カフェスイーツ より転載

プロのパティシエたちがチャレンジドに技術を伝授

 6月11日、プロの菓子職人やパン職人が講師となり、知的・精神障害者にプロの技術を習得してもらうことを目的とした講習会「神戸スウィーツ・コンソーシアム(以下、KSC)」が、東京でスタートした。KSCは、社会福祉法人プロップ・ステーション(竹中ナミ理事長)が発案し、「スイーツの世界で活躍するチャレンジド(障害のある人)を生み出そう!」を合言葉に2008年6月に発足。製菓・製パン原材料卸の(株)日東商会や大手製粉メーカー・日清製粉(株)ほか多数の企業、及び兵庫県、神戸市、神戸商工会議所の協力のもとに実現にいたり、第1期の講習会を神戸で開催。(株)モロゾフ・テクニカルディレクターでオーストリア国家公認マイスターの八木淳司さんがメイン講師となり、8人のチャレンジドが受講生として参加。日清製粉東灘工場などを会場に、08年6月から12月にかけて計5回の講習会が開かれた。

講習会の写真
東京での第1回めの講習会は、日本橋の日清製粉小網町加工技術センターで開催。多くの報道陣が集まった。

 農林水産省、厚生労働省、東京都などの後援も加わった第2期の会場は、東京・日本橋の日清製粉小網町加工技術センター。09年10月末までに計5回の講習会、12月5日に修了式・成果発表会が開催される予定だ。受講生は、パティシエとして就労する目的があり、作業所などで製菓経験をもつ、などの条件を満たすチャレンジドを募集し、書類選考された8人。第1期修了生も神戸から1人参加した。講師は、八木さん、「ノリエット」オーナーシェフの永井紀之さん、「ブーランジェリー・コム・シノワ」シェフの西川功晃さん、「コンディトライノイエス」オーナーシェフの野澤孝彦さんの4人が務める。

 「私自身、チャレンジドの息子がおり、いつもお世話になっている人たちに恩返ししたいという気持ちもあって、昨年より参加しました。専門学校などに入学できないチャレンジドは、プロの技術を学ぶ機会がありません。作業所などで販売する菓子は、知識や技術を身につければ、もっとプロの味になる。この活動では、菓子のつくり方を教えるだけではなく、チャレンジドをサポートする職員さんなども含めて、商売に必要な設備やシステムに関わることまで提案していきたい」と八木さん。

実習中の写真
4人の講師が見守るなか、9人の受講生が実習中。

 第1回めの講習会のテーマは「マドレーヌ」。メイン講師の八木さんが、工程ごとにポイントを説明しながら実演したあと受講生が実習。9人の受講生たちは、それぞれ真剣な面持ちで八木さんの手元を見つめ、計量からスタート。その後、卵類や砂糖を混ぜ、粉類を合わせ……と作業がすすむなか、ヘラでの混ぜ方や生地の絞り方など、3人の講師もプロならではのポイントを説明しながらサポート。約2時間後には全員が焼成まで終え、一人ひとりが型から焼き上がった生地をはずすたびに、会場全員から拍手が起こった。

 第2回以降の講習会では「木いちごとヨーグルトのムース」、「ヌースボイゲル」(焼き菓子)、「ポテトパン」、「ブッシュ・ド・ノエル・マロン」などが予定されており、4人の講師が順にメイン講師を担当し、プロの技術を伝えていく。


上/「混ぜ方はこうして…」と手本を見せる永井さん。下左/焼成後、熱い型を裏返すときに八木さんがサポート。下右/焼き上がったマドレーヌは、各自で持ち帰った。

 「この活動をきっかけに、チャレンジドが菓子職人やパン職人として自立できる支援が広がれば」と声をそろえる4人。プロップ・ステーションでは、来年の第3期以降は、同活動を全国に展開する予定で、準備をすすめている。

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