ナミねぇが社会保障国民会議 第1回サービス保障(医療・介護・福祉)分科会で発言しました。

2008年3月19日

さる2月26日に内閣府にて開催された社会保障国民会議の第1回サービス保障(医療・介護・福祉)分科会の議事録が公開されましたので、ナミねぇの発言部分を以下に紹介します。

 

社会保障国民会議 第1回サービス保障(医療・介護・福祉)分科会におけるナミねぇの発言

大森座長(大森彌 東京大学名誉教授)
  竹中委員。
竹中委員
  今までのお話を聞いていて、社会保障国民会議という、日本の社会保障の今後に様々な提言をする委員の皆さんのお顔が、暗いなあと感じた。この場で唯一元気なのはもしかしたら私だけかもしれないと思いながら、今お話をさせていただこうと思っている。

 私は、日本のというか、どの国でもそうなんだろうけれども、社会保障の一番の根幹は何かというと、やっぱり国民が元気と誇りを持てる国かどうかということ、それに尽きると思う。今の皆さんのお話だと、もう私たちはどの職種であれどの立場であれ、元気と誇りが持てない国になっているということを言われているというのを、今改めて切実に感じた。

 にもかかわらず、何で私は一人元気なんだろうと考えてみると、プロップ・ステーションはご存じの方も多いかとは思うけれども、どんなに重い障害を持っていてもICT(情報コミュニケーション技術)などを活用し、助け合い、支え合うという理念の基で、一人一人の中に眠っている力を全部社会に引き出す、あるいはそれを発揮していただく仕組みを自分たちで造り上げようということで生まれた組織である。つまり、今まで社会の担い手や支え手には絶対なれないと言われていた、そして社会保障や社会福祉の対象としか呼ばれなかった方々の中に、実は社会を支える大きな力があるということを、みんなに見せたろうやないの!ということで、17年前にそういう意志を持った仲間とプロップを生み出し、活動を続けている。

 プロップの代表者をしている私自身は、35歳になる重症心身障害の娘がいて、その重症心身の娘は35歳の今も、私のことはオカンとはわかっていないが、そういう娘を授かったときに、私の父親(娘のおじいちゃん)が、こんな子育てるのは大変やから、わしがこの娘を連れて死んでやると、言ったんですね。そのときに私、日本って何て国なんやろうと思って、ほんまにそんな国でいいの!?生まれてきた子どもが、こういう子やったらかわいがって育て、こういう子やったら重荷になるというような国はおかしいと強烈に思ったのである。だから、私にとっては、重症児の娘が、社会の中で守られて生き続けるにはどうしたらいいか、そしていつかその子を残して自分が死ぬことになったときに、安心して死ねる日本かという、まあつまり、ゼロよりもっとマイナスのところから私の課題が出発した。その視点から見て、娘を通じて出会ったたくさんのチャレンジド(障害のある人)を見ていると、何てたくさんの力が日本には眠っているのに、みんな福祉の対象、憐れみの対象と言うだけで、その人たちを「担い手にしよう」「仲間にしよう」という意識と制度を持たないんだろうかと不思議でならなかった。でもだからこそ、父は「この孫連れて死んだる」と言うたんやなということが、改めて非常によくわかった。

 だから、私はこのような会議の場でも、もちろん社会に何かしてくれ、政治に何かしてくれということもあるだろうけれども、マイナスから出発した自分自身とプロップが、こうやって元気になってきた、こうやって誇りを取り戻してきた、という自分たちの活動の実例を示していきたいと思っている。それをできるだけたくさんの方に知っていただくことによって、制度の仕組みをどのように変えていけばいいのか、ということを見えてくればうれしいなと思っている。マイナスからの活動を続ける中で、いつの間にか気がつくとこういう場所に座って、一人元気に吠えている、ということである。

 いくつかの事例をお話すると、今、医療の現場で手が足りなくなっていて、外国人の力を借りる話も出た。もちろん外国の方の力を借りるのも重要であろうけれども、例えばプロップ・ステーションの仲間には知的なハンデの人たちもたくさんいる。LDの方やADHD、高次能機能的な方なんかもいるが、私たちはその人たちのマイナスの部分じゃなく、眠っている力のほうに着目をして、その力を全部この場所で発揮できるような教育と状況をつくると、物すごいパワーを発揮される。確かに計算は苦手、文字はちゃんと読めないというようなことがある方が、人に対して接するときは、非常になんか猜疑心もなく・・・というのは下手すると詐欺にあうということですが、逆に言うと、純粋な気持ちでその人のために何か自分が役立ちたいという思いを物すごく持っておられるというような特性がある。そうすると、そういう方々が、作業所や工場のラインで箱折りとか、そういった仕事しかないのが今の日本であるけれども、医療や介護の現場の中に、その方々の温かさをきちっと組入れられるような働き方を創造するということは、これは十分できるわけである。

 あるいはプロップ・ステーションの仲間の一人は、事故で全身性の麻痺になり、家族の介護が無理になって施設に入っておられるが、何としても自分は仕事がしたいということで、プロップ・ステーションのコンピュータの勉強会に自分の年金でリフトワゴン車を雇って通われた。そしてパソコンスキルを身につけて、職安回ってみたら「お前みたいな体の人間を雇うところなんかない、帰れ」って何度も追い返されて、彼は仕方がないから「だれも雇ってくれへんなら、社長になったるわい」と言って、施設のベッドの上で個人事業者を立ち上げ、ちゃんと確定申告しながら、今、ホームページの仕事やTシャツのデザイン、パソコン講師といった仕事をやっている。

 いろいろなチャレンジドと出会ってみると、そういう力が、障害のある方に限らず、高齢者の中にも女性の中にも、恐らく勤勉と言われる日本人のDNAのすべてに、そういうものがきっと眠っていると感じずにいられない。それをその人たちが誇りを持てない状況に置いているということのもったいなさというのを、ぜひこの会で気づいていただきたいし、最重度の障害のある人が社会の担い手になれるという発想を持ちさえすれば、すべての人の中にある眠っている力を引き出すという制度や、予算の使い方というのは生まれてくると思う。どうしても予算が足りないんであれば、今何人かの方がおっしゃったように、これはすべての国民が消費をしたときに公平に払う消費税を議論する、という話に当然なると思うが、国の方向性や社会保障の考え方が変わらなければ、単に消費税を上げたとしても、結局ちょっと大きくなったパイをまた取り合いするだけという結果になるので、まず考え方を転換し、消費税を払える人たちを増やすという観点で取り組んでいかなければいけないと思う。そういう意味では、補佐官になられた伊藤さん、腹くくっていただいてというか、政治家に腹くくっていただいて、考え方を変え、なおかつ消費税の議論からも逃げることなく踏み込んでいただいて、なおかつ、それを誇りを持って担うという人たちをふやすという観点で、ぜひこの会議の議論が進んでいっていただきたいと思っている。プロップの活動の詳細はサイトで公開しているので、ご覧頂ければ幸いである。

http://www.prop.or.jp

社会保障国民会議 サービス保障(医療・介護・福祉)分科会 第1回会合 議事要旨より抜粋

 

社会保障国民会議 サービス保障(医療・介護・福祉)分科会 委員名簿

今田 高俊 東京工業大学大学院社会理工学研究科教授
逢見 直人 日本労働組合総連合会副事務局長
大森 彌  NPO法人地域ケア政策ネットワーク代表理事、東京大学名誉教授
加戸 守行 愛媛県知事
唐澤 人 社団法人日本医師会会長
神野 正博 特別医療法人董仙会恵寿総合病院理事長
清原 慶子 三鷹市長
齊藤 正憲 日本経済団体連合会社会保障委員会医療改革部会長
澤 芳樹  大阪大学大学院医学系研究科外科学講座心臓血管外科学主任教授
竹中 ナミ 社会福祉法人プロップ・ステーション理事長
辻本 好子 NPO法人ささえあい医療人権センターCOML理事長
中田 清  社団法人全国老人福祉施設協議会副会長
西村 周三 京都大学大学院経済学研究科教授
野中 博  野中医院院長
堀田 聰子 東京大学社会科学研究所助教
南 砂   読売新聞東京本社編集委員
矢崎 義雄 独立行政法人国立病院機構理事長

 

社会保障国民会議 リンク

社会保障国民会議 サービス保障(医療・介護・福祉)分科会 第1回会合 議事要旨全文

首相官邸社会保障国民会議ホームページ

「“野獣”ナミねぇ、官邸で吠えさせていただきました!」 −第1回社会保障国民会議での発言。

「社会保障国民会議 委員」に就任いたしました

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