朝日新聞 7月12日夕刊より転載

投票してお任せ、はダメ

社会福祉法人理事長 竹中ナミさん

[写真]竹中ナミ

 宙に浮いた年金記録の発覚で、年金への関心が急激に高まった。だが、私たちはこれまで、年金制度の将来について、どこまで真剣に考えたことがあっただろうか。

 急速に少子高齢化が進み、国民は生まれた瞬間から何百万円もの借金を背負う時代なのに、そんなことは日常話題に上らない。無関心ゆえに保険料を納めない人も少なからずいる。今回、保険料を納めたのにきちんと受給できないということになって、初めて大騒ぎになった。社会保険庁の怠慢は言語道断だが、私たちも納付者としての意識が欠けていた。

 年金問題は私たちの主権者意識を高めるきっかけになった。恩恵を受けるだけでなく、社会をどう支えていけるのか、自覚的に考える必要がある。有権者は政党が提示した公約をよく吟味し、実現可能性はあるのか、しっかり見極めないといけない。

 憲法や教育問題も、大きな争点として浮上してきた。国は今、分水嶺(ぶんすいれい)に来ている。一票を投じた後は政治家にお任せ、という意識はもう変えないといけない。

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