厚子さん、第9回公判傍聴記 by ナミねぇ
〜私たちは、裁判の行方を見誤ってはいけない〜

2010年2月25日

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2010年2月25日(木)。
今日は2月というのに春のように暖かく、大阪の街はコート不要。
北区西天満の大阪地方裁判所に、開廷15分前の、am9:45到着。

今日の午前の公判は、1時間半検事側尋問、30分が弁護側。
午後も傍聴したかったが、神戸市内での講演活動が入っていたので、お昼休みに裁判所を後にした。

昨日・今日の公判で、上村氏の証言から、密室の取調室において検察官が「筋書き通りの供述を引き出し、調書に残すノウハウ」が明瞭になったので、上村氏の証言を再現しながら、綴ってみよう。

おそらくこのような事情聴取や取調べが行われたら、小心な人でなくても「落ちてしまい」その結果「事実と全く違う調書ができあがる」可能性が非常に高いと思う。
実に練られた、冷酷なノウハウである。

ノウハウその1。
「事件に関係無い一般的な会話(いわゆる世間話)の内容を、検察の筋書きにジグソーパズルのように嵌め込んで行く」

・上村氏は、キャリアとノンキャリの一般的な関係について聞かれ「交流が殆どない」「軍隊的な上下関係もある」など、率直に感じていることを話した。
すると・・・「従って、課長からの指示に従うほかなかった。」「そのような厚労省の悪しき体質を改善するため、自分が捨石になろうと思って、(共謀したという)本当のことを話しました。」などという調書が作成された。

・自分の性格が小心であることや、通院歴があって睡眠薬が必要なことなどを指摘され、それに同意すると「だから自分には、証明書の偽造を独断で行う度胸はなかった(つまりこの犯罪は、村木課長の指示による組織ぐるみのものである)」という調書が出来上がった。そのうえ不安から睡眠薬を求めても「医師の診断により」ということで却下され、眠れない夜が続いた。

ノウハウその2。
「瑣末なことは、しっかり正しく調書に書く」

・上村氏の「公的証明書の偽造は、自分ひとりでやった」との訴えに、検事は全く耳をかさず(本当に、全く無視するのだそう)、検事の誘導によって引き出された文言のみ調書にする。しかし「○○課長は、筆頭課長という職責だ。」というような、事件の中ではどうでも良い瑣末なことを口にしたら、検事は書記にわざわざ声をかけ、それをさも重要案件であるかのように記録させたうえで「修正文」として調書に添付した。どんな細かい証言も、きちんと記録しているのだよ、という体裁を装うのだ。

ノウハウその3。
「暴力(腕力)は使わない。言葉で脅す」

・本当のことを喋っても、検事のストーリーと違っていると「正直に話さなければ拘留期限が長引くぞ」とか「再逮捕するぞ」とか、言われる。また「河野はキチンと話さなかったので、酷い目に遭ったなぁ」などと、さりげなく、暗にお前もそうなると匂わす。

・たしかに暴力(腕力)は振るわないし、ペンを持つ手を無理やり引っ張って調書にサインさせたりもしないが、囚われているものにとって「勾留延長や再逮捕」は非常に恐ろしいことであり、実際の暴力を振るわれる以上の恐怖を感じる。

ノウハウその3。
「弁護人のアドバイスに従わせない」

・弁護人から「自分の言っていないことが書かれた調書にサインする必要はない」と言われたが、取調室ではサインするまで、上記のような言葉の暴力を浴び続ける。

・検事はどうしても単独犯ではなく「村木課長からの指示あり」「組織ぐるみ」という調書を作文したいのだな・・・と感じて「弁護人に相談させて下さい」と言って抵抗してみたが、やはり「保釈できないな」「勾留が長引くぞ」などと脅され、ついには諦めて言いなりになった。弁護人から「抗議文を出せば良い」とのアドバイスもあったが、怖くて出せなかった。それどころか、最後には「反省文」まで書かされた。

ノウハウその4。
「言いなりになったら褒める」

・恐怖心や諦めの境地から、検事の望むような態度や発言をするようになると、「良い表情になってきたね。」「本当のことを話したからだね。」などと優しく言われる。また調書にもそのように記載される。

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今日までの、9回にわたる公判で、殆ど全ての証人が「事件は検察が創り上げたストーリー」「100%作文」「壮大な虚構」「でっちあげ」などと語るという、まさに異常な情景が展開されている。
この裁判は、いったい何を明らかにし、何を裁こうとしているのか。

この裁判に、これから求められるのは「虚偽有印公文書作成事件」の解明以上に、「この事件を利用して、何かを成し遂げようとした巨大な企図」を、明らかにすることではないかと思う。

そしてその企図こそが、厚生労働省現役局長であった村木厚子さんが「巨悪を成した犯罪者であること」を、必要としたのではないだろうか。

私たちは、裁判の行方を見誤ってはいけないと、思う。

<文責:ナミねぇ>

 

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