東京新聞 2012年6月27日より転載

お菓子づくりで自立目指せ

仙台と東京 ネットで中継

菓子職人になって自立を目指す障害者に一流パティシエが手ほどきする講習会が、東日本大震災で被災した仙台と東京をインターネットで結んで始まった。障害があることに対する同情ではなく、おいしいから売れるようにと年末まで全六回、チャレンジを続ける。

(中村信也)

障害ある人にパティシエ手ほどき


仙台会場の講義をネット生中継で見て受講する「チャレンジド」の若者ら=東京都中央区で

講習会は「神戸スウィーツ・コンソーシアム」と呼ばれ、社会福祉法人「プロップ・ステーション」(神戸市、竹中ナミ理事長)と日清製粉の主催で、2008年から毎年、各地で開かれている。5回目の今年は被災地支援で仙台を会場の一つに選んだ。

一昨年からは障害者がどこにいても学べるように、ユーストリームで中継している。仙台と東京のどちらかに講師が立ち、もう一方の会場にはネット中継で講習が行われる。講習するのは、製菓会社・モロゾフのテクニカルディレクターで、オーストリア政府認定資格「製菓マイスター」をもつ八木淳司さんら。

八木さんは高校二年生の三男に知的障害がある。今月16日に二カ所同時に行われた開講式では「障害のある人の多くがお菓子やパン作りで自立を目指しているが、レベルが高くないのも現実。少しでも自立につながるように頑張りたい」と仙台からあいさつした。

受講生は、仙台が9人と東京が7人。受講料は3万円だが、被災地の受講生は奨学生として無償に。お菓子の材料は、支援企業が提供している。

仙台は食品卸売会社の東北石川食料が会場になった。震災で社屋が全壊。廃業する会社もある中で建て替え、今回の講習会が「こけら落とし」に。和菓子などの工場が津波で全開した障害者の作業所からも2人が受講した。

竹中理事長は「障害のある人を、挑戦という使命やチャンスを与えられた人という意味でチャレンジドと呼んでいます。被災地からおいしいパンやお菓子を」と仙台から呼び掛けた。

初回の講習は、蔵王産の牛乳と地卵のプリンとパンプディング。東京では長野市の多機能型事業所「エコーンファミリー」に通う春日恵子さん(26)らが受講し、仙台の講習を画面で見ながら、お菓子づくりにチャレンジした。

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