読売新聞 2008年12月8日より転載
養成講座8人修了式
障害者菓子職人の夢
神戸で試食会 就労へ手応え
「スイーツの街・神戸」から障害者のパティシエ(菓子職人)を育てる講座の修了式が7日、神戸市中央区の飲食店であり、受講した8人がクッキーやプリンなど約20点の焼き菓子を披露した。甘い香りが漂う“作品”を出席者約50人で早速試食。関係者らは「十分商品化できる成果が見えた。障害者に就労のチャンスが広がる」と手応えを感じていた。
養成講座は、「チャレンジド(挑戦する機会を与えられた人)」の支援を理念に活動する神戸市の社会福祉法人「プロップ・ステーション」(竹中ナミ理事長)が発案。製菓・製パン原材料卸売会社「日東商会」(大阪府)や製粉大手「日清製粉」(東京都)などの協力を受け、今年6月から始めた。
県内を中心に20〜50歳代の男女8人が参加。オーストリア政府公認の「製菓マイスター」の資格を持つ、洋菓子店「モロゾフ」のパティシエ八木淳司さん(57)らが、焼き菓子の秘伝のレシピのほか、練習を繰り返すことの大切さを教えたという。
八木さん自身も三男が軽度の知的障害を抱えているため、「障害者の自立を助けたい」とボランティアで参加。「手本を示すと、目を離さずに見てくれて、真剣さが伝わった」と振り返った。
式では、受講者一人ひとりに修了証が手渡され、代表して大阪府阪南市の作業所に通う深草健治さん(34)が「ここで培った経験はかけがえがない。一層、お菓子作りに励みます」と述べた。
神戸市北区の地域活動支援センター施設長の安福ひとみさん(48)は「受講後、フィナンシェの味が変わった。プロが生まれるのも夢じゃない」と期待する。今後、東京でも同様の講座が開かれる予定で、竹中理事長は「神戸からチャレンジドの輪が広がれば」と話していた。
障害者が作った焼き菓子を試食する出席者ら(神戸市中央区で)