月刊ニューメディア 2013年9月号より転載

【FRONT LINE】≫チャレンジド

6年目に入った神戸スウィーツ・コンソーシアム

第1回はハートのプチパンで復興支援


画面に映るのは仙台会場


その姿はまさに「タロカポネ」。
タロカポネとは国会議事堂内の売店で販売されているお菓子で、麻生副総理の似顔絵が描かれている。実に上手いネーミングだ

麻生総理もKSCを応援

障害を持つ人(チャレンジド)の就労支援を目的に、一流のパティシエからお菓子作りを学ぶ「神戸スウィーツ・コンソーシアム」(以下、KSC)が、6回目の開講式を6月15日に行った。会場は、東京会場(日清製粉株式会社小網加工技術センター)と、昨年から東日本大震災復興支援として講習会を開催している仙台会場の2会場をつないでの遠隔講習である。仙台会場では、3.11で被災し復興を遂げた東北石川食料株式会社の加工技術センターだ。

開講式は、KSCの生みの親である社会福祉法人プロップ・ステーションの竹中ナミ理事長の挨拶から始まった。
「障害のある人たちが持っているさまざまな力を社会の中で大いに発揮してもらい、それを出来れば仕事にしてtaxpayer(納税者)になってもらいたい」

続いて登場したのは、テレビでしか見たことのない麻生太郎副総理。竹中理事長の取り組みについて、「パティシエとは面白いところに目を付けた。この取り組みはチャレンジドたちに生きがいを与えるし、社会のためにもなる。チャレンジドたちの意志や意欲、やり遂げようとする努力をわれわれが上手く支援し、良い結果につながれば、それに優るものはない。うまいお菓子ができれば、これに優る喜びはない」と語った。

KSCなりの復興支援

第1回の講習で作るのは、ハートのプチパン(モワチエ)だ。講師は神戸のサ・マーシュのオーナーである西川功晃シェフ。このパンは、西川シェフが中心となって立ち上げたNPO法人ハートブレッドプロジェクトが提案しているもので、パンを作る際に出る端生地を使ってハート型のプチパンを焼き上げ、その売り上げの一部を、寄付を必要としている地域や団体にプロジェクトを通じて寄付するというもの。端生地を使ったのには訳がある。「長く(永遠に)無理なく続くように」(西川シェフ)の思いからだ。復興支援ということから、パンに使う米粉は宮城県産をしよう。ほかにも、今年は山形の桃や宮城のりんごを使い、農家支援も行なっていくという。ちなみに昨年は東北産のいちごを使用。


8名の受講生は精神・知的障害のチャレンジド

KSCを通してみんなが成長

この6年を通して、技術統括の八木淳司マイスター(モロゾフ)は「チャレンジドたちは自身がないことが多い。しかし、KSCで回を重ねるごとに自信をつけていくのが見ていてわかる。その自信が彼らを変え、施設や作業所でリーダー的存在になるチャレンジドも出てきている」と、それなりの成果が挙がってきていると話す。

西川シェフは「チャレンジドたちは仕事をする中で、足りないものを必死で補おうとする。それによって秀でたものが生まれる。われわれが恵まれ過ぎて見失っているものに気づかせてもらった」。

KSC主催者である日清製粉株式会社は「一流のシェフの仕事に直接かかわることで、私どもの技術者も大変勉強になる。また、皆さんとコミュニケーションを取ることで商品開発にもつながっていく」と話す。KSCにかかわるみんなが何らかの影響を受けて成長している。そして、関係者は「KSCがこれからも成長していくよう頑張りたい」と口をそろえる。

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