも取調べを受ける方も,弁護士や何かのいろいろなアドバイスを受けて,なかなかいろいろな利害関係とかの下で,本当のことを話さないというか,自分の関与はもとより,上司やボスの関与についても述べないという傾向にあることは確かだと思います。
   一方,検事の方はどうかというと,少なくとも特捜部にいる検事は,自白獲得の意欲が余りないということは決してないと思うんですよね。やはりきちんと供述を得たいという方が,むしろ多いとは思います。
○千葉座長 それでは,もう1点お聞かせいただければと思いますが,弁護人等から取調べ方法等に問題があるとの申入れなどを,若狭さんがお受けになったことがおありでしょうか。仮にそのような申し入れをお受けになったとすることがあるとすれば,どのような内容であったか。また,それに対してどのように対応なさったのか。もしそういうことがおありでしたら,お教えいただければと思います。
○若狭氏 私自身はございません。
○千葉座長 何か,その周辺でそういうこと,事例などを聞かれたことなどはございますか。
○若狭氏 弁護人というよりも,私は司法研修所の教官をやっていまして,検事の中に教え子が結構いるんですけれども,そういう教え子の検事からいろいろと内々に,こういうことがあったと,こういう調べや何かを今しているんだけれどもというような,相談的なことを話として受けたことはあります。
○千葉座長 ありがとうございます。
   私の方からお尋ねすることは以上でございます。時間が多少ございますので,皆さんの方から,この際,是非という御質問がございますれば,1人1問という形でお出しいただきたいと思います。
○後藤委員 捜査官としては,率直に,例えば自白が欲しいと思うのはごく自然な心理だと思いますけれども,例えば,こういうやり方をすると間違った自白をさせてしまうおそれがあるから,気を付けなさいといったこと,つまり間違った自白をさせないための技術のようなものが,研修とか,あるいは日常的な仕事の中で,先輩から教えられるという事例は,御経験があるでしょうか。
○若狭氏 法務総合研究所や何かの一般研修といって,検事になってまだ3年目とかのときには,そういう形では議論の対象にはなると思うんですよね。少なくとも最高裁の判例や何かで,利益誘導とか,切違い尋問だとか,いろいろな誤った自白をしてしまったパターンというのが既にこれまで幾つか出ていますので,その辺のところは最低限,みんな,頭には入っているはずです。
   ただ,今の話に関連すると,心証というのがつかめない検事が増えてきているなという感じはします。Aさんの事件もそうなんですけれども,この人は本当のことを言っているのか,ごまかしているのかという心証を,やはり捜査官自らが本当はきちんと感じ取れる能力がないといけないなということは思うんですよね。
   誤った自白なのか,それとも本当のことを話しているのか,それとも単に否認しているのかというようなことをつかみ取れる能力というのは,そんな一朝一夕にはできないんですけれども,私は,現職のときに,もう絶えず言っていたのは,言わば人間ポリグラフになれというふうに,みんな部下や何かに教えていました。自分自身が人間ポリグラフになって,その心証というのをつかむようにしないといけないと。
   最近は決裁していても,要するに心証はどうなのと聞いても,心証はともかく証拠上は有罪ですよと言う人が中にいるんですよね。だから,そういう意味においては,心証がとれていない。一番大事な心証というのがとれないと,無理な捜査,無理な取調べというか,ブレーキが利かなくなってしまうというところはあるかなという感じはします。
○郷原委員 私は,若狭さんとは同期ですし,人となりもよく存じ上げているつもりです。いろいろ特捜部での経験されてきたことの中で,いろいろ思われるところもある。それが今日のヒアリングの中でも幾つか重要な指摘をしてもらっていると思うんですが,一つの船に乗った上での人事評価のこととか,実際の経験の中で部下の検事から怒られたことがある,部下の検事から,こんなもの駄目,無理というふうに言われたということがあったということを,率直に話していただいているんですが,そこが非常にこの在り方検討会議の中でも重要な点だと思うので,少し具体的に,聞かせていただければということでお聞きしたいんですが。
   具体的な例として,若狭さんが特捜部でやられた事件の中で,乙4事件,そして乙5の事件,政治資金規正法違反の事件,これは全体として言いますと,乙4事件からこの政治資金規正法違反に展開して,知事公舎まで捜索を行って,乙5の娘さんまで逮捕したけれども,最終的には,今はもうほとんどざるみたいな規制だと言われている会計責任者の選任及び監督というところで,起訴猶予にしたという形で終わったという,かなり無理な結末を迎えた。それも,その経過で,乙5は辞職をしたということで,それなりの結果には終わったんですけれども,私は,相当そういうような捜査の過程では,いろいろな大変なことがあったのかなというふうに推測もしていました。実際,その当時,特捜部に勤務していた,正に若狭さんの部下の人たちからもいろいろなお話を聞いているんですが,そういう中で,先ほど若狭さんが言われた,こんなやり方をしたら駄目だというふうに厳しく部下から言われたということ,相当経験があったと思うんです。
   例えば,何とかして贈収賄に持っていこうとして,金融機関が元本を返済してくれている,乙5の娘の会社にですね。それが賄賂になるのではないかという観点で,1週間ぐらい一斉叩きといって,がんがんがんがん調べをする。これは最終的には,弁護人側から抗議があってあきらめた。先ほど言われた撤退する勇気を発揮したということかもしれないけれども,部下から見ると,こんなものはとても無理だと言われている捜査が,一斉叩きが,一斉調べが1週間も続くということは,これは自分たちの正義感に相反するという,大変な不満・反発が出てくるのも無理ないと思うんです。そういうようなことを度重ねて行っている中で,部下からの反発がなかなかそれに対して,副部長,この主任はおかしいというような不満がどんどんどんどんたまっていくということもあったのではないかと思うんです。
   私は,そこでお聞きしたいのは,そういうようなときに,私はむしろ,主任検事と副部長の間の関係,副部長と部長との間の関係という,本来その組織の中でそれなりに力を持っている人が同じ船の中に乗ってしまっていて,結局,まともな意見を言えないというような状況が相当あったのではないか。若狭さんの経験の中では,そういった思いが相当強くあるのではないか,上司との関係で。それを結果的には部下との関係で,全部自分がかぶるようなことになってしまってはいなかったのだろうか。ちょっとそういう若狭さん自身の経験に照らして,部下との関係,上司との関係,そういった事件の中で,どういうふうに思ったのかということを,少し具体的に話していただければと思うんですが。
○若狭氏 具体的な事件というと,今,郷原委員が指摘された事件のときに,部下から何か文句を言われたとかいうことでは決してないんですけどね。事件は全然違うんですけれども,少なくとも一般論として申し上げると,部下と副部長,あるいは副部長と部長というのが,いろいろと意見が食い違うというのは少なからずあると思います。私自身も,キャップのときに副部長に対して非常に強いことを言ったこともありますし,だから,その違う意見があるというのは,悪いことだというふうには思いません。
   ただ,やはり部下と上司との間にいろいろと,中にいると,いろいろと気持ちが非常に厳しい状態に置かれていて,追い込まれていくという実情はあることはあると思います。
○江川委員 先ほど,質問の前に1点だけちょっと確認なんですが,可視化という言葉を使われたんですが,可視化というのはいろいろな人たちがいろいろな使い方をすることがあるので,一つ確認をさせてください。先ほどのお話だと,そのプロセスを撮っていくと。つまり,最後の部分だけではなくて,最初の方からずっと順々と録音・録画しておく。録音だけなのか,録画も含めてなのかは別として,とにかくプロセスで撮っておくということを言っていらっしゃるんだと思うんですが,その理解でいいのかというのを一つ確認したい。その上で,若狭さんが「サイト」という雑誌のインタビューに応じている中で,適正な調べをしている検事にとっては可視化した方がいいこともあるんですよと述べられています。可視化の問題点というのはよく捜査の方から聞くんですが,可視化した方がいいという点というのは,捜査の側からすると,どういうものがあるのかということを聞かせてください。
   それからもう1点だけ。任意の取調べで,最近,議員の方,石川議員なんかが録音されたりしたことがあったり,任意の段階で録音をきちんとさせてくれという声も結構あるんですが,自己可視化みたいな,そういうことについて,どういうふうに考えていらっしゃるかということをお聞かせください。
○若狭氏 その1点目の,供述調書の作成プロセスや何かについても,いわゆる可視化ということについて確認ということですけれども,それは一つのシステムとして,そういう方向に行くのが私としては望ましいとは思います。一部だけ,最後のところを可視化するということですと,問題点というか,争われ出したときには,結局はまた同じ問題に戻ってくるという感じなので,その方向性としてはそういう方向,全部をというのが目指すべき点だとは思いますけどね。ただ,それをし出すと,先ほど申し上げたようにデメリットも生ずるので,そのメリット・デメリットを天秤にかけて,いろいろと検討をしていって,一つの社会のシステムとしてどうするかという問題だと思います。
   それから2番目の,可視化することによって検事のメリットというのは,これはやはり恐らく,今すごく良い調べをしていたとしても,今度は公判へ行って,いや,こういうことを検事から言われたというようなことを言われた場合には,今の世の中の動きからすると,やはり無理な調べをしているんだろうというふうに,もうそれだけで思われてしまうわけですけれども,そうなると,本当に良い調べをしている検事にとってみると歯がゆいと思うんですよね。調べというのは,確かにいろいろときつい言葉や何かを言うときもありますけれども,そればかりではないところもあって,全体としてこの調べはどうなのかという全体評価が必要な場合には,検事にとってもメリットがあると,信用性を確保する意味ではメリットがあるということはあるのかなというふうに思います。
   それから最後の,ICレコーダーを任意のときにも,今,実際,そういう隠し撮りとか何とか言っておるわけですけれども,それをそういう任意の段階まで押し広げていいかどうかということについては,推し進めた方がいいという考えも当然あると思うんですけれども,ただ若干,身柄のときか在宅のときかとか,今度はどこで切るかという問題はすごくあると思うんですよね。費用対効果の問題もあるので。だから,それは直ちにはちょっと何とも申し上げられないという実情,私の気持ちです。
○石田委員 先ほど,特捜捜査の危うさの一つとして,一つの船の中での人事評価ということをおっしゃいましたが,危うさということで,この項目を挙げられたということは,そういった人事評価を若狭さん自身,ネガティブに捉えておられるのではないかと思います。具体的にどういう点に危うさがあるのか。若狭さん御自身が人事評価をされた上で,こういうのはやはり問題だったんだろうという具体的な側面があれば,お聞かせ願いたいということです。
   この事件でも,前田検事はある程度それまでは評価をされてきたわけで,そこに,人事評価にやはり問題があったということは言わざるを得ないと思いますが,そういう点を含めてお聞かせ願いたいと思います。
○若狭氏 少なくとも一般論として申し上げると,まず例えば,副部長とかキャップに対してこれは違うというようなことを声高に言う人が評価を高く受けるかというと,そういうことではないと。つまり,一つ船に乗っているわけですから,目的があっちに行きたいという副部長とかキャップがいた場合に,その船を後ろからこうやって押さえ込むような人を,お前は非常に能力が高いというふうに言えないだろうと。同じ船に乗って一生懸命自分たちと,部長とか副部長とかキャップと一緒になって漕いでくれる人の方が,やはり評価というのは高くなるだろうと。そういう意味において,一つ船に乗っている場合はどうしても自分の,キャップとか副部長とかが見立てとか目指している方向性と同じようなところを支えてくれる,フォローしてくれる人の方が評価は高くなるという問題点が根本的にはあるというふうには思います。
○石田委員 それは,具体的な事件のときにもそういうことはあったということなんですね。
○若狭氏 そうですね。正に具体的な事件の方が視点としてはあるんですけどね。
○石田委員 例えば応援の検事が来られて,この人を今度こちらの特捜部に引っ張り上げようかなんて思ったときには,正にそういう問題が起こり得るということなんでしょうか。
○若狭氏 そうですね。ただ,時期的なことで,もう少し整理すると,言わば特捜部の捜査は,離陸をするまでというのは結構いろいろな意見を戦わせることが実際行われているんですよね。離陸,つまり強制捜査をしようと決めた以後は,結局,後はもう飛行機であれば一緒に飛び立たないといけないので,飛び立とうと決めた以降にいろいろと違うことを言うというのは,これは評価は下がると思うんですよね。でも,それが問題になり得るのではないかと。大阪の事件を見ていると,そういうふうに考えた次第です。
○嶌委員 事件が大きくなればなるほど,マスコミが非常に大きく報道するわけですね。そして,そのマスコミの書き方によって,その事件の性格もだんだんだんだん,世間での見方が固まってくるという側面があると思うんですね。そういう意味で言えば,正式な発表というのはほとんどないんだろうと思うんですけれども,特捜の中で,この事件をマスコミに対してどういうふうに,リークするかとか,検察のリークによって書かれているのだろうとかよく言われるわけですね。しかし,公に聞けばリークはないんだと,常にそういう答えが戻って来るけれども,我々新聞記者の仲間からすれば,それはあるだろうというふうに常識でも思うし,それなりのあうんの呼吸で,そのとおりの言葉を言わないにしても,あうんの呼吸で,それらしい心証を得るということはあるんだろうと思うんですね。
   そういうことを考えたときに,事件とマスコミ報道というのはかなり大きな意味合いを持っているし,取り分け,えん罪事件なんかになった場合には,そのことが取り返しがつかないという場合もあると思うんですよね。そういう点について,特捜の中で,マスコミに対してどう対応するかとか,具体的に,ああしよう,などの議論やマスコミ対策はしているものなんですか。あるいは今までの経験から見て,マスコミとの関係をどういうふうにお考えになっていますか。
○若狭氏 まず前段部分の,マスコミに対しての話というのは,特捜部は,少なくとも部長,副部長以外の平検事は,マスコミ記者の人とは接触禁止ということはかなり徹底はしていますね。
○嶌委員 でも,夜回りに来るでしょう。
○若狭氏 ええ。夜回り来て朝駆け来ても会わないということで,それは徹底はしていまして,行き過ぎの観があるかなと私自身は思うんですけれども。だから,現場の検事やなんかは相当そういうことで,対マスコミとの接触というのはない実情だと思うんですよね。
   次に,マスコミとの対応はどうあるべきかということなんですが,恐らく今,いろいろと情報開示というか,説明責任というのがこれだけ重要性を指摘されてきている世の中なので,検察もそういう意味においては,変なリークだとか何とか言われないような形で,もう少し説明した方がいいかなという感じはします。逮捕したとか何とかいうのは当然発表するわけですから,それは重大な事実ですから発表するわけですけれども,そうではないところでも節目節目ではきちんとやはり,どうして検察はこういう処分をしたのかとかいうのを,単に裁判になって明らかにしますということではなくて,言える限りでは,もう少し説明責任を果たすという方向に行くべきだというふうには思っています。
○嶌委員 我々の間で,ある社は一定期間出入り禁止だなんていう言葉を,よく業界用語では聞くわけですよね。これは例えばどういう場合なんですか。
○若狭氏 出入り禁止というのは幾つかパターンがあるんですが,平検事と接触したりすると,一つの前歴みたいな形,マークが付けられるんですよね。それが数を重ねると出入り禁止になったりすると。
   後は,前打ちといって,今日逮捕かという形で大々的に,新聞とかマスコミ,テレビで報道されると,結局,それが逃亡・逃走させてしまうおそれも出てくるということで,問題の記事だということで,そういう記事を書いた社に対しては出入り禁止というようなことをしていましたね。
○嶌委員 接触した場合には,その接触した平検事も何らかの処分を受けるんですか。
○若狭氏 それは,黙っていると処分を受けますね。処分というか,正式な国家公務員法上の処分ではないんですけれども,少なくとも口頭注意みたいな形で。
   ですから,接触を受けた場合には翌日の一番で,きちんとこういう人から接触を受けたという報告をせよというような扱いにはなっていると思います。今は知りませんけれども。
○嶌委員 ガサ入れのときなんかは,必ずテレビカメラなんかがもう前で構えていますね。ああいうのは事前に言うわけですか。
○若狭氏 実際,これは本当の話なんですけれども,私自身は,どこからああいうふうに漏れるのか,よく分からないところがあるんです。本当に特捜部そのものからは漏れないんですよね。漏れないはずなんですよ。どこかから漏れているのかもしれませんけれども。だから多分,特捜部以外のところから,どこかから話が伝わっているのかなという感じはしますけれども。現場の特捜部の人が,やれこういう供述をした,逮捕が近いとかなんとか言って,良いことというのはまずないというのが現場の検事は非常に肌で感じています。だから,部長,副部長も含めて,現場の検事がマスコミにいろいろとそういう情報をリークするというのは,少なくとも,私の頭の中にはないんですよね。
○嶌委員 ただ,多くの事件で新聞などメディアは大体方向性が同じような流れの中で,お互いに書いている場合が多いですよね。すると,ある種,メディアの方で流れを作ってしまいますよね。そういうことについて,流れが何か自分たちの考えているのと同じだなとか,あるいは違った方向に行っているなとか,そういうことは考えたことはないですか。
○若狭氏 違った方向に行っているというか,要するに,マスコミの人というのは総力を挙げるとすごい力だと思って,私はよく特捜部で,出勤して新聞を読むと,自分がキャップとか副部長でありながらも,全然知らないことが書いてあることがままあるんですよね。こんなことが書いてある,これはどうしたんだよと言っても,そこのところは我々がまだ把握していなくて,結局それを,では調べなくてはいけないなというようなことをしたことも何度もあるぐらいです。多分,マスコミの人も相当力を入れると,かなり直当たりしますから,相当の情報を得られることは確かなんですよね。その辺のところがかなり混然一体としてしまっているから,このリーク問題というのが,必ずしも見えないところがあるのではないかなという感じはむしろするんですけどね。
○郷原委員 一つの船に乗った人事評価の弊害を正していくために,どうしていったらいいかということなんですけれども,先ほどの具体的な例で言えば,無茶な指示を上司がする,それに従って無茶をさせられている部下が,例えばそういう一斉叩きみたいなことを,これは無理だと,これだけこれは無理だということが分かっているのに何でこんなものを続けさせるんだという,しっかりした検事だったら反発をする場合だってあると思うんです。結果的に,もう1週間も続けてしまったけれども無理だったということで,弁護人の申入れでやめてしまったというときに,それはどういう捜査だったんだということをきちんと検証して,上が無茶をやらせた,下の方はその無茶を正したという結果が,その捜査のプロセスとしてきちんと残って,それが評価の対象になれば全体としていい方向に向かっていくと思うんですよ。一つの船に乗った人事評価ではない方向に。そういったことが必要だというふうに思いませんか。
○若狭氏 それは思います。ですから,中立的な,言わば特捜係検事みたいなのを,チェックする検事を置いて,その人に対しては何でも言えるとか,あるいは,その中立的な立場の人が人事評価に関与するとか,加わるとかね。だから,自分のイエスマンばかりが評価が高いということではいけないわけであって,在るべき姿のことをきちんと指摘する人をきちんと評価するというシステムを構築する必要というのはあると思います。
○千葉座長 まだまだ尽きないところではあろうかと思いますけれども,今日はまだ次のヒアリングのお願いをさせていただいている方も,お待ちをいただいていますので,この辺で若狭さんからのヒアリングを終わらせていただきたいと思います。
   今日は,若狭さん,大変ありがとうございました。貴重なお話をいただきました。
○若狭氏 いいえ,こちらこそありがとうございます。
○千葉座長 それでは,ここで約5分間,ちょっと休憩をさせていただいて,次に移りたいと思います。

(若狭氏退室)
(休憩)
(小堀氏,浦田弁護士入室)

○千葉座長 それでは,小堀さんからのヒアリングを始めさせていただきたいと思います。
   本日は,小堀さんにはお忙しい中,当検討会議にお越しいただきまして誠にありがとうございます。本日は,大阪地検特捜部による捜査を受けられた際の御経験などを基に,お話をお伺いしたいと存じます。どうぞよろしくお願いをいたします。
   それでは最初に,事務局から小堀さんの御紹介をさせていただきます。
○事務局(土井) それでは,私の方から御紹介をさせていただきます。
   小堀さんは,大阪府枚方市の副市長を務められていました平成19年5月,談合への関与を疑われて大阪地検特捜部に逮捕され,同年6月に起訴されましたが,平成21年4月,大阪地裁で無罪判決を受けられ,その判決が確定いたしました。本日は,この事件での御経験等を踏まえて,お話をいただけるものと思います。
○千葉座長 なお,本日は小堀さんの弁護人を務められた浦田功弁護士に同席していただいております。それでは,小堀さん,どうぞよろしくお願いをいたします。
○小堀氏 御紹介をいただきました小堀でございます。
   本日は,このような場に出席をさせていただくことに心から感謝を申し上げたいということで思います。大変不慣れでございますので,緊張しておりますが,よろしくお願いしたいと思います。
   それでは,まず枚方事件の概要から,順次話をさせていただければなということで思っております。
   私は,2007年,平成19年5月31日に大阪地検特捜部に逮捕されてしまうわけです。平成15年から枚方市の副市長を務めさせていただいておりました。副市長2期目を拝命した直後の出来事でございました。枚方市には当時,長年の懸案事項として,大型プロジェクトと言える清掃工場と火葬場の新設計画がございました。私は副市長就任で,その二つの事業,建設計画の担当責任者ということになりました。当時,公共工事の入札においては,特に談合防止が重要な課題となっていたと認識をしております。枚方市の清掃工場や火葬場も決して例外ではございませんでした。市としては,談合などの不正行為に関わりのない,公明正大な,ガラス張りの施設建設を行うことを大方針として取り組んできたということで思っております。
   そのために,一般競争入札の積極的な導入や予定価格の事前公表など,談合防止につながる様々な手法を採用いたしまして,入札改革を積極的に実施してまいりました。その中でも,最も重要な手法として,現職警察官への協力依頼がございます。大阪府警捜査二課のエース捜査官と言われた警部補は,談合捜査のエキスパートと評価の高い,非常にやり手の刑事でございました。枚方市にとっては,大阪府警の強い監視の下で,談合捜査のプロに指導を仰ぎながら事業を進めることで,談合の防止は盤石になったということで考えておりました。
   ところが,思ってもみない事態となります。平成19年5月31日,私は,先ほども申し上げましたが,逮捕されてしまいます。事情聴取をただの1度も受けない状況での,予想もしない突然の出来事でございました。逮捕容疑は,清掃工場における大手ゼネコンの談合に私が関与をしたというものでございます。私にとっては全く寝耳に水の話でございました。
   実は2日前の5月29日,既に逮捕されておりました先ほど申し上げました警部補が,表では談合防止のためなどと言いながら,裏ではゼネコンと結託をして,そのゼネコンが受注できるように暗躍していたわけです。しかも,談合捜査のプロと評価されていた警部補が,その見返りにゼネコンから1,000万もの大金を受け取っていたという事実が判明いたしました。
   警部補が逮捕された2日後の5月31日の夕方,私の副市長室に4,5人の捜査官がどかどかっと入ってまいりました。話を聞きたいから同行してくれと,ワゴン車で大阪地検に連れていかれました。その車の中で,「警部補が全部ゲロしている。」と,「枚方市主導の官製談合,お前が事業のトップ,市長に指示をされたんだろう。真実を言って1日も早く出ることが自分のためだ。」というようなことを言われたわけです。怒鳴り,脅しながら,早く認めるようにと強要いたしました。何を言っているのか,わけが分かりませんでした。
   地検の調べ室で,自分が担当している事務の範囲,内容,それから清掃工場の建設に関わる事業経過や予算の仕組みなどについて,2時間近くお話をしたときに突然,逮捕状が執行されたと通告されました。午後8時7分でした。この時間は一生忘れないと思いますが,予測もしなかった。頭が真っ白になりました。私にとっては文字どおり青天の霹靂でした。事実無根の,全く身に覚えのない嫌疑でございました。検事に私は,「なぜ私が逮捕されるのですか。全く理解できません。」と,「なぜ逮捕なのか,何の容疑なんですか。」と何度も繰り返し尋ねましたけれども,検事は,「お前が警部補にぺらぺらしゃべったことが談合の共謀に当たるんだ。」と,その一点張りでございました。
   その夜10時過ぎに,生まれて初めて手錠と腰縄を打たれまして,大阪拘置所に送致をされました。21日間に及ぶ過酷な取調べのスタートでございました。思いもしなかった逮捕から6月21日までの21日間の取調べの中で,大阪拘置所での取調べは休むことなく,連日続きました。取調べは,2,3時間の日もございますけれども,7時間から8時間の長時間にわたって,深夜に及ぶ日も多くありました。過酷なものであったということで思っております。
   私が否認を続けていることから,担当検事は3人交代をすることになります。その3人目の検事がすごかった。もうすごかったとしか言いようがないんですが,声は特別大きいですし,拘置所の取調室は,机はコンクリートで作られたものです。それに,両肘付きの今私が座らせていただいているようなこの椅子を蹴って,打ち当てて轟音を立てるわけです。椅子のキャスターが壊れて使い物にならなくなりました。さらに,入口のドアを激しく開閉させて,すさまじい音を立てます。恐怖感をあおる演出としか思えませんでした。拘置所の近隣住民からは,夏,6月のことですから,廊下も取調室も全部開けっ放しになっているんですが,うるさくて眠れないと苦情が来るほどでした。刑務官が検事に,「苦情が来ています。少し穏便に願えませんか。」と伝えに参りました。私は,塀の外にまでこの音が聞こえているのかと,改めて驚いた次第です。
   検事は,起訴までの取調べの間,罵声,罵詈雑言,恫喝の繰り返しでございました。例を挙げますと,「くずやろう,ごみやろう,ばかやろう。」と,終始怒鳴っておりました。「お前も金を受け取っているはずだ。」と,「調べても出てこないのはどぶに捨てたのか。」と,何を言っているのかなということで思いましたけれども。「かみさんも同じ目に遭うのが分かっているか。息子や娘も今の会社にいつまでおれるかどうかも分からんぞ。兄弟親戚も徹底的に調べてやる。」と。一番驚いたのは,介護施設に入っている母親も調べると,そういうことを言われました。
   現実に,何の関わりもない妻と姉が取調べを受けております。特定疾患で心臓を患っておる妻は,拘置所で2時間ほど寝なければならないような状況になったということも現実にはございます。下半身不随の90歳を過ぎた介護の必要な母親に,何を聞こうというのでしょうか。その母親も,私の無罪判決を聞く前に亡くなってしまいました。大変残念に思っております。
   更に検事は,「二度と枚方に住めないようにしてやる。」と,「一生かけて反省させてやる。覚悟しておけ。お前ら家族も町を歩けないようにしてやる。」と。自分のことよりも,家族や身内のことを言われると大きいプレッシャーになります。「否認しているのはお前だけだ。1人頑張っても全部お前にかぶせられる。ここから出られなくなるぞ。分かっているのか,ばかやろう。」というような罵声でございます。「談合に協力するように市長に指示をされて,警部補に情報を流したんだろう。提供したんだろう。」,そういう話です。
   検察の最大の目標でありました市長は,2か月遅れの7月31日に逮捕されました。私は市長逮捕のためのただの踏み台,駒であったのかなということで今でも思っております。その市長は無実を訴え,現在も最高裁に上告中でございます。
   そのような恫喝が繰り返される中,私に対する取調べの過酷さが拘置所の内部で話題になっているのかと思わせるような出来事もありました。取調べが終わりまして,夜中11時頃,へとへとになって房といいますか部屋に帰ったときのことなんですが,入口の前に見知らない大柄な人が立っておられました。「お前が小堀か。大変な取調べを受けているらしいが,くれぐれも間違いを犯すなよ。」と,そう言われたんです。とっさに私は,何を言われているのか,意味が分かりませんでした。「今の人は誰。」と担当刑務官に尋ねましたら,「ここの一番偉い人や。」,それが拘置所の一番偉い人なのか,私が入っているところの一番偉い人なのかは分かりませんが,そういう答えが返ってまいりました。部屋に入ってしばらくして,自分で自分の命をということを言われたのかということで気付いて,はっとなったところです。
   この事件で,検察は枚方市役所の家宅捜索に4度も踏み込みました。山ほどの資料類を押収しましたが,犯罪を立証する物的証拠は皆無でございました。大阪府警のエースと言われた現職警察官の供述だけ,よく言う伝聞証拠のみを根拠とした逮捕でございました。談合捜査のプロが自分の罪の軽減を意図して,引っ張り込み供述の典型と言える事件ではなかったかなということでお聞きもしております。
   取調べを受けていた当時の健康状態にも,少し付け加えさせていただきたいということです。
   私は腎臓が片方しかございません。小刻みな水分補給を必要としておりました。しかし,水を飲ませてほしいと申し向けても,1度も聞き入れてくれませんでした。最後まで,コップ1杯の水も与えてくれませんでした。ここにおられる弁護士先生に抗議をしていただいたら,トイレ休憩を2時間ぐらいにとってくれるようになりました。その場で,手洗いの水を飲むことで渇きを癒すしか仕方がなかったというのが現実でございます。
   また当時,前立腺肥大症で排尿障害があり,投薬治療を受けている状況で,近々手術をすることになっておりました。しかし,拘置所では薬を与えられず,過度のストレスもありまして,4日目には尿が完全に出なくなりました。医務室で排尿用のカテーテルを挿入されたんですが,その処置・措置の不具合で尿道と膀胱に傷が付きまして出血をするようになり,その後も出血・血尿が止まらず,精神的ダメージは最悪の状態になったということで思います。出血・血尿のため下着が赤く染まる状態になりましたから,介護用のおむつを与えられました。ちり紙を挟んで取り替えながら,細菌感染による鈍痛や発熱,尿漏れに苦しみながら,カテーテルを挿入した状況で取調べを受けたというのが実態でございます。
   死をも意識をせざるを得ない状況でございました。このままでは殺されてしまうのではというような,そこまでの恐怖を感じずにはおれませんでした。屈辱以外の何物でもございません。本当に一生忘れることはできないと思っております。申し上げたことは一部ですが,このような恫喝,脅しに類する,聞くに堪えない内容の取調べが,起訴までの間,1日も休むことなく続きました。正に拷問に等しい,理不尽極まりない,人権侵害と言える取調べであったということで思っております。
   そのような精神的にも健康状態においても最悪の状況でしたが,終始一貫して潔白を主張して,検事のシナリオ,ストーリーとは全面的に争い続けたわけです。密室であるが故に人権無視の罵声や脅し,威嚇でもって精神的に追い詰め,虚偽の自白を迫り,調書をとることを最大の目的とした最悪の取調べであったと思っています。
   さらには,健康の面においても,究極の人権侵害と言える,過酷極まりない,拷問に等しいものでした。連日の厳しい取調べにより精神的限界に近づいている状況の中で,検事は彼らの構図どおりに作成した調書を読み聞かせをしまして,「サインをすれば明日にでも家族の下に帰れるよ。」と誘導しました。「他の者は皆認めている。」と,「認めていないのはお前だけだ。」と。私は,何を言っても聞いてくれない,本当に耐え難い,つらい環境に追いやられてしまったなということで感じましたし,しかし,虚偽の自白調書には最後まで署名をいたしませんでした。
   それでも検察は,一旦逮捕してしまえば,理不尽にも最後まで,起訴までしてしまうのです。そのことを如実に物語る事実といいますか,取調べの検事が言った言葉に,「地検も動くと止まらない。」という言葉が今も鮮明に記憶に残っております。検事は,「この事件は大阪地検にとどまらず検察組織全体で捜査に踏み込んだ事件。特捜というトップクラスの検事が動いている。逮捕した以上,今更止められない。何としてでも罰を受けさせる。」と,「検察に刃向かっても無駄だ,このばかやろう。」というような怒鳴りがございました。真実がどこにあろうが,自らのストーリー以外は一切認めず,警部補の曖昧な供述のみをよりどころとした,見込み違いの誤認逮捕に踏み込んでしまった事件であったと私は結論付けております。
   その後の大阪地検における裁判は1年7か月に及びました。当然のことですが,事実無根であり,身に覚えがないと終始潔白を主張し,無実を訴え続けました。裁判長は一昨年,平成21年4月27日,私の主張を全面的に認める形で,無罪を言い渡してくれました。そして大阪地検は控訴することなく,5月12日零時,無罪判決が確定をしたのです。
   私は,逮捕という事態に自らが直面するまでは,地検特捜の検事はエリート中のエリートだということで思い込んでおりました。さらには,悪を懲らしめる正義の味方というような,尊敬の念にも近い思いを持っていたと言っても言い過ぎではないということで思っています。逮捕という最悪の状況に追い込まれましても,事実に基づいて話せば,説明すれば必ず分かってくれるということで信じておりました。
   しかし,取調べ検事は,この容疑者は本当にやっていないかもしれないというような思考回路というか,思考を最初から排除しているとしか思えない現実がそこにはありました。被疑者の言い分など受け入れる余地は全く持ち合わせていない。常に被疑者を落とすという方針だけで追及し続ける取調べであったと思っています。地検特捜部には一般常識は通用しない。ゼロから事件をつくって,目を付けられると逃げられない。求める答えが先にあり,そこに合わせて取調べをするんだ,そう強く感じた次第です。
   一般人が逮捕されて,世間から隔離された密室で,事実と違ううそを認めてでも楽になりたいと思ってしまう。長時間罵倒された,そういう状況の中では,そういうことも仕方がないのではないかなというように感じています。私自身が受けた取調べを思い返したとき,あの非人道的で苛烈な,拷問と言える取調べにさらされれば,ほとんどの被疑者が虚偽自白を迫られ屈してしまうという。現実を経験した身には,理解のできることではないかなというふうに思っています。
   推定無罪の原則というのはよく耳にしますが,その原則があるはずですし,まずそのことを,やはり検事の皆さんも再確認した上での取調べ姿勢が最低限求められるのではないかなということで考えます。当たり前のことが忘れ去れているとしか言えないということです。
   密室ブラックボックスであるが故に,人権侵害,拷問と言える取調べがまかり通る。現実にどのようなことが行われているのか,国民は誰も分からないわけで,一切表に出てこない状況で,えん罪がつくり上げられていってしまう。全てがこの密室での取調べに起因するということで私は思っています。このまま取調べを密室状況にしておくことを続ければ,同じような目に遭う人がまた出てくると予測することは,決して的外れではないのではないかなと思います。
   こうした問題を解決するために最も重要なことが,今,大きく取り沙汰をされております,取調べの全ての録音・録画をする,全面可視化の実現以外にはないということで考えています。
   枚方事件のときに全面可視化が実現したら,私に対する理不尽で人権無視の取調べができなかったであろうことは明白でございます。私が経験した取調べの実態が全てあからさまになって,罵声や脅しの事実,検事とのやり取りの内容がそのまま記録されるということになるんだと思います。
   当然のことながら,密室であるが故になし得た拷問と言える取調べができなくなり,結果として,えん罪を生む虚偽の自白調書は作成できないことになるわけです。可視化の実施においては,被疑者の取調べの一部分だけを録音・録画するだけではなく,参考人に至るまで全ての関係者に対して,取調べや事情聴取の全過程を記録する全面可視化でなければ,自白の強要によるえん罪被害を生まないという,本来の目的は達成できないということと思います。検察事件において試行される一部可視化では意味をなさないと考えています。取調べの一部分だけでは,捜査側に都合の良い部分だけが録音・録画されかねず,取調べの実態が何ら明らかにならないばかりか,そのことが逆に,事実に対する評価・判断を誤らせる危険が増すのではないかなというふうに思います。現に,現在の裁判員制度においては,法律のプロではない一般人が判断をするわけですから,なおさらのことではないかというふうに考えております。
   ところで,最近の改ざん事件を始めとする大阪地検特捜部の不祥事は,単に一検事の資質の問題とか個人的暴走とかで片付けられるものではなく,特捜部全体の組織の歪みと言える弱点をさらけ出した結果だというふうに私は考えています。組み立てたストーリーどおりに証拠や調書を作り上げ,無実の人を罪に陥れる体質を持った組織であることを示しているということで思います。
   真実を究明する捜査から起訴に及ぶ強大な権限を持つのが検察です。ゆえに,公益の代表として,国民に代わって真実を追求する責任があるんです。にもかかわらず,捜査の命,被疑者にとっては命の砦ですが,そういう証拠までも改ざんをしてしまう。逮捕,起訴,有罪,何が何でも事件を進めなければならない。結果が求められている。サラリーマンと変わりのない,行き過ぎた成果主義のなせる業としか言えないということで感じております。
   昨年12月24日に公表された再発防止策について,少しだけ述べさせていただきますが,詳細を把握しておりませんので間違ったことを言っているかも分かりませんが,検察改革の視点から,以前から注目をしておりました。
   最も重要と考えているのは,今申し上げた全面可視化の1日も早い実現についてです。この理由については先ほどから申し上げましたので省きたいと思います。
   2点目は,チェック機能だということで思っています。高検と最高検に特捜係検事を配置すると掲げられていますけれども,特捜事件を本当にチェックすることができるのか,よく分かりません。次から次へと表面化する事態は,正に組織そのものの在り様に関わる問題だと考えます。やはり外部の目・視点を取り入れることが不可欠ではないかということで感じています。内部のチェックだけでは仲間内の傷のなめ合いととらえかねないわけですし,時間が経てば形骸化が危惧されます。第三者の関与が大事なポイントだということで考えております。その意味では,取調べの全面可視化は被疑者のためだけではなくて,供述の信憑性について捜査側がチェックできるという,大きなメリットがあるということでも思っております。
   もう一つ,私の思いとしては,現に調査の在り方が争われている事件や,既に無罪判決が確定している,私も含めてですが,捜査や公判に問題があった疑いのある事件についても検証対象にすることを望んでおりました。防止策には,最高検に検証・指導を担当する部署の設置が掲げられているんですが,過去の事件を検証することになるのかは不明です。
   以上のことから,私としては,今回の再発防止策では,真の検察改革というか,それには大きな距離があると言わざるを得ないと思っております。
   行政経験が長いだけで,法・司法に理解の足りない私が大変口幅ったいことを申し上げてまいりましたけれども,特捜検事による証拠改ざん事件やアリバイ書換え事件など,あり得ない,あってはならないことが後を絶たずに続いております。ここまで来ると,氷山の一角としか思えないのが率直な感想です。
   私の無実,えん罪が明らかになった枚方談合事件を始めとして,多くのえん罪事件が存在すると,いまだに存在すると思っております。前田検事が担当した事件にとどまらず,大阪地検特捜部が過去に手掛けた全ての事件を,改めて調査・検証する必要・責任があるのではないかということで再度申し上げて,終わらせていただきたいということであります。
   時間の関係もございますので,終わらせていただきます。大変ありがとうございました。
○千葉座長 小堀さん,ありがとうございました。
   それでは,私の方から2,3点,お尋ねをさせていただきたいと思います。
   先ほど,詳細に調べの状況などをお話しいただきましたが,その際に,取調べの検察官から関係者の供述内容を告げられたり,供述調書を示されたりするようなことはございましたでしょうか。仮にそのような事実があったとすれば,その際,取調べ検察官からどのような話がされましたでしょうか。もしそういうことが御経験がございますれば,お話しいただければと思います。
○小堀氏 今,御質問いただきました,関係者の調書を示されたかということについては,それはなかったと記憶しております。
   ただ,検事からは,取調べを受けた関係者の供述を,物証がない中で伝聞証拠のみを攻めの対象・材料として使われたということはあったということで思います。特に,主役であったと申し上げたい警部補の供述とされていた内容が全ての近い状況です。警部補が全て認めている。先ほども言いましたが,「ゼネコンの意向を受けて,プラントと建屋の分離発注,決定するように誘導して,入札価格の増額も事業のトップとしてお前が仕組んだんだ。」と,「そう彼が認めているし言っている。」と。「市長の指示を受けて,談合でゼネコンの受注が決まっていることを承知で,市長から知らされていながら機密情報を垂れ流したんだ。」と,「それを彼が言っている。」と,そういうようなことも言われました。
   それから,「市長も認めている。」と。「お前が早く認めて楽になることを彼は望んでいるんだ。市長も近々逮捕だ。」と。「府会議員も逮捕した。職員も全部呼ぶことになる。」と。「お前が否認すればするほど泣く者が増えるだけだ。市長に指示されたことを思い出さないと,お前が不利になるんだよ。」と,そういうような話がありましたし,彼からは,そのことと併せて,妻や姉が事情聴取を受けたことも言われました。
   娘や息子の勤め先についても,先ほども言ったかも分かりませんが,「いつまで勤めていられるか分からんぞ。」と。「枚方に住めないようにしてやる。」という類似のことを,ずっと脅かしと言える内容として言われたということです。
   他にもいろいろ,ベルトコンベアの話とか,UFO,オウム真理教の話とか,笑い話と言えるようなこともありますけれども,もうほとんどはそういうような,先に逮捕されていた警部補の供述と言える内容のことを聞かされた。それをもって攻められたということだったということで思っています。
○千葉座長 先ほど,御意見として,検察改革のためには取調べの全面的な可視化が不可欠だという御意見をいただきました。この取調べの可視化以外にも,例えば弁護人の立会いとか,あるいは証拠の全面開示,こういうことが必要ではないかという意見がございますけれども,この点に関して,御専門ではないというお話ではございましたけれども,この経験の中から何か御意見あるいはお感じになることがございますれば,お話をいただければと思います。
○小堀氏 私は先ほどからも,自らの体験したことを事実に基づいてお話しさせていただこうということで,精一杯お話をさせていただいたということで思っています。法律を専門的に学んだことのない,市役所という行政の中で40年余り過ごしてきた人間ですので,起訴までの取調べの全てが初めて経験する出来事でしたし,言い方を変えれば,修羅場であったのではないかなということと思っています。事実は一つとの思いで,全てをあからさまにさらせば必ず分かっていただける,そういう思いの中で,他のことを考える余裕など全くございませんでした。
   無辜の人間を罪人にしないためにも,先ほども言いましたが,取調べの全てに及ぶ録音・録画,何にも増して必要不可欠な条件であると,最低限の条件だということで確信をしています。1日も早い実現を熱望しているところです。
   さらには,取調べにおいて弁護人の立会いについては,私もそうでしたが,1人で闘う,あえて闘うと言わせていただきたいと思いますが,何を話しても否定されてしまう,そのつらさ,苦しさというのは,実際に経験した者にとっては,非常に重要な課題です。やはり当初から信頼できる弁護士に立ち会っていただくということが,ごまかすということではなしに,真実をより明確に表現するという上で,絶対不可欠ではないかなというふうには思っております。
   証拠の開示については申し上げるまでもないと思います。私どもも家宅捜索で全てを押収されてしまったわけですが,捜査側に都合の良いものばかりといいますか,悪いものについては裁判所の命令が発せられるまで開示しないというのが一般的な状況というようなことで,私は認識をしております。そういうことから言えば,証拠というのは全てオープンにすること,それが大前提だというふうには思っています。
○千葉座長 ありがとうございます。私の方からは以上でございますが,あと5分程度の時間になってまいりました。お約束の時間でもございます。皆さんの中から是非という御質問ございますれば,一言の簡潔な御質問にしていただいてと思います。
○宮崎委員 先ほど,大阪地検特捜部が扱った事件について全部再検証をすべきだという御意見を申されましたが,あなたは大阪地検特捜部の捜査を体験されたわけだから,東京地検については余り認識がないというのか。それとも,いや,これは同じように東京でも行われているのではないかと思われているのか。その辺り,もし御体験の中から語れることがあれば,御発言いただければと思います。
○小堀氏 私は,新聞報道で報告書の内容というのを見た程度のことしか分かっておりませんので,詳しくは分かりませんけれども,大阪地検特捜部の特殊性というようなことでは思っておりません。詳しくは分かりませんが,特捜部長とか副部長,それから主任検事の個人的な資質,一検事の暴走として片付けようとしているのではないかなという,そういうような感じで受け取りました。主任検事の改ざん事件を皮切りに,後を絶たない不祥事の連続を見せられたときには,個人の問題にとどまらない,やはり組織全体の病巣を抱えていると思ってしまわざるを得ないなということを思います。
   東京地検のお話がありましたが,私を取調べをした3人目の検事が東京地検の特捜部におられたということで,本人が申しておりました。「自分は東京地検の特捜部にいたんだが,昨年,だらしのない大阪に応援に来たんだ。」と。「担当した事件で,全ての被疑者にゲロをさせた。」と。「落とせなかったのはお前だけだ。」ということで言っておりました。「裁判でどのようになるのか楽しみにしている。」と。「弁護士と相談して供述を変えるなよ。」と,起訴後の面談でうそぶいていたということを今も記憶しております。その彼は現在,聞くところによりますと,司法修習生の教官をしているということで聞いております。こういうことも含めて,大阪だけの特異な事象ではないということで強く感じております。
○郷原委員 恐らく聞くまでもないことだと思うんですけれども,小堀さんに対して検察の方から謝罪というのはありませんよね。
○小堀氏 一切ございません。
○郷原委員 今率直に,検察に対して,そして,そういう今お話しいただいたような取調べをした検事に対して,どういう思いでいらっしゃいます。
○小堀氏 当然,現時点では謝罪がないんですが,村木さんの報道等を見ていて,それから菅家さんの報道も接すると,一定の謝罪を,どこまでの形なのかということは分かりませんが,形式上は謝罪をされているというようなことも見聞きをしております。しかし,私には一切ございません。
   無罪を確定して,私がそうしたら元に戻るのかといったら,人生,何も元に戻らないわけです。
   現実に,無辜の人間を逮捕して裁判にかけて無罪であったと。これは私にとっては当然のことだと思っておりますけれども,彼らにとっては,ちょっとしたミスをしたという程度のことでしかないのかなと。それではやはり,今の日本の司法制度を正しく受け継いでいくには,大きな汚点を残すのではないかなと。やはりきちっと検証して,謝るべきところは謝っていただきたいと,そういう思いは今でも持っております。
○嶌委員 拷問に近い調べだといわれ,特に3人目の人がひどかったと。1人目,2人目はどうだったのかということと,それから,無罪になって,法律的には無罪になったんだけれども,社会生活の上で,やはり事件の前と後では,あるいは無罪になってから,大きく変わったのかどうか。その辺はいかがですか。
○小堀氏 1点目につきましては,後の2人,最初に逮捕するときの検事さんは,やはり少しは怒鳴っておられたということで思います。しかし,それほどし烈な取調べであったという認識はしておりません。
   2人目は,非常におとなしいと言うと語弊がありますが,静かな方でした。こうこうこういう嫌疑がかけられているんだというような説明をされておりました。
   2人で3日間だったと思います。4日目から,そのすごい検事に替わるわけです。最後までその検事が担当するわけですけれども,今でもすごいの一言しか表現のしようがない検事であったように思っています。
   それと,それまでは,先ほども冒頭に申し上げました,枚方市の副市長をいたしておりました。主に建設事業,道路,清掃工場というような建設事業を担当しておりました。その中では,やはり業者との関係というのを非常に重く捉えておりましたし,大事な部分として,明確な一線を画した中で対応すべきという認識の中で接してきたということです。
   しかし,その中で,いわれのない嫌疑をかけられ,起訴をされ,裁判というような,初めて経験する状況に追い込まれてしまいました。そのときは弁護士先生のお力をいただきながら,精一杯闘ってきたということで思っていますが,その結果,無罪をいただきました。
   しかし社会的には,当時のマスコミ報道が中心だと思いますが,私は一切潔白だと主張していながら,逮捕された翌日の新聞には,本人が認めていると,1,000万,中には4,000万ということもありましたですけれども,そういう記事が氾濫をしておりました。それを見た一般人,市民の方は,やはり新聞はうそを書かないだろうという前提の中で記事を見てしまう。その印象がいつまででもやはり残っているんだということで,現状でも認識をせざるを得ないのが実態です。
   そういう中では,無罪というような二文字をいただいたからといって,人一人の人生が何も元に返るものはありません。そこで大きく途切れてしまって,一からというか,マイナスの部分から出発を,再出発をしなければならない。幸い私は,枚方市の御高配によって,顧問という形で一昨年の10月から復帰をさせていただきました。そのことが無罪を証明するというか,大きな一歩になったということでは認識しておりますけれども,しかし,だからといって大半の市民が,いまだに当時のマスコミ報道のことが頭にインプットされた状況の方が大半ではないのだろうかなというふうに感じているところです。そういうことから言えば,元に復するどころか,マイナスでの再出発を余儀なくされているというのが現状だということで思っています。
○但木委員 私は,検察庁に長いことおりまして,検事総長もしておりました。
   あなたに対して,あなたの人格を著しく傷付ける侮辱的な調べをしたことについては,誠に申し訳ないと思います。
   それからもう一つ,あなたの身体的な非常につらい状態にある中で過酷な調べをしたことについても,深くおわびを申し上げたいと思います。
   それから,もちろんあなたの人生,取り返しのつかない部分を奪ってしまったことについても,また深くおわび申し上げたいと思います。誠に申し訳ありませんでした。
○小堀氏 想像もしていなかった温かい言葉をいただきました。大変感激をしております。当時,取調べをした検事,当時の指揮をしていた特捜部の副部長,今は大阪地検特捜部の部長さんに帰られている方がおられますけれども,その方に本来は,今,但木さんにおっしゃっていただいた言葉を言っていただきたいというのが,私の偽らざる心情でございます。ありがとうございます。
○千葉座長 まだまだ本当に厳しい状況の中で御経験のお話をいただいて,心から感謝をするところでございます。
   委員の皆さんには,お尋ねになりたいこともまだあろうかと思いますが,時間の関係もございますので,ここで小堀さんからのヒアリングは終わらせていただきたいと思います。
○宮崎委員 質問ではないのですが,机上に配布されている資料の説明,確認をしておいた方がいいのかな。この手書きのものをいただいているんですが,これは御自宅に来たはがきでしょうか。
○小堀氏 私が逮捕された1週間後に家に送られたはがきです。家族は,それを読んで大きなショックを受けたというところです。
○宮崎委員 配られている「季刊刑事弁護」の論文は浦田弁護士の事件報告と言うべきものですね。差し出がましいことでございますが。
○千葉座長 いえいえ。今日御持参をいただいたということでございますので,そういう資料として御参照くださいませ。
   小堀さん,本当に今日はありがとうございました。心から御礼を申し上げたいと思います。
○小堀氏 舌足らずで申し訳ございませんでした。ありがとうございました。
○千葉座長 それでは,ここで約10分間の休憩をとらせていただきたいと思います。

(休憩)
(吉永委員,黒岩大臣政務官入室)
(村木氏,弘中弁護士入室)

○千葉座長 それでは,議事を再開いたします。
   これから村木さんからのヒアリングをさせていただきたいと思います。
   村木さん,本日はお忙しい中,当検討会議にお越しいただきまして誠にありがとうございます。本日は,大阪地検特捜部による捜査を受けられた際の御経験などを基に,お話を伺いたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。
   それでは最初に,事務局から村木さんの御紹介をさせていただきます。
○事務局(土井) それでは,村木さんの御紹介をさせていただきます。
   村木さんは,厚生労働省の局長を務められていました平成21年6月,虚偽公文書作成等に関与したとして大阪地検特捜部に逮捕され,同年7月に起訴されましたが,平成22年9月,大阪地裁で無罪判決を受けられ,その判決が確定いたしました。
   御承知のとおり,この事件は当検討会議が開催される契機となりました重大な事件でございます。本日は,この事件での御経験等を踏まえて,貴重なお話をいただけるものと思っております。
○千葉座長 なお,本日は,村木さんの弁護人を務めておられた弘中惇一郎弁護士に同席していただいております。それでは,村木さん,よろしくお願いいたします。
○村木氏 村木でございます。座ったままで失礼いたします。今日,大変貴重な機会を与えていただいたというふうに思っております。感謝をしております。
   私の方からは,まず,今回の事件で逮捕や取調べ,裁判を通じて見たこと,感じたことを,率直にお話をさせていただきたいというふうに思っております。少し時間を追って,お話を具体的にできればというふうに思います。
   まず,今,御紹介がありましたとおり,一昨年の6月14日に逮捕をされました。私の逮捕の20日ぐらい前に,Cさんという係長さん,実際に証明書を作った係長さんが逮捕されておりまして,その逮捕から数日経った辺りから非常にマスコミに,Cさんがこういうふうに供述をしている,あるいは,私の上司が,同僚が,こういうふうに供述をしているという情報が流れてきておりまして,新聞を読んでおりますと,私が関わっているという供述がされているということがたくさん流れてきました。私も,ですから,いつ検察の方にお呼出しがあって話を聞かれるのかというふうに待っていたんですが,もう報道だけが先行するという形で大騒ぎに,正直申しまして,マスコミに追い掛け回される形になりました。結局,6月14日ですか,やっと大阪地検から事情を聞きたいので来てくださいという話があり,そこに伺ったその日に逮捕されました。
   逮捕前の取調べというのは,私の印象では,非常にあっさりしたものでございました。凛の会から何か頼まれたか,凛の会の人に会ったか,それから,議員から,あるいは上司から,証明書を作れという指示がなかったか,部下に証明書を作ることを命じて,それを受け取って凛の会に渡したかというようなことでございました。どれも全て否認をしたら逮捕されたという状況で,非常に不思議な感じがいたしました。
   それから20日間ちょうど取調べがございました。取調べは初めての体験で,いろいろと印象に残ることがたくさんございました。検事さんはお二人,P11検事さんという方とP1検事さんというお二人が御担当されました。幾つかの取調べの中で印象に残ったことを申し上げたいと思います。
   まず,最初にP11検事の取調べがありましたが,取調べの冒頭で,勾留は10日間です,1回限り延長ができます,したがって都合20日間の取調べで,あなたを起訴するかどうかが決まりますと,あなたの場合は恐らく起訴されることになるでしょうと,こういうふうに言われました。そして,私の仕事はあなたの供述を変えさせることですと,こういうふうに言われました。
   実は,この検事さんについては,逮捕される前に私に付き添ってくださっていた女性の事務官の方お二人が,P11検事ならきちんとお話を聞いてくださるから大丈夫ですよというふうに,お二人の方が全く同じことを言って私を励ましてくださったので,良い検事さんに当たったのかなと思っておりました。それゆえにですけれども,この検事さんが変なのではなくて,そういう良い検事さんだと言われている検事さんにそういうふうに最初に宣告をされたということが,大変私としてはショックでございました。組織の方針がそういうふうになっているのかということで,大変暗い気持ちになったのをよく覚えております。
   P11検事の取調べは,私は,基本的には,大変この方は紳士的な方だったと今でも思っておりますが,それでも,自分が言ったとおりに調書を書いてもらうのがこれほど難しいことかということは実感をさせられました。
   さっき申し上げたように,団体から頼まれたり依頼を受けたことはないかというふうに聞かれたわけですが,私自身は,5年も前のことですし,証明書の発行というのは非常にルーティンの業務でございますので,偽団体だと言って名乗らないで普通に来られて担当を御紹介したくらいでは,とても覚えてはいない,覚えている自信がございませんでしたので,そこは,あるかもしれません,ただ記憶にはありませんと申し上げました。後は,偽の証明書,偽の団体だと分かって,その証明書を出すことを引き受けたり,あるいは部下に命じたり,それを渡したりと,これは絶対にあり得ませんというふうに一貫して申し上げたんですが,検事さんの作った調書は,団体に会ったことはない,凛の会は知らないという,一切否認をする調書になっておりました。検事さんの説明は,調書というのはあなたの記憶に基づいて書くもので,事実を書くというものではないので,調書とはそういうものだというふうに説明をされて,慣れない私は,その調書にサインをしてしまいました。
   何度かそういうことがあって,やはりおかしいということで弘中先生に御相談をしたら,いや,別に調書はそういうものではありませんというアドバイスを受けましたので,今度こそ,次に同じことを聞かれたら,もう絶対にそれにはサインをしないでいようというふうに思っておりまして,10日目にやっと,記憶にないということと,やっていないということを書き分けていただくということができました。
   その10日目にとった調書ですが,私は実際に何が起こったかというのは一切分かりませんでしたので,この事件に関して上司や部下の悪口というのを検事さんには1度も言いませんでしたが,私が,上司のせいです,部下のせいですということを散々言った調書が,出来上がったまま持ってこられまして,私はこういうことは一言も言っておりませんのでサインはできませんと言って,相当やり合って,全部変えていただきました。変えていただいて,私がサインをしようと鉛筆を持たんばかりのときに検事さんは,最初のものと随分違ってしまったので上司のオーケーを取ってくると言って,その調書を持って出ていかれました。これも私にとっては結構ショックで,あれだけ相対で真剣に,きちんとした調書を作ろうということで,お互いにやったのではないだろうかというふうに思いましたが,そういうことでございました。幸いこの調書は,サインをすることができて喜ぶのも何かと思うんですが,サインをさせていただきました。
   お2人目はP1検事という検事さんで,また全くタイプの違う方でございました。特にP1検事の取調べについて印象が深かったのは,取調べの1日目に,大変詳しく,このストーリーを話してくださいました。CさんやDさんや,あるいは私の同僚がこういうことを言っているということで,大変詳しく事件の発端から様々な出来事を,全部1日目にこういうことなんだよと話をしてくださいました。部屋に帰って大急ぎでノートに書き留めましたが,ちょうど大学ノートに2ページ半ほどの分量でございました。ほぼ冒頭陳述にも近い内容だったのではないかと思いますが,そういう話をしてくださいました。
   2日目は,同僚職員の調書を持ってきて,ページを開いて,その部分を指で指し示しながら,この人はこういうふうに供述しているよと,こういう調書だよというふうに私に,2人分ぐらいだったと思うんですが,見せてくださって,結局のところP1検事は,あなたがそういう主張をするということは,あなたがうそをついているか,他の全員がうそをついているか,どちらかだというふうに言われました。また,否認をしていると裁判で厳しい結果が出ますよということを再三言われました。
   それに対して,事実と違う調書にサインをしたり,やっていないことを認めるわけにはいきませんということで,結局,P1検事のもとでは調書を1通も作りませんでした。ただ,一貫して私はずっと否認をしてきましたが,1度,P1検事は,Cさんに大変申し訳ないと思っております,私の指示が発端でこういう事件が起こりました,Cさんがこういうことをやったことに私は責任を感じておりますという調書をお作りになりました。読み上げられた段階でサインをしますかと聞かれたので,私がサインはできませんと申し上げたら,プリントアウトもせずに,その調書は反故になってしまいましたので,そういう調書を作られたという証拠は残っていないのかもしれませんが,そういうことがございました。
   20日間の取調べが終わって,私の中には二つの疑問が残りました。本当は何が起こったんだろうということ,それから,なぜ検事さんたちは間違えたストーリーを作っているのだろうということ。私が関わった部分については間違いだということが分かりますので,なぜ間違っているんだろうと。それを自分で探さないことには自分の無実の証明ができないというふうに思い定めて,公判前整理が始まって,出てくる証拠を必死で読んでいったわけでございます。
   その証拠が出てきてからのことを次にお話ししたいと思うんですが,まず最初に,たくさんの調書が開示をされて,それを一生懸命読みました。この調書を読んで大変びっくりしました。私が関与をしたという内容の,厚生労働省の職員,それから凛の会の方々の調書が大変たくさん出来上がっていました。ノートに記録は取ってあるので,数えれば数えられるんですが,私が関与をしたという直接の記述がある調書だけで三,四十通あったのではないかというふうに思います。これはもう大変ショックで,同僚やなんかのそういう証言というか調書があったわけで,本当にまじめに,私だけもしかして記憶喪失にでもかかっているのではないかというふうに思いました。
   調書は,よくできているというのかどうか,よく分かりませんが,裁判で裁判長がよく言っておられた,具体性,迫真性があるという調書なんだろうと思います。調書と調書の間は非常に整合性がとれていて,それゆえに自分が記憶喪失になったのではないかと思ったんです。例えば,ちょっと大変な案件だけれども,よろしくお願いしますと言って,私が部下に仕事を指示したことになっている。5年前のそういうせりふが正確にというのか,全く同じせりふが違う人の調書に出てきて,私がそうやってその当時仕事を頼んだということになっている。これは一体何だろう,どうしたらいいんだろうと,最初は非常に悩んだというか,ショックを受けて,どうしようもないというふうに思ったんですが,段々調書をよく見ていくうちに,おかしいなと思うことに自分で気が付き始めました。
   一番のきっかけは,客観的な事実と全く違う調書がたくさんあるぞということに気が付いたということです。私が逮捕される直前の数日間に,当時,自立支援法の円滑な成立のために野党に配慮しなければいけなかった,そのいろいろな根回しをしているところだったので,野党のその先生から頼まれたことに対して引き受けざるを得なかったんだという調書が何人もから作られておりまして,自立支援法の法案を作るときは当然根回しをしますが,それは実は翌年,平成17年の出来事でございまして,あれ,これは1年ぐらい時間がずれているぞというのに気が付きました。その当時,厚生労働省で使った,いろいろな先生方に根回しをした資料や,先生方のコメントが書いてある資料が調書に添付をされておりまして,その資料の日付そのものも平成17年のものになっておりまして,これはもう時期が全然違うと,おかしいなと。何人もが何でこんな同じ間違いをして,同じように違った調書ができるんだろうと。調書はおかしいのではないかというふうに思うきっかけになりました。
   自立支援法のためにそういう悪いことを私がやったという報道もありましたので,P11検事に私は丁寧に自立支援法の経緯を説明いたしました。P11検事もしっかり勉強してこられて,6月30日ぐらいに,自立支援法ができた経緯や時期,そういうものをしっかりお話しして,非常に詳しい調書を作りました。その直後に関係者の調書が幾つかとり直されておりまして,自立支援法があったからやったというのではなくて,後の自立支援法の改正につながるようないろいろなことをしていたんですという調書が,新しくとり直されておりました。そういうのを見て,何だかおかしいというか,意図的にこういう調書が作られたのではないかというふうに思うようになりました。
   それは一例でございますが,他にも幾つかありまして,例えば調書を全部並べてみると,こういうストーリーになっておりました。Dさんがある日,これは2月25日ということにストーリーではなっていたんですが,議員にお願いに行った。その日に議員は私の上司に,これはやってやれというふうに依頼をした。上司から私に,これを議員案件だからやってあげなさいという指示があったと。私は担当者に,議員の依頼があって,こういう人が来るらしいから,そのときはきちんと対応してあげてねという指示をした。それから数日後に担当者は私の席に呼ばれて,凛の会のDさんを紹介をされて,ああ,これがこの前に,当時の私ですが,課長が言っていた件だなということで,担当としてDさんから話を聞き,Dさんが帰った後で,いろいろ見て,これは民間の障定協(障害者団体定期刊行物協会)というところへ行かせた方がよさそうだということで,その後,凛の会に電話をかけて障定協へ行かせたと。こういうストーリーで,たくさんの人の調書が一致をした,きれいなストーリーになっておりました。
   ところが,他の,いわゆる捜査報告書なんかで別の証拠,調書以外の証拠をずっと見ていきますと,DさんがI議員にお願いしたのは2月25日ということになっておりましたが,それから相当な日にちがたってからDさんが来たはずなんですが,障定協にDさんから,凛の会から電話があったのは2月26日になっているということで,全く日にちが合わない。あれ,これも日にちが合わないということで。いろいろ調べていくと,最後には,I先生がゴルフに行っていた日にDさんはI先生に会っていたことになるとか,それから,フロッピーディスクのように6月8日以降に作られたはずの文書が,なぜかフロッピー上は6月1日になっているとか,いろいろなものがあって,結局,調書同士で見れば非常につじつまが合っているのに,客観的なものと突き合わせると,全部事実と違ってくる。これは何なんだろうというのが,裁判の準備を通じて,非常に大きな疑問として私の中に残りました。
   原因はいろいろあるでしょう。,私も調書を見せられながら取調べを受けたりしましたし,公判で明らかになったのは,否認をしている間は調書をとらない,認めたら調書をとって,そのとった調書はすぐにみんなに配布をされる。それから,人によっては脅迫された,誘導されたという話もあったわけでございますし,報道を通じて予備知識ができてしまっているというような,いろいろな事情があるんでしょうけれども,調書自体は,非常に事実と違ったものになっていたということでございます。
   先ほどフロッピーのお話をしましたので,フロッピーについて一つだけ,私がここで申し上げたいなと思っていることをちょっと付け足して申し上げたいと思います。フロッピーの改ざんは大変びっくりいたしました。それから,フロッピーの日付が全く検察のストーリーと違うということを発見したときもびっくりしましたが,それよりも何よりも私が驚いたのは,フロッピーがあったということを知ったときです。
   P1検事は大変細かくいろいろなお話をしてくださる方で,Cさんのところに家宅捜索に入ったときに,どんなものが見付かってどうだったという話を大変詳しくしてくださいました。ただ,そのときにP1検事は一つだけ言われなかったことがある。偽の証明書の写しやなんかと一緒にフロッピーもCさんは持っていて,それが押収されているんですが,フロッピーがあったということは一切そのとき検事はおっしゃいませんでした。
   それから,開示をされた調書を全部読むと,Cさんの調書というのは山のようにあって,いろいろなことが書かれているんですが,その中にもフロッピーのフの字も出てこない。
   私は,そういうものを見た時点では,フロッピーが残っていないというふうに思っておりました。パソコンのきっとハードディスクにでも保管をされていて,そのパソコンが入替えがあって,もう何も残っていないんだろうと,こういうふうに思っていたわけです。捜査報告書を丹念に見ているときにフロッピーのプロパティを発見して,フロッピーあったんだというのは大変な驚きでした。
   そのとき私は,性善説の人間なものですから,検事さんはこれを見落としたのだろうというふうに思って,このフロッピーの日付のことをきちんと主張すれば,検事さんたちは間違ったストーリーを修正してくれるのではないかというふうに,大変期待をいたしました。
   ただ,その後でCさんの被疑者ノートが証拠で出されたときに,P1検事は,フロッピーをCさんに見せて,それでCさんの事実と違う供述を引き出すのに実際に使っておられたということが分かったものですから,これは大変ショックでした。
   また,このフロッピーは公判前整理のときに証拠請求をしましたので,一昨年の秋には公判部の検事さんたちは,このフロッピーがあるということと,我々が無罪の主張をするのにこのフロッピーを使うということは,もう御承知をされていたと思います。私は,その段階でも,ストーリーを修正してくださるのではないか,真実にもう少し近付いてくださるのではないかと思いましたが,冒頭陳述を聞いても全くストーリーに修正がなかったので,がっかりしたということでございます。調書だけでいえば,フロッピーはなかったことにしてストーリーも作れるということも分かり,非常に怖いなという思いをいたしました。
(黒岩大臣政務官退室)
   そうやって裁判の準備の過程でいろいろなことが分かって,私として,その裁判に向けて,あるいは裁判が終わって,やはり二つの疑問が残りました。
   一つは,私が全く関わっていなかったにもかかわらず,どうしてたくさんの検事さんによってたくさんの私が関わったという調書が作られたのかという疑問でございます。検察が組織として,チームとして,そういうことを実際に行ってしまった。それは何なのかということでございます。フロッピーの改ざんは確かにショックでしたが,私は,改ざん自体はそんなに怖さを感じませんでした。1人の変な検事さんがいて変なことをしてしまったということで,あってはいけないことですが,それよりも,たくさんの検事さん,副検事さん,まじめな方もたくさんいらっしゃるはずだろう,そういう人たちがチームでそういうたくさんの調書を作ったということの方が,私としては大変恐怖に感じました。
   それからもう一つは,調書がそうやって作られたということで,調書を排除していくと,一体,なぜ私がこの犯罪に関わった,あるいはこの犯罪の首謀者であったと,責任者であったというストーリーを検察が作り,それを維持されたのか。何でだったんだろうという疑問が,結局最後に残ったということでございます。
   そういう意味では,私は最高検の検証については,その二つについて何らかのお答えがあるのかなということを,実は期待をしておりましたが,期待はかなえられなかったということでございます。ちょっと最高検の検証について,私の感想を率直に言わせていただきたいと思います。
   一つは,最高検の検証の中で,自分が事情を聞かれなかった。裁判を通じて,検事さんのメモは全て廃棄をされているということは分かっておりました。裁判を通じて,私や,それから取調べを受けた人たちと,証人に立たれた検事さんの言い分というのは真っ向から対立をして,完全な水掛け論になったということも分かっておりました。そういう状況が分かった上で,検事さんからだけしか事情を聞かずに検証したのかなということが,非常に私としては疑問ですし不満が残った,まず1点目でございます。
   それから2点目は,先ほどからもうしつこく申し上げた,なぜ組織的にあれだけ事実と違う調書が作られたかということについて,余り直視をせず,それに対する原因・要因の分析はなかったということについて,大変がっかりいたしました。
   それから,これは細かいことで笑われるかもしれませんが,当事者ゆえのこだわりと思って聞いていただいたらいいと思うんですが,この期に及んでも,やはり御自分に不利なことはなかなか言ってくれないんだなと思うことが一つありまして,それは,私が関わったというふうに思い込んだ理由の一つとして,最高検の検証で,その事件のあった4月に凛の会から,当時ですから郵政公社に出された文書に関してでございます。
   これは,低料第三種の承認をもらうべくいろいろ準備をしています,厚生労働省で証明書ももらうようにしていますという,現状報告を郵便局に出している文書なんですが,その文書の中に,4月に出された文書の中に,企画課長にも会いましたと,村木に会いましたという文書があるんですね。それを,そういう文書もあったので村木さんがやったと思いましたということが検証に書かれているんですが,この郵便局から同じく任意提出を受けた文書の中に,実は3月,それより一月前の同じ趣旨の文書がございます。これは証拠開示もされて,私も見ました。この3月の文書は室長さんに会いましたと書いてあります。4月の文書は課長に会いましたと書いてあります。
   私は開示を受けて,その文書を見たときに,3月と4月で同じ文脈で,なぜ会った人間が違っているのか。ああ,これはきっとどちらにも会っていないんだなというふうに思いました。室長の名刺も私の名刺も凛の会側から出てきませんでしたし,どちらにも会っていないと,だからころころ変わったんだと。では,何で3月は室長で4月は私の名前になったか。3月は,2月の終わりに,この証明書の担当は社会参加推進室ですよと言われて社会参加推進室に行っているので,そこの室長さんに会ったというふうにきっと文書に書いたのだろうというふうに想像いたしました。4月は,民間の障定協の承認が下りております。その承認の文書の中に,企画課長宛,企画課長がその責任を持っているということが分かる紙が,障定協から凛の会側に渡されております。それを見て,あっ,企画課長だったんだと思って,慌ててきっと企画課長に直したんだろうと私は想像いたしました。
   そのこと自体がどうだということではないんですが,同じときに同じところから出てきた文書の中で,4月に私の名前がある文書だけを取り出して,こういうものがあったから村木さんだと思っても仕方なかったよねというふうに,最高検が総力を挙げてやられた検証でお書きになったのを見て,こういうことが他にもたくさんあるのではないかと,本当に総力を挙げてきちんと検証してくださったのだろうかと思いました。
   あるいは,これも大したことではないのかもしれませんが,7月の半ばに前田検事がフロッピーと一緒にいろいろな証拠物を返しております。フロッピーだけではなくて,どうも私のところにもいろいろな証拠物が7月,同じような日付で返ってきているらしいんですが,何が返ってきているのか,何を返したのかというのも,私のところに物があるわけですが,どなたもお調べに来られなかったりとか,いろいろなことがあって,あの検証については一生懸命やってくださったんだと思いますが,でも,しっかりした検証だったのだろうかという疑問が残らざるを得ませんでした。
   いただいた時間,大体使い尽くしたようですので,結論を申し上げますが,本当に私の結論は,調書は怖いというふうに思ったということでございます。調書に頼る裁判ということの怖さを今回実感しました。
   可視化の議論がよく言われます。私自身は専門ではないので,こういうやり方がいい,ああいうやり方がいいということは申し上げませんが,裁判に調書をお使いになるのなら,調書に書かれた言葉が誰の口から出た言葉かというのが分からないままで調書を使っていただきたくないと。今回の調書はほとんど,取り調べられた人の口から出ていない言葉が相当調書に落とされていたというふうに確信をしております。
   1年3か月,長いか短いか分かりませんけれども,非常に大きな負担を強いられた出来事でございましたので,是非こういう取調べの在り方,検察の在り方,裁判の在り方,先生方で良い形で見直しがされるように御検討をお願いできればというふうに思います。
   簡単でございますが,私からは以上でございます。
○千葉座長 ありがとうございます。委員の皆さんからお出しいただいたものを少しまとめた形で,まず私の方から何点かお尋ねをさせていただきますので,可能な限り御意見をいただければと思います。
   まず,今回の,本当に村木さんのようなことが二度と起きないようにするためには,取調べの可視化,弁護人の立会い,証拠の全面開示が必要であるという意見があることも,もう御存じのところではあろうかと思います。この点に関して,この間の御経験を踏まえて,どんな御意見をお持ちでございましょうか。
○村木氏 可視化につきましては,先ほど申し上げたように,ちょっと言葉は過ぎるかもしれませんが,調書というのは作れるということをこれだけ実感してしまいますと,やはり,その調書が正しいものである,まともなものであるということを担保するために,どうしても可視化というのは必要ではないかなというふうに思っております。
   それから,弁護人の立会いについてでございますが,私も取調べを20日間受けて,これは,取調べというのは,リングにアマチュアのボクサーとプロのボクサーが上がって試合をする,レフェリーもいないしセコンドも付いていないというふうな思いがいたしました。いろいろな改革の方法はあるでしょうけれども,せめてセコンドが付いていただけるということだけでも,随分まともな形になるのではないかというふうに思いますので,弁護人の立会いは大変重要だと思います。最低限というか,どんどん条件を下げてはいけませんけれども,特に切実に思ったのは,調書にサインをするときに,具体的にその調書の内容を弁護士に話して,記憶に頼らなくて物を見て話をして,この調書にサインをしていいものかどうかというのを,最低限でも相談をしたかったなというのが実感でございます。ただ,リングに上がるときにそばにいてほしいというのが更なる願いでございます。
   それから,証拠の開示につきましては,今回,何とかおかしいということに気付けたのは,これは弁護団が幅広に証拠を検察の側から開示していただくことに成功したからでございます。ただ,いつもこういうふうにはいかないのではないかというふうに大変危惧をしていて,せめて客観的な証拠だけは弁護士側がしっかり見られる仕組みというのは,最低限必要ではないかというふうに思っております。今回も命綱になったのが,そういう証拠でございました。
○千葉座長 ありがとうございます。
   それでは,もう1点ですが,村木さんは大変長期にわたって保釈を受けることができなかったと承知をいたしておりますが,勾留が長期間にわたったというのは,やはり否認をされているからだと,当時,思われましたでしょうか。また,保釈を早期に認めてもらうためにうその自白をしてしまったと述べる被告人の方も,これまでの裁判の中などでもございますが,このようなことについて村木さんとしては,この長期の勾留といいましょうか,こういう問題についてはどのように感じていらっしゃいますでしょうか。
○村木氏 164日の勾留で,4回目の確か保釈の請求で,やっと認められたというふうに記憶をしております。当然,他の方が保釈をされている状況を見れば,否認をしている私は保釈をされないということで,否認をしている限り保釈はされないというのが今のルールなんだなというふうに,もうそうなっているというふうに私は受け止めておりました。
   食べて眠ることができておりましたので,私は,保釈を認めてもらうために一旦認めるというのは,どうしてもそういうことは自分でしたくなかったので,しませんでしたが,体調がつらくなれば,そういうことをする人がたくさん出てくるというのは当然だろうというふうに思います。
   保釈の反対意見を読んでいて大変面白かったのは,罪証隠滅のおそれがあるということが一つの理由でございました。冒頭に申し上げたように,私の逮捕前に,もう村木はこういうふうに関与をしているというのが散々マスコミに出ておりましたので,罪証隠滅をしたければ,その期間に十分できたわけでございますので,何で今更。見張りが付いていて,もし罪証隠滅に走れば自分が有罪であることを証明してしまうようなタイミングで,そんなことをするわけがないのに,何でこんなばかなことを言われなければいけないんだろうというふうに思いましたし,もう一つ,大変これは,もう家族で笑い話にしましたが,逃亡のおそれがあると検察の文書に書かれておりまして。マスコミにたくさん追いかけられているので,逃亡のおそれがあるというふうに検察側の反対意見に書かれておりまして,これは本当に大変失礼ながらも家族で笑い話にしてしまいました。本当に半年近くでございますので,長かったなというふうに思っております。
○千葉座長 ありがとうございました。委員の皆様からお尋ねの件がございますれば,お手を挙げていただければと思います。
○江川委員 今日はどうもありがとうございます。
   先ほど,お話の中で,前田検事の犯罪だけではなくて,チームとしていろいろな調書をとっていたということをおっしゃいましたけれども,もう一つ,公判部ですよね。公判部の検事さんも,そのフロッピーのプロパティのことを知っていたというだけではなくて,改ざんのことも知っていたということのようなんですけれども,そういうことをいろいろ報道などでも御存じだと思いますが,その上で,この裁判の進め方について,どういうふうに思われるかということをお聞かせください。
   もう一つ,裁判の中で検事の証人がたくさん出てきたわけですけれども,この人たちの証言の態度について,あるいはその中身について,どう思われたかと。ついこの間,凜の会の関係でHさんが取調べを受けたときのことについて,いろいろ詳しくお伺いしてきたんですけれども,P1検事の証言内容を知って,あれは偽証だというふうに非常に憤っていらっしゃいました。この内容は座長に提出しましたので,後日また委員の方にもお配りになられると思いますけれども,村木さん自身は,その検事の証言を聞いていて,どう思われたのかということをお聞かせください。
○村木氏 チームとしてということと,それから公判部の方も知っていた上でということですが,私も,もう幾つかの節目,幾つかの事実を弁護側として明らかにした段階で,どこかで軌道修正をしていただけるのではないかと,何度も希望を持ちました。なかなかその軌道修正ができない組織なんだなということを,大変今回実感をいたしました。何か,その軌道修正をするためには,前を走っている人が自分で軌道修正するというのはなかなか難しいといことであれば,誰かがストップをかけるとか,誰かが打ち止めにするとか,何か仕組みとして,そういうものが必要なのではないかなというふうに感じております。
   それから,それ以前に,ちょっとこれも言葉が乱暴ですが,裁判という勝ち負けのかかったゲームが始まってしまうと,勝つことがやはり使命,ミッションになってしまうという,そのこと自体を少し改めるというか。本来,真実をきちんと明らかにできるのは検察だけだと,そこの責任も検察が負っているということについての,もう一つのミッションをきちんと定義付けてあげないと,なかなかその軌道修正はできない。負けを認めるというだけの軌道修正はなかなかつらいでしょうが,もう一つのミッションをきちんと遂行するんだという形で軌道修正をするとか,何かもっと基本的な枠組みが必要なのかなという気がいたしております。
   それから検事の証言は,これは,検事さんたちはやはりプロなんだなと,6人の証言を聞きながら,ずっと思っていました。ただ,私自身は,私の取調べで主張したことと,例えばP11検事やP1検事がそのことを裁判で証言して,うそを言っているとかということが分かったわけではありません。一つだけ,非常にこれは腹立たしかったのは,あの裁判の中でCさんの被疑者ノートというのが証拠として出ておりまして,P1検事の証言の前にその被疑者ノートを見ておりましたので,このP1検事の証言というのは一体何なんだろうと,ここまでしらを切れるものかというふうに,非常に,何と言うんですかね,これではどうしようもないよなというふうに思いました。たまたまCさんの被疑者ノートがあったから,検事さんがもう相当でたらめを言っていると,御自分に都合のいいことだけを言っているというのが分かりました。他の方もそうだったのかもしれないと思うと,6人の検事さんが出てきてあれだけの時間を費やす,あの儀式の意味は何なんだろうということで,非常に疑問に感じました。
○高橋委員 これは推測の域を出ないとは思うんですが,できれば感想をいただきたいなと思うのは,正に心証なんですけれども。心証というのは,検事さんから見た場合の被疑者の心証もあるんですが,逆に村木さん側から見られて,取調べに当たった検事さんたちはどういう状況だったのかなという心証なんですね。
   端的に言いますと,例えば,私,三つぐらい仮説があり得ると思うんですが,村木さんが有罪だと頭から本当に信じて,それを証明しようと一生懸命やったのか。あるいは,本当のところ,実は白なのではないかという疑問を持ちながらも,もう組織の上がそう言っているから,それに逆らうわけにもいかないし,しようがないからそれでいくかという感じだったのか。あるいは,そもそも本当にこの人は白なのか黒なのかということを考えること自体が,思考停止,考えてはいけないことだと,それは考えないんだと,仕事だからというふうな感じだったのか。例えばで結構なんですが,どれに近いという心証を得られたのかなと。
   すみません,これは結局,検察の組織の中のカルチャーの問題にすごく絡むので,もちろん正確には言えないと思うんですが,感じだけでも結構なんですが,感想をちょっと聞かせていただければと思うんですけれども。
○村木氏 もう本当に私の受けた印象だけですが,恐らくP11検事は白だと思っていらっしゃったのではないかなと思います。なぜかというと,例えば私が証明書を凛の会の会長さんに渡したことになっているんですが,いや,課長はそんなことはしませんと,普通郵送です,決裁でサインはしますが,実際に判子を押した証明書を作ったり,それを相手に渡すというのは,それは機械的な実務ですから担当者がやりますと,偽の証明書を作っておいて,みんなの前で,ふだん渡さない証明書を職務室で渡すなんておかしいですよねとかと言ったら,いや,人目もありますよねとかと言っておられるので,私が有罪だと信じておられるという感じは全くなかったですね。1度,私もP11検事にはどう思っていたのと聞いてみたいと思っています。
   それから,P1検事については,私が白でも黒でも彼には関係なかったと思います。それはなぜかというと,彼が私に言ったのは,真実は誰にも分からないと。たくさんの人からいろいろな話を聞いて,それが一番重なり合ったところを真実とするしかないんだと,和歌山のカレー事件だって,本当は彼女がやったかどうか分からないんだというふうに言っておられたので,彼にとっては,私がやったのかやっていないのかという真実のところは,余り関心,関係がなかったのではないかと。ただ,彼も言っていたのは,ここまで言い分が違うというのは少ないですよねと。ですから,個人的には,第三者的には,裁判の結果に非常に興味があると,こういう言われ方をしていましたので,そういうことなのかなというふうに思います。
○嶌委員 えん罪になった人はこれまでにもなかりたくさんいると思うんですけれども,みんな恐怖感を抱いて,拘置所の中で何となくふさいでいるというケースが多いと思う。村木さんの場合を見ると,全部自分で一つ一つ調べ直してやっておられた。そういう人は,ほとんどいないのではないかなという感じがしますけれども,今後の対策として,捕まったときに本人はまずどうしたらいいとお考えになりますか。
   自分で自分を守るために具体的にどういうふうにお考えになったかということと,先ほどおっしゃったことで,僕もずっと思っていることなんですけれども,よく検察の正義という言葉が使われますが,日本の司法裁判制度の中でいうと,裁判所があって,そして弁護人と検察があって,何か弁護人と検察が争っているところを裁判所が裁きを下すみたいな関係に見えますが,本当は検察というのは,やはり真実を明らかにするとか,社会の正義とか公正だとか,そのためにだったら自分の勝ち負けより,あるいは自分に不利な証拠でも出すべきだというところに,何か僕は検察の正義や使命というのがあるのではないかなというふうに思いますし,また,幾つかの資料を読むと,欧米ではやはりそういう精神が相当あるように見受けられます。したがって,起訴しても有罪率は,必ずしも日本のように99%以上などという状況にはなっていないとも聞きます。その辺の今後の検察の使命・正義というんですかね,そこら辺について,もう少し詳しくお聞かせ願えますか。
○村木氏 やってもいないのに,やってしまうという,やったと供述をしてしまう,あるいは供述はしないけれども,そういう調書をとられてしまうということが非常にあるんだろうと思う。
   私も,いろいろな方に取材を受けたので,その人たちに逆質問をして,では,どういう場合にそうなるんですかというのを,よく事件を取材しておられる方に聞いたときに言われたのは,やはり一つは,見捨てられた,みんなが離れていった形,感じになるということですね。
   それが一つと,それからもう一つは,やはり食べられない,寝られないという状況が続くと,気持ちが完全に折れてしまうということを言われました。そういう意味では,拘置所という特別な環境の中できちんと,やはり自分の身を守るための条件というのは整えてあげなければいけないというのは,一つあるんだろうと思います。
   それと,先ほど申し上げたように,検察官はプロで,初めて被告人になった人はアマチュアですから,それはやはり弁護人の力をもっと借りられる形にしないと,どんな人でも,それはなかなか勝てない,真実というのを明らかにするということはできないんだろうというふうに思います。今回は,私の場合は拘置所にいましたけれども,外にたくさんの弁護団がいて,助けていただいたわけで,素人ではどうしようもないというふうに思います。
   それから,検察のミッションという点に関して言えば,私も公務員で,やはり公務員,恥ずかしいですけれども,私の役所でもしょっちゅう不祥事があったりとかということで,どうやって信頼を取り戻すかというのを何遍もやっていて,今度の事件も役所として,あるいは管理職の私としては大きな不祥事で,これもまた信頼を回復するためにも自分も努力をしなければいけないんですけれども。そういう中で,どうやってやっているかというと,やはり一つは組織のミッションというのをきちんと確立して共有をするというのが大事で,その上で一人一人の倫理観とか行動規範というのを確立するという,二重の頭の整理というか,そういうものを徹底するというのが大事です。その次に,いくらそんなことをやっても必ず間違える人とか,問題がある人とか,勝ちたい人が出てくるわけで,そのときにチェックがきく仕組みを作るということ。
   そのチェックも,決裁のことが今回検証で相当言われていましたけれども,ラインをいくら強化しても,これは限界があるというふうに思っています。何でかというと,我々もそうですが,ラインで仕事をするときは,原案を作る人,起案をする人が一番強いです。いくら上司でも,そのディスアドバンテージが必ずありますので,そういう意味で言うとラインだけでは駄目で,横からやるというのが,監察の制度なのか何か分かりませんけれども,大事で,縦だけでは駄目だろうというふうに思います。
   後は,やはり外部の目が入るということが大事で,役所も外部の目が入りにくいんですが,それでも企業や自治体からの出向者とか,それからトップに必ず政治家がいるので,それだけでも外部の目がある。そこに更に他の外部の目も入れようという,そうやって変わっていこうと苦しんでいるというのが他の役所だと思います。検察の場合は,もっとそこがきっと難しいのでしょうから,そこを入れていく工夫というのをやらなければいけないということ。
   ただ,おっしゃるとおり,大もとのところにやはり組織としてのミッションを確立して,それを一人一人の行動規範に落としていくという作業は,ベースの作業として必ずあるのだろうというふうに思っています。
○佐藤委員 では1点だけ。私,聞き逃したのかもしれませんけれども,先ほど,取調べを受ける過程で抱いた二つの疑問がおありだったと。その二つ目ですけれども,なぜ検察は間違ったストーリーを描いたのだろうという疑問を持たれたということですけれども,その疑問についての答えはいかがだったのでしょうか。
○村木氏 結局,そこがなかなか分かりませんでした。検察が一つ挙げられた4月の文書というのは,先ほどお話ししたように,3月の文書を併せ読むとそういうふうにはならないし。
   私はずっと調書で開示されたものを時系列に並べて見ていって,一番最初に私の関与が言われたのがDさんの調書なんですが,Dさんの調書というのは非常に変遷しているんですね,おっしゃることがどんどん変わっていて。それから,非常に迎合性の強い方だと思います。言われたとおりに供述をされている様子がよく分かるので,逆に,Dさんがこう言ったからということを頼りに私の逮捕や起訴まで踏み切れたというのも理解ができないので,結局,なぜだろうと。
   私について言えるのは,文書の決裁権者であり,文書の名義が私の名前であるということは一つ大きな要素ではありますが,結局,それ以外の,これで間違えたのかと思うようなものというのは,私としては何も発見できませんでした。
   それから,最高検の検証でも,私が納得がいく原因というのはお示しいただけなかったと思っています。
○宮崎委員 村木さんのお話は,それは十分分かるのですが,せっかく弘中弁護士が来られているわけですから,この在り方検討会議に,弘中さんから期待すること,あるいは望むこと,注文がありましたら,この機会ですから一言。
○弘中弁護士 どうもありがとうございます。私は黒子に徹していればいいのかと思っていましたけれども,発言の機会を与えていただきまして,ありがとうございます。
   私は,検察の在り方という大変壮大なテーマなので,議論が拡散してしまわないかということが非常に気になっています。
   私どもからすると,先ほど村木さんも再三おっしゃったわけですが,やはり供述調書に頼るといいますか,供述調書を中心に全てが回っているということが一番の問題ではないかと。つまり,本人の供述とか本人の人格と離れて供述調書ができてしまうと,それがもう,例えば次の人の取調べのときには利用される。あるいは,それに基づいて逮捕とか勾留とか起訴がされていくということですね。
   「割り屋」というのは,単に本人に本当のことをしゃべらせるだけではなくて,検察官の思うようなストーリーにサインさせるというところがこの「割り屋」になってしまっています。先ほど検察官の証人尋問のことも出ましたけれども,これまで裁判所で,一通りこの調書はきちんと作りましたということを言うと,それで採用されるということがあったものですから,今回の6人の検察官も堂々とうそも交ぜながら,きちんとした調書を作りましたということを言ってしまうわけですね。
   ですから是非,この調書中心主義といいますか,調書を中心に全てが回って,逆に言うと,その調書にサインさせることで検察の捜査が目的を達しているというか,一番大きなところはそこにいってしまうということを,是非もう1回そこを考え直していただきたい。多分そこのところを正していくためには,全面可視化をして,その調書が,一体どういう質問,どういう過程で作られていったのかということが明るみに出るということがあれば,またこの具体的な調書中心主義をどこから切り崩していくかということの,その一つの方法になるのではないかということで,そういう面で全面可視化と調書中心主義の見直しということを,是非この検察の在り方の中で中心課題にしていただけたらと思っています。
○但木委員 2年半ほど前まで検事総長をやっておりました。
   村木さんに長期間にわたって身柄を勾留いたしまして,本当に申し訳ないことをしたと思っております。私は,村木さんのそれだけの犠牲の上に立って,今,検察の改革を考えておるわけですから,決してこの件が1人の特異な人格の人だとか,そんなふうには全く思っておりません。やはりそれを囲んでいる検察の風土とか土壌の中に,そういうものをある条件下では必ず出してしまうという,危険性を我々は持っているんだということを私は自覚しておりまして,そういう意味で,村木さんの犠牲を無駄にしてはいけないと思っております。
   弘中先生の言われたことは,僕はそのとおりだと思っています。検察が検事調書に頼った裁判をこれまで続けてきた結果,その取調べが真実を追求する手段としてすら機能しなくなって,むしろ調書を作ることに重点が置かれるようになった。やはりそういう裁判構造あるいは捜査構造というものが,今回の問題を生んでいる非常に大きな理由であるということは,僕は先生がおっしゃるとおりであると認識しております。
   どういうふうにして検察の再生を図れるのか。私としても最大限の力を振り絞って,検察の再生といいますか,ある意味では刑事手法の再生というものを考えてまいりたいと思っております。
○後藤委員 P1検事の取調べの経過について確認させてください。先ほどのお話の中で,私の理解では,P1検事の取調べの中でも何度か,調書あるいは調書の基になるような文書が,パソコンなどで作られたことはあった。けれども,それはいずれも村木さんが語られたこととは違っていたので,署名はされなかった,こういう理解でよろしいでしょうか。
○村木氏 P1検事については,調書を作られたのは1度だけです。読み上げられながら,パソコンに打ち込まれて,打ち込んだ段階で,この調書にサインをしますかと,こう聞かれたので,私は,もう全く私の言っていることと違っていたので,サインをしませんと申し上げたら,プリントアウトをされませんでした。その1回だけでございます,P1検事に関しては。
○千葉座長 他に,よろしゅうございましょうか。
   それでは,本当に長い時間にわたってお話をいただきましてありがとうございます。以上をもちまして,村木さんへのヒアリングは終わらせていただきます。本日は本当にありがとうございました。
   弘中弁護士にも,御同行ありがとうございました。

2 意識調査(サーベイ)について

○千葉座長 次に,議事次第の2「意識調査(サーベイ)について」に移らせていただきたいと思います。
   高橋委員から,質問案等について御説明を今回もいただけますでしょうか。
○高橋委員 いろいろの方から,予想以上の方々から,大変建設的な意見をいただきまして,作らせていただいて,今,お手元にあるとおりでございます。
   お断りしなければいけませんのは,やはり質問数も,これでもかなり多いかなという感じはするんですが,とてもちょっとこれ以上は無理ということで,すみません,割愛させていただいたケースがございます。
   それから,表現等については,事務局の方にもいろいろお聞きをしまして,相談をしまして,検事の方の誤解のないような言葉遣いとか,端的に言いますと,非常に答えやすい,心を開いて答えてくれる,正直に率直に答えてくれる中立的な聞き方,なるべくそういうようなものを考慮して,そんな印象では書いておりますが,基本的には,質問いただいた方にはできるだけその質問の意図をお聞きして,その意図がなるべく外れないような形では作らせていただいたつもりでございます。
   ということで,よろしければこれで早速調査の業者の方にお渡しをして,進めていただきたいとは思うのですが,1点,今後のスケジュールなんですけれども,このままもしスケジュール的に順調にいけば,恐らくこの手のインターネット調査は,大体調査会社の方で準備に2週間ぐらいはかかると思います。2週間ぐらいかかりますと,大体恐らく,私のイメージしているのでは,URLがメールで送られてきて,それを開いてパスワードを入れると,その人が対象になる,その人がそのパスワードで入れると。そこから答えが来ますから,当然メールのアドレスは出ますので,インターネットの調査業者さんには誰が答えてきたものかは全て把握できる形になるんですね。それをメールから全部切り離して,メールアドレスなどを切り離して,それからもう一つポイントになるのは,1から5の質問を答えたものと,それから自由記入欄を切り離して,自由記入欄は誰が書いたかが非常に分かりにくくするという意味での匿名性を高くしたいということで,そういう形で最高検の方にフィードバックいただくということになると思うんですが,大体回答期間は通常,この手のものは2週間とります。出張している方とかいろいろおられますので,通常は,2週間は最低とらないと回答率がなかなか上がりにくいと。
   それで集計をしますが,余り複雑な集計をせずに単純に平均点とか,あるいは,もう一つは自由記入欄のサマリーをざっとしていただいて,こんな意見が何件ぐらいというようなぐらいであれば,恐らく1,2週間で集計が出ると思いますので,順調にいけば,その単純集計プラスコメント集約ぐらいのものが木曜日で言いますと3月10日ぐらいの会合には間に合うのではないのかなと考えておりまして,そうすると,その後まだ2,3回ございますので,議論の中に反映をさせることも,ある程度は少なくとも可能かなと。手の込んだクロス分析だの何だのとなりますと,その後相当また時間がかかりますので,この会議体の中ではちょっと難しいかなと思いますけれども,単純集計だけでも意味のあるものはとても出るのではないかなというふうに思っております。
   もう一つだけ座長にお願いをしたいのは,やはりこれはそういうことで,答えていただく方も,非常に微妙な問題もたくさんございます。それから,特に自由記入欄については,そもそもこのA事件についてどう思うかということとか,最高検のレポートについてどう思うか,在り方会議について意見はないか,その他もろもろというのを,もう好きなように書いていただくことになっていますので,そこでできるだけオープンに書いていただくためにも,匿名性の担保,それから公開に対して自分の言葉がそのままひとり歩きすることがないようにみたいな,そういうことはありませんよと,思ったとおり書いてくださいということが担保できるように。
   それからもう一つは,これは積極的に参加してほしいと。是非検察の組織として検事の方々に,検察の今後の改革にとても重要なんだから是非,嫌々,言われたからやっているわけではないんだから,積極的に参加してほしいというのは是非訴えかけていただきたいと,こんなふうにお伝えいただければと思います。
   また,今後,実施までに2週間ほど準備にかかりますので,今日はコピー配布になっていますけれども,申し訳ないんですが,これは実際の始まるまではやはりオープンにしないでいただきたい。というのは,どういう質問項目が来るのかを事前にわっと組織の中の方たちが知ってしまうと,非常に身構えた形になりますので。できるだけこれは,申し訳ないですが,実際に始まるのは約2週間はかかると思うんですが,そのときにはまた検討会議で,はい,始まりましたと連絡があると思うんですが,それまでは皆さん方の中でしまっておいていただいて,実際にオープンになれば,みんな見て答えるわけですので,ばっとオープンにしていただいて結構ですけれども,それまでは待っていただきたいなと,2週間だけですね,そんなふうに思います。
○千葉座長 高橋委員に御説明をいただきました。この間,大変な御尽力をいただきましてありがとうございました。
   意識調査の質問事項については,本日お配りをした質問事項に関する資料のとおりとさせていただくということで,よろしゅうございましょうか。
   また,高橋委員から,これまでもお話がございました,今も特段に念を押していただきましたが,匿名性や公表方法等についての御意見もいただいておりますので,それを踏まえまして,私から事務局を通じて最高検察庁に実施を依頼することとさせていただきます。依頼方法等については私に御一任いただければと思いますが,その点,よろしゅうございましょうか。
○後藤委員 質問の仕方で,1点だけ表現が気になるところがあるのですが,今申し上げてもいいですか。後に個別にした方がいいですか。
○千葉座長 すぐに何かどこかに出すということではありませんので,後ほど個別に御指摘をいただければと思います。
   それでは,細かなお気付きの点はともかくとして,基本的な質問事項はこの内容でまとめさせていただきたいと思います。
   また,3月10日辺りには,集計結果を御報告ができるのではないかと思われますので,そのような大体段取りで進めさせていただきたいと思います。
○吉永委員 匿名性と,それから公開の,これは重要で,もう1点,先生がおっしゃられたのは,積極的に参加してくださいよという呼び掛けはとても重要だと思うんですね。こういうことがあったときは,こういうものに参加していいのだろうかとか,そういう思いはすごくあって,このことがやはり,こういう硬直した中においては,それに対して自分の本音を言ったことがどうなのかという疑問を配慮する方がいいと思うんですが,その呼び掛けは検討会議としてするんでしょうか。それとももっと大きく,検事としてこれは参加しなさいよと,どこか他の,検察庁なり法務省なり。
○高橋委員 これは,形としては,検討会議がやってくださいという依頼を検察庁に出して,検察庁が分かりましたと,自分たちの意思でやりますと言って,検察庁の幹部の,あるいは組織としてのコミットメントとして,大事なんだからやってくれという言い方をしてほしいという要望でございます。
○千葉座長 今お話がございますように,これは,この検討会議でも3月には概略の集計について参考にさせていただくことができようかと思いますが,更なる細かい分析等々は,むしろ最高検の方で,それを自ら生かして改革により一層努めていただくという一つのスタートということにもなろうかと思いますので,最高検の方には是非,そういう趣旨なのだから積極的にみんなが自由に意見を述べられるよう,きちんと働き掛けをしていただきたいと,依頼をする際に申し上げさせていただきたいと思います。
   それでは,サーベイについてはこのような形で進めるということで,皆さんの御了解をいただけたと思いますので,そのようにさせていただきます。
   それから,この資料については,先ほどの高橋委員の御指摘どおり,取扱いに御注意のほどを,どうぞよろしくお願いをしたいと思います。

3 今後の検討事項等について

○千葉座長 それでは,議事次第3の「今後の検討事項等について」に移らせていただきます。
   まず,ヒアリングの関係についてお諮りいたします。前回の会合におきまして,2月10日の会合の開始時刻を午前10時からといたしまして,その日の午前中に,高橋委員から御推薦のありました野田先生と,更にもう1名の方のヒアリングを実施することで御了承をいただきました。
   このもう1名の対象者についてでございます。組織論の関係は本検討会議における重要な検討事項の一つでもございますが,皆さんにもなじみの薄い分野ではなかろうかと思われます。今後の議論のためにも,是非そういう分野に関する情報を共有していくということが必要かと考えておりますので,組織学習等の分野を御専門とされている野田先生とは別の観点からお話をお伺いできたら大変有意義ではないかと思っております。そこで,2月10日の午前中には野田先生ともう1名の組織論関係の方からヒアリングを行い,後ほど御提案させていただきますが,当日の午後の2時間ほどを,この組織の問題の議論に当ててみてはどうかと考えております。具体的な人選につきましては,私の方で必要に応じて委員の方とも御相談させていただくなどして検討させていただき,次回,2月3日には委員の皆様にお諮りをさせていただくという形で計らっていきたいと思います。
   なお,委員の皆様からは,被疑者等として捜査の対象となった方々から更にヒアリングを行うべしという御意見もいただいております。これも私も十分承知をいたしておりますが,この点につきましては,この後に決めさせていただく検討事項や日程等を踏まえまして,各会合における審議事項との関係で,有益と思われる方々から逐次ヒアリングを実施するという,必要に応じてヒアリングを実施するということとさせていただいて,具体的には委員の皆様と御相談をさせていただくというようにしてまいりたいと思います。
   これを前提として,2月10日につきましては,今申し上げましたように野田先生,そして組織論の関係でのお話を伺うという整理が一番,議論を進めていくのにスムーズにいくのではないかと思われますので,まず,この段取りについて御了承いただきたいと思いますが,いかがでございましょうか。
○宮崎委員 これを見せていただいて,ちょっとやや驚いたのですが,前回は,甲10さんとか被疑者系の方,被疑者というのか,えん罪被害者の方を誰にしようか,こうしようかという議論をされていたと,こういう具合に思います,私の記憶に間違いがなければ。それが突然,別段悪いことかどうかは別にしまして,こういう分野の方という形になったわけですけれども,これは前回の会合では議論は余りされていなかったと思います。
   それで,それはそれとして,前回の議論で名前が挙がっていた,そういうえん罪被害者の方についても,やはり議論をされた対象の方を何人か調べるという措置を確実にしていただきたいと,こういうふうに思います。この方を調べるから前回会合でいろいろ議論したことは全部白紙と言われると,何のために前回議論をしたのかということになりかねないと思いますので,その点を確認させてください。
○千葉座長 今,私が御説明させていただきましたように,次の回が野田先生という,組織の問題に関わって御説明をいただけるということでございますので,同じ時間帯に,併せて,できればまず組織に関わるいろいろな専門的な御見解をお話をいただけるという方にお願いできればいいのではないかということでございます。
   お出しいただいていた,他の被害者の方,あるいは調べを受けた方々などにつきましては,話を申し上げましたように,議論をさせていただくテーマ,それとできるだけ近い形で,セットでお話をお聞きできるのが,むしろ議論を進めるのによろしいのではないかと考えております。今後の議論のテーマに合わせてヒアリングをさせていただくというのが一番,この全体として問題を共有し,そしてまた議論に生かしていくことができるのではないかという趣旨でございますので,御理解をいただければというふうに思います。
○後藤委員 確認ですけれども,今,座長が諮られているのは第8回までの日程ですか,それとも10回までを含んでいますか。
○千葉座長 次の回の議題でございます。
○後藤委員 第8回まで,2月10日までのことですね。
○千葉座長 10日のヒアリングです。
(郷原委員退室)
○江川委員 10日までのことに関連してなんですけれども,これは一応4回分,その日程が出ていますけれども,今日,弘中弁護士が非常に重要なことをおっしゃいました。検察の在り方というと壮大なテーマなので議論が拡散されないかと。一番大事なのは,やはり捜査・公判の部分ですよね。弘中先生は,全面可視化と,それから調書中心主義の裁判についてと,こういうふうにおっしゃいましたけれども,この一番大事なところが4回のうち最後の1回というのは,いかがなものかというふうに思うわけですね。
   そして,この10日に組織とかそういうのをやることについては,これは反対はしませんし,これはこれでいいと思うんですけれども,この17日の扱いですよね。17日に検察の人事・教育,これに1日かけるというのは余りにももったいないというような気がします。
   例えば,人事は,10日のところの組織の話とものすごく密着する話ですよね。そういうところもあるので,そこに組み入れる,あるいは教育の話は3日の倫理の話をするときに,その倫理を確立して,それをどうやって教育するのか,あるいは一つは監察の問題もありますけれども,そちらの方に持っていって,なるべく捜査・公判の話を分厚くできるように,あるいは,そのときにもう1人ぐらい人を呼んで話を聞くということができるような,もうちょっとめりはりを付けた日程調整というのをしていただけないかというのがお願いです。
○千葉座長 この進め方の段取りですけれども,今,皆さんにお諮りをさせていただきましたのは2月10日のヒアリングの件でございます。これからこの後,少しまた皆さんに御意見を賜りたと思っておりますので,取りあえず,まず10日のヒアリングの件についてはいかがでしょうか。よろしゅうございますか。
(一同了承)
○千葉座長 では,そこは,10日のヒアリングについては先ほど申し上げましたように,野田先生ともう1人,お話を聞かせていただくという形で進めさせていただくということにいたしたいと思います。
   次に,検討事項ですけれども,前回の会合におきまして,本検討会議の検討事項について委員の皆様から御意見をいただきました。これを踏まえて私なりにまとめさせていただいたものが,今日お配りをした資料2というペーパーでございます。これは,既に御意見が出ておりますが,必ずしも検討を行う順番を書いたわけではございません。検討事項につきましては,前回もおおよそ皆さんの御意見を集約させていただき整理したものです。大きくは,このような枠組みになるのではないかと思いますが,いかがでございましょうか。この検討事項について,何か御意見がございますれば,お聞かせをいただきたいと思います。
○高橋委員 倫理・監察というところなんですが,監察というのは要するに横からのチェック体制と,先ほども村木さんもおっしゃっていた,この部分だとすると,決裁や上級庁の関与を含むチェック体制と不可分の問題なので,ここに二つに股裂きになってしまうと議論がちょっとしにくいかなという感じがしますので,監察というのはチェック体制の一部で,倫理も。だから,倫理はむしろ人材開発・育成とか人事評価とかに近くて,監察はむしろこのチェック体制の方に入れていただいた方が,どっちが先に来るかは別として,議論はちょっとしやすいかな,そんな感じがいたします。
○千葉座長 今,大変適切な御指摘をいただきましたが,いかがでしょうか,今の御意見。
○江川委員 そうなると倫理に関しても,例えば倫理違反があって監察ということになったりすることがあると思うので,倫理もひっくるめて,この上の方に持っていくというのはどうなんでしょうか。
○高橋委員 倫理は実は二つ側面がありまして,先ほど村木さんが言われたとおり,まずミッションとかビジョンを決めて,倫理規程を決めて,がーっと流していくというのが教育的な部分で,万が一それに違反しているやつがいたらどうするんだというのが,最後にもう一つ別に来るんですとおっしゃっていましたけれども,その二面性があるので,そういう意味からいくと,両方に入るという感じかなという気がいたしますね,議論としては。
○井上委員 私もそんな感じを持ちました。倫理といっても,ただ倫理規程などを設けるだけではなく,それを実効化することを考えないといけないので,その意味で,「監察」という言葉がいいかどうかは別として,3にはそのような免が当然入ってくると思います。これに対して,2の方のチェックというのは,事件処理だとか,そういうことを違う目で見てみるという,そういう意味の監察だと思うのですね。こちらについても「監察」という言葉がいいかどうかは分かりませんけれども。
○高橋委員 両面ありますね。
○井上委員 フェーズは異なるでしょうが,両方で恐らく議論しないといけないものなのだと思います。
○江川委員 質問なんですけれども,例えば最高検も,その報告書の中にちょっと出ていましたけれども,無罪事件などから学ぶみたいなのがありましたよね,そういう研究する。そういうのは,これ,どこに入るんでしょうかね。2の方なんですか,3の方なんですか。
○井上委員 それを一般化して研修するということになれば3の方になるといえます。これに対し,個別の事件がなぜ間違ったのかということになりますと,2にも関係してくるのだろうと思います。ただ,2は進行中のときに間違わないように,どうやって違う視点を入れてチェックしていくかという意味のチェックなんだろうと思います。
○江川委員 例えば,先ほど村木さんも外部の目とおっしゃいましたけれども,それというのは恐らく,一応ある段階まで来たところでということだと思うんですね。進行中のときはなかなか難しい話,現実問題としては難しいだろうと。すると,そういう話なんかは2の方でする方がいいのか,3の方でする方がいいのかということを決めていただけると,そのときに準備ができます。
○井上委員 両方考えられると思います。ただ,2の中で,現在進行中の早い段階でも,適切かどうかということは考えないといけないと思うのですけれども,どちらででも議論していいのではないでしょうか。
○高橋委員 これは両方にかかるのが多くて,決裁というのも,実はこれはチェックなのではなく,部下の育成のためにやっているんだという観点が非常に重要だという説もあって,そうすると,これはやはり両面かかってくるんですね。だから,不可分なので,しようがないなと思います。多少ダブって,もう1回議論になるというのは,ある程度はしようがないのではないかなと思いますね。
○千葉座長 確かにそれぞれ,大きくは束ねてはおりますけれども,それぞれ関わりがあり,それからまたチェックといっても,2でいうチェックの問題,それから,この3の方で倫理とチェックという問題もありますので,全くこの言葉に漏れているものは絶対もう議論しないということでもございません。今特に御指摘があった問題,取り分け,どうやってチェック体制をつくっていくかということなどは2にも3にも,両面から検討しなければいけないということでもあろうかと思いますので,そこはその議論の際に是非,皆さんからも御意見を出していただければと思っております。
   ほかに,ここは忘れているのではないかというようなことがございますれば,御指摘をいただければと思いますが,いかがでございましょうか。大きくはこのような論点になっていくのかなと思いますが,他にも必要あればお出しをいただければと思います。
   それでは,このような大きな論点に基づきまして,今度は日程について御協議をさせていただきたいと思います。
   今,検討事項を,大きく四つの柱に整理をさせていただきましたが,そこで基本的にはこの四つの柱ごとに,まず順次,1巡目の議論をお願いするということでいかがかと思います。別に,どれが先だから,後のものはなくなってしまうとかいうことではございませんで,どれも議論をしなくていいという課題ではございません。いずれにいたしましても,この四つの項目について,1巡目の議論をまずはお願いするということにしたいと思っております。
   そこで,またそれを整理いたしまして,更に深い議論が必要だということで2巡目,あるいはポイントを絞って,また議論を更に深めていくということが必要なのではないかと考えています。1回で終わるなどということはとても考えにくいわけですので,議論した上で,また深めていくということを考えていったらどうかと思っております。
○宮崎委員 私は,この今後の検討事項そのものは,こういう形で絞り込んでいただいたということで,それはそれでいいなと思っているんですが,ただ,メリハリという観点も加えて今後のスケジュール,議事進行について,1巡目は四つの柱について大体平等に進めていくと,こういう発想ですけれども,先ほどの弘中さん,あるいはどなたからもおっしゃっておるんですが,やはり一番の問題点は捜査・公判の在り方であると思いますので,捜査・公判活動の在り方についてということが単に同じような柱の一つになっているというのはおかしいのではないかと思っています。
   特にちょっと気になるのが,2巡目で,また更に議論をということなんですが,今後の日程を見てみますと,2月24日が2月の最後になるわけで,そうすると3月は,あと5回なんですよね,この検討会議は。5回もあるように思いますけれども,最後の2回ぐらいは提言の取りまとめだとか,どう議論をまとめていこうかということにとるのではないかと。こういう具合に考えていきますと,3月は全部取調べ,捜査・公判に投入したとしても,3回程度しかないと。さらに,その間にサーベイの結果についての分析だとか,サーベイをめぐる議論もやはりしなければならないということを考えますと,3月はせいぜい2回かなと。2月に,最後のときに捜査・公判についての時間を入れていただいているのですが,これにつきましても,この頃にちょうど最高検の可視化についての提言が取りまとめられると,こういうことですから,2月も,それを中心に,あるいは倫理規範もこの頃に取りまとめられると聞いております。
   そこで私は,このスケジュールを見たときに,総論についての議論,あるいは検察官倫理についての議論,それから特捜部の組織とチェック体制,人事・教育,これはかなりダブっている要素が多いということと,それから,最高検の倫理についてどうするかという提言が出るのが2月の末でありますから,それとサーベイと併せたような,倫理とか教育とか組織論について,あと1回は議論する機会が要るのだろうと思っています。そういうことを考えると,私は,捜査・公判活動の在り方についての時間が少なくなってくるのではないか,これで取りまとめに入って十分な,それまでの議論が十分集約できるのだろうかということに不安を有しているわけであります。
   したがって,具体的な提言としましては,7回,8回で,総論と倫理,組織,チェック,教育,こういうことについて一通り議論をすると。そして残り1回は,サーベイの結果が出たり,最高検の倫理についての提言が出たときに,後でもう1回議論をすると。最後の2回についても,また,更に倫理とか人事とか議論をする機会もあるので,最初に1回ずつ3回もとるということについてはいかがなものかと。ここを2回にまとめて,2月17日には捜査・公判をやるべきではないかと,このように思っています。
   もう一つですが,検察官の倫理もありますし,人事・教育についての議論もあるのですが,一体何を議論するのかということについてコンセンサスがまだできていないのではないかなと思います。そこで,やはり2月3日のときには,法務総合研究所,刑事局の研修関係のお話が若干あるようですけれども,この検察の使命・役割の時間に,今後のそういう論点について,何が話題になるのかと,何が主な論点として想定されているのかというのをちょっとつまみ出しておかないといかんのではないかと,こういう具合に思っています。
   だらだらしゃべりましたけれども,このスケジュール感で四つの柱が各論で,総論が一つあって,総論は総論だけで切り離されて1回とって,それから後は各論で4回とるという,この組立てについては,捜査・公判以外は,もう少し圧縮をした方がよいのではないかと思いますので,そういう提言をいたします。
○千葉座長 今,宮崎委員から御提起,御意見がございましたので,逆に,もし御意見が,この協議の仕方,日程等について,何か御意見がございますれば。
○後藤委員 できるだけ座長のやりやすいように協力したいと思います。ただ,私もこれを拝見したときに,捜査の在り方についての議論の時間が,十分確保できるかどうかという不安を感じたのは確かでございます。ですから,捜査の在り方の部分をもう少し前倒しでするか,あるいは3月の5回でこれができるのかという,その点をもう少し考える必要があるのではないか。もう少し捜査の在り方のところに時間を確保するような方策が必要ではないかと考えました。
○石田委員 これを拝見しますと,1,2,3のテーマは,基本的には倫理,検察の役割,つまり裏返しで言えば倫理の問題,それに組織の問題等々ですので,1,2,3については2回ぐらいでまとめて議論ができるのではないかと思います。そうすれば,2月17日の時点で捜査・公判の在り方について議論できると思います。15回予定されている中の,もう6回も終わってしまったんですから,効率的に議論を進めていく必要からは,やはりもう少し詰めていただいた方がいいのではないかというのが私の意見です。
○江川委員 正にそのとおりだと思います。今まで聞いてきたお話でも,やはり捜査・公判に問題があったので,捜査・公判をどうするかということがメインのはずです。それをよくするためには,どういう人事だとか,どういう教育だとかいうことになるので,捜査・公判とその背景という,この主に2分類だというふうに思うんですよね。その2分類の,捜査・公判以外のところに,さっき教育や倫理とか監察だとか,そういったところはいろいろなところが絡んでくると。つまり,捜査・公判及びそれ以外のことを集中的に話すという,この2分類だと思うんですね。最初の2回に,その他の背景,あるいはその改善策という,その他の部分を話して,残りの2回で,2月の2回で本来の趣旨である捜査・公判について徹底的にやると,こういうことではないかなというふうに私は思いました。
○吉永委員 ちょっと私の整理が間違っているのかもしれないのですけれども,取りあえず捜査の段階とか,そういう公判の段階でいろいろな問題が起きているわけで,その問題はなぜ起きたのかという,そこを突きとめると,そこから人事とか倫理の問題が出てくるわけで,先に人事と倫理にこういう問題があってという議論を進めてからこちらにするという順序が,もしかしたら逆なのではないかというふうな印象もちょっと受けるんですね。そこを徹底的にすることによって,逆に倫理の点の問題点とか,そういう人事がどういう仕組みになっていたのかということが逆に見えてくるとしたら,進め方としては,こちらの方を先にしていくという手はないのかなというふうにも考えたんですけれども。
○井上委員 そういうお考えもあるかと思うんですけれども,4の方は要するに,今回なぜ起こったのかというよりは,そこに問題があるとすればどういう対応をしていくべきかと,恐らくそっちにもう集中しないといけないと思うんですよね。今回の事態がどういうことで起こってきたのか,いろいろな受け止め方はありますけれども,かなりの程度分かってきている。それを踏まえての議論ですので,必ずしもそういう順序でなくてもいいのではないかと思いますのと,できるだけ効率のいい進行をするために,前の方は2回ぐらいでまとめてという御意見もありましたが,次回,この総論をやり,どういう論点を取り出すのかを拾い出す,それによってもどれくらい時間がかかるのか分かってくると思うのです。ですから,9回目と10回目をどういうふうな組立てにするのかというのは,まだ時間がありますので,7回目の会合において,宮崎さんがおっしゃるような論点の拾い出しを踏まえて,その後のことを決めたらどうかなと思いますけれども。
○高橋委員 宮崎委員のおっしゃるとおり,時間が限られているので,なるべく1回目をさっさと回してというのはおっしゃるとおりであるとは思うんですけれども,一つ問題なのは,どのぐらい圧縮してやるかどうかという問題と,もう一つが順番なんですね。
   必ずしも一番最初にやったやつが一番長く時間をかけられるかどうかは分からないという部分もあるんですが,ただ順番が,時間の配分と順番は別の問題があって,例えば順番でいきますと,私,素人ながら思うんですけれども,例えば特捜部の存廃を含む組織体制の在り方,それからもう一つ,但木委員が前回もおっしゃっていましたが,いわゆる公訴官と捜査官の役割の分離とか,こんな話が本当に大きい話になるのであれば,端的に言うと特捜部なしとなったときに,捜査・公判の在り方の議論に大きな影響を与えるのではないのかなと。それから,はっきり言って,もう公訴官の仕事以外は検察はやらないと,極論すると,例えば。捜査官はやらないんだとなったら,この会議の中で捜査・公判の在り方の議論というのは影響受けませんかね。
   だから,とりあえず大きく公訴官・捜査官の分離とか,そもそも特捜部,これからもやるのかやらないのかというののめどが立たないと,それはもう人事もそうなんですよ,人事もそれによって全然影響を受けますから。いろいろなことが影響を受けてくるのではないかなと思うんですけれども,どうですかね。それは,そんなことは,さすがにそこまでは話はいかないだろうという感じですかね。どうでしょうか。
○佐藤委員 今の高橋委員が言われたことは非常に核心を突いていると思うんですよ。ですから,やってみなければ分からん議論が多いと思うんですね。それで論理的に,今,高橋さんが言われたことが大前提になると思うんですね。それを皆さんがある程度合意できる部分からスタートしていかないと,2回目,3回目の議論は展開しないのではないかと思いますね。それをやっている過程で分かってくると思うんですよ。冷静な方の多い議論ですので,私は大丈夫だと,そう思っておりますけれども。
○宮崎委員 高橋先生のおっしゃることは,私もそういう議論は最初にしなければならないだろうと思ったので,総論の議論を最初にまずやるべきだろうと。ただし,一方,この教育とか組織とか,そういうものについて,それを割と最初からやっていくと,例えば取調べの可視化を導入するならば,今度は逆の。高橋先生とは逆の立場で,捜査・公判の在り方が変わるんだったら,また総論も,要するに組織とか,そういうことも変わってくるという問題があるわけなんです。
   ですから私は,その総論はどういう論点があるか,その論点について,みんな合意できる点,合意できない点,それから一体何を議論すべきかというのは,最初のときに議論をしましょうと。そして私の方は,今回最大の課題である捜査・公判についても時間をとれるような仕組みというのか,システムを議論しませんかというのが,私の第7回会議のイメージではあるわけですけれども。
(佐藤委員退室)
○千葉座長 今,大分御意見を出していただきました。それぞれ,ある意味では共通していたのではないかなと私は受け止めさせていただいております。というのは,やはり何といっても総論といいましょうか,どこを向いて議論するのかということがないわけにはまいりませんので,そういう意味では総論と,そしてそれに併せて少し論点の洗い出しというんでしょうか,そういうことがまず必要なのかなということは,皆さんの御意見の中からも感じられるところかと思います。
   それから,2と3は確かにいろいろ関連をし,大きくは一つにまとめることもできるところもあるのかもしれません。捜査も大変重要ですし,捜査をやったら前の組織とか人事や教育などにまた戻ってくる。また逆に言えば,その組織などの在り方等を考えて,また捜査にも関わりを持ってくるということで,一つ一つ分離しての議論は難しいことだろうと思います。
   今,お話をいただいたことを念頭に,できるだけ,例えば2と3を少しまとめられるような形で議論ができないだろうか。それを踏まえて,できるだけ早く捜査の議論につなげていくという考え方もできようかと思いますので,今日いただきました御意見を,もう一度整理させていただいて,少なくとも最初には総論と,そして少し今後の論点の洗い出しなど,そういうところから3日につきましてはスタートしてみたらどうかと思います。
   捜査は非常に重要だという御指摘は私も全く同感でございますので,そこに重点を置かないとかいうことでも決してありませんので,例えばそこを,少し回数を増やすという形で計画を立てていくのか,あるいは一度できるだけ議論を一回全体やった上で,やはり捜査に改めて,後の時間を費やすというか注ぐということもあり得るかもしれません。
   今,申し上げました2月3日に,まず総論,そして少し論点について更に御議論をいただいて,8回以降については皆さんの御意見,そして議論が少しめりはりを付けてできるように整理をしてみたいと思いますが,いかがでしょうか。
○高橋委員 詰めてやらなければいけない,時間がないと思いますが,ヒアリングは,この野田さんのところはどうしてもここしかとれないようなので,それが一つのネックにはなっているとは思うんですが。
   人事の問題は,何が問題になるのかというのは,サーベイになればまた少し出てくるかもしれませんが,取りあえずは私の方で,こういうことが問題で,こういうことをむしろ問題だという,こういうことをすべきではないかというようなものは,10日ぐらいまでに用意しようと思えばできると思いますが。そうなると時間が足りなくなるので,10日は,前回は座長は,午前中があるので3時までというお話だったんですが,10日も定時までやっていただくぐらい延ばしていただけると,ここでもうちょっとぐわっとやることも可能かなと。
   すみません,事務局も皆さん大変かなと思うんですが,こうなったらしようがないので,10日も4時半まで持っていただければ,ここにかなり人事の問題を,皆さんがおっしゃるように,突っ込むことも可能ではないかなという感じはいたします。
○千葉座長 午前中からかなりの時間になりますが,これはもう高橋先生と,そしてまた委員の皆さんが,それで体力も気力もという本当に気構えでいていただく状況なので,ちょっとそこは,そういう長いのもありということも念頭に,検討させていただきたいと思います。
○井上委員 時間を延ばすこと自体は結構なのですが,延ばした後の終了予定時刻の4時半は厳守していただきたいと思います。
○千葉座長 はい,分かりました。今日も大分超過をしました。これも決して,皆さんの本当に熱心な御議論の結果ですので全く問題ありませんが,多分それぞれ,いろいろ後ろの時間を合わせて,御予定も立てておられる委員の皆さんも大勢いらっしゃると思いますので,そこは何とか時間をできるだけきちっと,そして長くやるときには早くから長くやりますということで,その代わり覚悟いただいて御予定を立てていただくようにしたいと思いますので,どうぞよろしくお願いします。
   では,高橋先生からのお申出につきましては,10日の時間的にとれる形でやれればと思いますので,よろしくお願いをしたいと思っております。
○宮崎委員 高橋先生に対するお願いなんですけれども,10日とおっしゃっていますけれども,できれば2月3日にいろいろ論点を議論するということなので2月3日までに,人に対しては厳しいので申し訳ないのですが。教育というのは,それは教育を一生懸命やればいいではないかという総論は分かるんだけれども。
○高橋委員 具体的なイメージですね。
○宮崎委員 そうですね,それをちょっとお出しいただければ。
○高橋委員 ただ,ちょっと説明に時間をいただいてもよろしければ,間に合わないことはないと思いますけれども。
○千葉座長 今のお申出については,高橋先生とも御相談させていただき,事務局の方でも少し段取りを検討させていただきたいと思います。
○石田委員 2月10日は4時半まででということで。
○千葉座長 そうですね。もうそれでよろしゅうございますか。
   では,改めて事務局から確認をさせていただくようにしたいと思いますので,御承知おきください。

4 その他

○江川委員 この間お願いしたもう一つの改ざん事件,貝塚放火事件で,被疑者の取調べの映像があるということで,いろいろ問題にもなっているので,それをオープンにしてほしいということを申し上げたんですけれども,その件がどうなるのかというのが1点と。
   それからもう一つは,私たちのそれこそミッションとして,柳田法務大臣にも,この間,江田大臣にも言われた,やはり国民の信頼回復のためということがすごく大きな目的としてあるわけですよね。私たちはそのためにいろいろな案を出してやっているわけですけれども,でもそれだけではなくて,国民の中で特にこういう問題に関心のある方がどういうことをやってほしいのかというふうに思っているのかということを,やはり知っておく機会があってもいいのではないか。
   例えば法務省の方でホームページのどこかに,御意見がありましたらどうぞお寄せくださいというような,何かそういうところがあれば。何もこれはアンケートをとろうとか,それで傾向を見ようとかというのではなくて,それが私たちの手元に来れば,どういうところに国民は関心を持っているんだという,あるいはこうすれば,こういう方向に力を入れれば,やはり信頼回復につながるんだということを考える,私たちが考えるきっかけになるのではないかなというふうに思って,一つ御検討いただきたいなと思いました。
○千葉座長 御意見をいただきましたので,どういう形でできるかどうかも含めて,何か考えていきたいと思います。
○事務局(黒川) 前回,江川委員から,DVD等の証拠そのものを,ここの場で,検察庁あるいは弁護人から提供を受けてというお話がございましたが,弁護人から提供いただくことは刑訴法上禁止されていますので不可能だと思います。検察庁からの提出は,これは検察官の判断にはなりますが,一応,訴訟に関する書類でございますので,一般的には,ここの場で証拠そのものを御覧いただく見通しはかなり薄いと思います。
   ただ,審議事項との関係で,審議の必要上,必要性について委員の皆さんと座長との御判断がございますればまた別途考えますけれども,一応法令上の制約があるということです。
○千葉座長 法的になかなか難しい面があるのかなということと,それから逆に,ここに与えられている,それこそミッションなんですが,先ほどお話しいただいたA事件を一つの契機として,検察の在り方を考えよということでございますものですから,その他の個々の事件を改めて検証させていただくというようなことは,時間的にかなり限りがあるものですから,難しいところはあるかなと。どうしてもこの検討の際にそれなしには検討ができないということでございますれば別ですが,法的な制約ということを考えるときには,少し難しいのではないかなというのが私の認識でございます。更に議論の必要性等々,また聞かせていただいて,検討をしてみたいと思います。
   それでは,よろしゅうございましょうか。大変長時間になりましたが,本日の議事は以上でございますので,これで会合を終わらせていただきたいと思いますが,次回につきましては2月3日の午後1時30分からということになりますので,どうぞよろしくお願いをいたします。
   本日は大変お疲れさまでございました。ありがとうございます。
−了−

 

関連リンク

法務省 検察の在り方検討会議 第6回会議

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