シルバー新報(第767号) 2007年2月16日より転載

プロップ・ステーション

最新ITで障害者の就労機会拡大目指す

遠隔地模擬講習を実施

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竹中ナミ理事長

自宅のパソコンを使いながら遠くにいる人と映像や音声でリアルタイムのコミュニケーションが取れる、しかも手元の操作で相手のパソコンの操作もできる――。そんな最新の情報システムを障害者の新たな就労支援に活用しようという取り組みが現在、厚生労働省のモデル事業で進められている。コンピューターは障害者にとって就労の機会を広げる有効な手段だが、移動に制約のある人にとっては講習に通うのも一苦労だ。自宅にいながらパソコン技術を習得できれば、ほかの地域にいる障害者にも教えることができるという。13日、厚労省でその成果を披露する模擬講習会が行われた。

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模擬講習には10人が参加。対面形式の講義と変わらない

モデル事業を行っているのは、IT(情報技術)を活用して障害者の就労や社会参加を推進しているプロップ・ステーション(竹中ナミ理事長)。障害者にパソコン技術を身につけてもらうセミナーを開催し、多くの障害者を社会に送り出してきた実績がある。

「障害者にとってパソコンは就労の大きなチャンス。でも、移動に制約があるなど、講習会やスキルアップ研修に参加できない人が多い。せっかく技術を習得したのに同様の問題から講師として活躍できない人もいる」

多くの障害者がパソコンに触れるチャンスを作る方法を模索していたとき、NTTネオメイトが開発中の「遠隔研修支援システム」を知った。映像・音声コミュニケーションを実現するテレビ会議システムと複数のパソコンの情報をサーバーで共有・操作するシステムで組み合わせたもので、相手のパソコン情報が見られるほか、操作までできてしまうのが大きな特徴だ。テレビ電話を使ったセミナーなどは珍しくないが、実際には別会場にいる受講生がどこでとまどっているのかが分かりづらく、スムーズに行かないことが多い。

竹中さんは、「このシステムならパソコンを使えるようになった障害者が、在宅でも講師を務めることができる。新しい研修スタイルができる」と考え、NTTネオメイトに共同開発を持ちかけたという。

13日の模擬講義は、2人の障害者が、仙台市・京都市の自宅からインターネット回線を使用してリアルタイムの映像を流し、研修会場にいる受講生がパソコンでプレゼンテーション資料を作成する内容だった。

「Aさんが引っかかったのはここですね」。受講生が作業に戸惑ったり、失敗したりすると、受講生のパソコン画面を間違った地点まで戻して手順を説明する。やりとりも思ったより時間がかからず、実際に目の前に講師がいるような感覚。個々人の状況を詳しく把握し、対応できるのが、この遠隔研修システムの売りだ。

「障害を持つ人が仕事をするには最新技術のフォローをもらうのが一番」

今後も障害者団体や協力企業と検討を進めて障害者就労の具体的なアイデアを提示したいと竹中理事長は話す。すでに障害者雇用の促進を図る企業からの問い合わせもあるという。模擬講義も含めた調査研究結果は本年度中には報告書にまとめられる。

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