夕刊デイリー 2007年5月15日・16日より転載

記者手帳

5月15日

最近、県の文書を読んでいたら同じページに「障害者」という表記と「障がい者」という表記が混在するようになった。日本では、体に障害のある人のことを長いこと「障害者」と表記してきたが、これを不快に感じるという声は以前からあった。それは「障害物」という表現と重ねて考えればよく分かる。「おれは世の中の障害者か」と言いたくなるという。

「障害者」に代わるいい表記はないものか、という議論をしたことはあるが、解決しないままだった。そんな中で唐突に「障がい者」という表記を見たとき、県民に説明がないのも気になった。そこで件の担当課に聞くと、今年3月20日付けで「『障害』等の表記の変更について」という文書を県庁内と市町村に配布したという。

変更内容は、1.「障害」は「障がい」にする2.「障がい者」は「障害のある人」、「障害のある方」または「障がい者」とする3.ただし、法令、条例、の名称とそれらの中で特定のものを指す用語、組織、団体、施設の名称、その他ひらがな交じりが適当でないと判断した場合は従来の「障害」を用いるーとし、新たに作る公文書や資料はこの表記を用いるように示している。しかし、なぜ変更するのか、仮名書きにする理念の説明はない。

仕方がない。平成13年1月、全国で最初に「障がい者」に表記を改めた多摩市の説明を借りよう。「害の字には『悪くすること、わざわい』など否定的な意味があり、人権尊重の観点からも好ましくない。害の字を石へんの『碍』あるいは仮名にすべき。人を』直接形容する場合は『がい』と表記、可能な場合は他の言葉で表現する。」今、全国に波及しつつあるという。でも変更している県は経緯を県民に公表している。

5月16日

「障害者」と「障がい者」の表記について昨日の小欄に書いたところ、ご感想やご意見の電話やメールをいただいた。いろいろなことをご教示いただいたことに感謝し、昨日のつづきを書きたい。

「障害者」のことを英語では「ハンディキャップトパーソン」と呼ぶことが多いらしいが、最近は「チャレンジド・・・」と呼ぶ人も多いという。 the challenged person 。受け身表現だ。「神から特別に挑戦する試練を与えられた人々」という意味を持つという。「障害をマイナスのみにとらえるのでなく、障害のために体験することを自分や社会のために積極的に生かしていこう」という思いを込めているという。

インターネットを開くと、「チャレンジド」の言葉のつくホームページやブログがいっぱいある。重い障害のために就労の難しい人にパソコンを使って自立と社会参加を支援している神戸の社会福祉法人プロップ・ステーション(竹中ナミ理事長)が日本にこの用語を広めたという。神が与えた試練というからに奮い立つ勇気を与える。「この言葉に負けないようにしたい」というチャレンジド自身の感想もある。

竹中さんからこの言葉の意味を聞いた元宮城県知事の浅野史郎さんは、知事在職中の県政だよりの随想に「なるほど、いろいろなハンディキャップを神様から与えられて試されている、いわば神様から選ばれた人たちと考えればいいのか。私も納得がいきました」と書いている。東国原知事が選挙運動前に公表したマニフェストの医療・福祉改革に「障碍(がい)者の安定した生活のための施策の検討」という項目があったというご指摘。マニフェストを再確認すると、確かにそう書いてありました。

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