SICE2008併設行事ワークショップ「SICE ライフサイエンス(生命・健康・医療)の現状と連携推進を探る」 2008年8月19日より転載

「寄稿」ICTを駆使して、チャレンジドが人としての尊厳を取り戻す

社会福祉法人プロップ・ステーション 理事長 竹中 ナミ

皆さん、こんにちは。ナミねぇ@プロップ・ステーション です。
プロップ・ステーションは活動を開始して17年になりますが、発足時から「ICTを駆使してきたNGO」です。 17年前にはインターネットも無く、パソコン通信がやっと日本で使われ始めた頃ですが、日常生活に介護や介助を必要とするチャレンジド(障害のある人たち)が「私たちも働きたい! そのために役立つ道具はパソコンだ!」と考えたことから始まった活動です。つまり「最高の科学技術こそが、チャレンジドの個性と能力を世に送り出すことが出来る」というチャレンジド自身の確信によって生まれた組織といえます。 「重度の障害者は働くなんて無理」というのが当時の(今も?)世間の常識でしたから、プロップの活動は「無謀な挑戦」と言われたものです。でもチヤレンジドたちはICT業界やナミねぇのような「パソコンは使えないけど口と心臓の達者な」人間をぐんぐん巻き込んで、自分たちの働く場を生み出して来ました。

発足から17年が経過した現在、プロップでは身体(肢体・視覚・聴覚)・知的・精神など様々な分野のチャレンジドがICTを学び、働いています。プロップのスタッフとして活躍する人、起業した人、自宅や施設でS0HOの形態で働く人、アーティストとして活動する人など、その人の個性と能力を生かして生活しています。

真夏日のある日、神戸のプロップに、遠路岐阜県から若いお父さんがご家族を連れてご相談に来られました。ご長男が少し「遅れがある」ということで、我が子が「障害児」であるとしたら、自分たちはどのように生きたら良いのだろう、というご相談でした。

真剣な目で色々質問を投げかけられるお父さんを尻目に、そのご長男と3歳年下の次男坊は、キヤッキヤと笑いあいながらオフィスの椅子を使って電車ごっこ!!その明るく、くったくのない笑顔に、ご両親がどんなに子どもさんたちを慈しんで育てておられるかが、ひしひしと伝わってきました。私からのアドバイスはただ一つ。「お子さんを楽しみましょう!!」

家族が笑顔で過ごせる日々は何よりも貴重なもので、子どもの障害は決してそれを妨げるものではなく、むしろそれを深めてくれる出来事です。つまりご両親は素晴らしい宝物を授かったんです! とお話しました。ご長男の「できないところ」ではなく「好きなこと」「やりたいこと」「できること」を発見し、一緒に楽しむのがお父さんの仕事で〜す!って。(^_^)

ちょうどその日は、神戸市内の養護学校生有志が、先生と一緒に「パソコンの夏期集中講座」を受けておられる最中やったんですが、重度自閉でピョンピョン跳ねながら、それでもインターネットを検索し、自分の好きな歌手の出る歌番組の「番組表」をプリントアウトして楽しんでる高等部の男子を見ながら私が「彼がこんなこと出来るなんて、想像できへんでしょ。でもプロップでは、自閉の人はパソコンと相性が良いっていうのは常識なのよ」ってお話ししたら、ご相談者の若いお父さんは「目から鱗です!」と驚いておられました。

1時間半にわたるご相談を終えてオフィスを出られるご家族は、入ってこられた時の緊張感が消え、肩の力を抜いて笑顔で帰っていかれました。「幸福のタネ」を育てる力は、実は誰にでも備わっているんやけど、気づかないままに過ごす人がどんなに多いかを思う時、プロップが、それに気づいてもらえる場所になるといいな、と改めて感じたナミねぇでした。

プロップ・ステーション公式サイト http://www.prop.or.jp/
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