NEW MEDIA 2006年10月号より転載

特別レポート
第11回 チャレンジド・ジャパン・フォーラム 2006 国際会議 in TOKYO

ユニバーサル社会共助社会の実現へ
 「ユニバーサル宣言」を発表

[写真]ユニバーサル宣言の様子

ユニバーサル宣言
私たちは、年齢、性別、障害の有無、立場や文化の違いを超えて、すべての人が持てる力を発揮し、支え合う"ユニバーサル社会"の実現を目指して、この大会を開催します。
私たちは、ユニバーサル社会実現に必要な、制度や意識や慣習の改革に取り組むことを宣言します。
Universal Dcclaration
We hold this forum aiming for the realization of "Universal Society" where everyone can exhibit his/her full potential regardless of ago, gender, challenged of nonchallenged, position or culture with mutual support.
We declare to carry out a reform of system awarenss, culture needed for the creation of this Universal Society.

すべての人々が持てる力を発揮して支え合う「ユニバーサル社会」(共助社会)づくりを提唱する「チャレンジド・ジャパン・フォーラム」(CJF)の第11回が、7月22日に東京で開催された。今年は、海外からのゲストも含めたチャレンジド自身の発言と、現職閣僚ら政治家の参加が際立ち、世界的にチャレンジド自立の動きが国の政策を変え始めたことを印象づけた。

(レポート:中和正彦・ジャーナリスト、写真:白鳥一行)

現職閣僚から海外ゲストまで多様な参加者


小泉首相も前回に続きビデオメッセージ


会場に駆けつけた(左2人目から)現職閣僚の川崎厚労相、猪口内閣特命担当相、谷垣財務相


会場を撮影するキーノート講演者のジョン・ケンプさん

「困難に立ち向かっていく人たちに道が開かれるような社会をつくっていきたい」という小泉首相のビデオメッセージで始まった午前のプログラムには、川崎二郎(厚生労働)、谷垣禎一(財務)、猪口邦子(少子化・男女共同参画担当)の3大臣が駆けつけ、それぞれの所管における「ユニバーサル社会」づくりに向けた取り組みをアピールした。

午後の最初のプログラムでは、海外からのチャレンジドのゲストが、それぞれ体験を通したメッセージを発した。

米国で30年以上にわたってチャレンジドの地位向上のための活動をリードしてきた弁護士のジョン・ケンプさん(四肢の先天障害で義手と義足を使用)は、障害を理由とした差別を包括的に禁じた法律を成立させて15年経つ米国でも偏見が消えたわけではないと指摘。「障害のある人が尊厳ある人間として扱われるためには、誰かがいつかではなく、いま私たちが動こう」と訴えた。

日本では長野パラリンピック開会式での歌声で広く知られるスウェーデンのゴスペル歌手、レーナ・マリア・クリングヴァルさん(両腕がなく片足が短い)は、障害があっても他の子どもと同じように育ててくれた両親への感謝を述べ、いまの自立した自分を築いた最大の体験は、「常に愛されていると感じることができたこと」と語った。

タイで障害者職業訓練校の校長を務めるスポーンタム・モンコンサワディさん(下肢障害で車いす使用)は、チャレンジドへの就労支援を、一般の人々の意識改革を促す取り組みなどと一緒に進めていることを紹介し、「このようなことは政治的意思で戦略的に進める必要がある」と指摘した。

「誇りを持って大きな声を」

[写真]
ウェルドニッヒ・ホフマン病という難病と闘いながら絵本作家となったくぼりえさんの最新絵本「およぎたい ゆきだるま」を紹介するプロップ・ステーションの竹中ナミ理事長


会場内ではWebショップ「上育堂」の川本浩之さんのTシャツや、くぼりえさんの絵本などが販売。原画も展示された


イオン化粧品社長の河端 進氏は、くぼりえさんのカレンダーに惚れ込んだ一人。「りえちゃんによってね、私たちみんな、すっごく勇気をもらってます。これからも周りにね、勇気をどんどん与えているという気持ちで、私が主役、という気持ちでね」


記者懇談会に臨むジョン・ケンプさん(右)と竹中ナミさん。ケンプさんの説得力のある発言で、充実した内容となった


記者懇談会に出席し、ケンプさんから貴重なメッセージを引き出した第8回CJF実行委員長を務めた村田和己氏(手前)と、第7回CJF実行委員長の谷井 亨氏。村田氏は盛岡市職員、谷井氏は企業経営者として活躍

海外ゲストに続いて日本のチャレンジドも登場。療護施設のベッドの上でWebショップ「上育堂」を起業した川本浩之さん(頚髄損傷で四肢麻痺)は、今春施行された障害者自立支援法について「自己負担」の部分だけ槍玉に挙げて否定するようなチャレンジドや関係団体を痛烈に批判した。

「賃上げよりも社員食堂の値下げを要求する労働組合ってありますか? 人並み以下の所得よりも人並みの負担に論点が置かれていることについて、私は、障害者は働けない人間とみなされている気がして、腹立たしい気持ちを持っています」

人並みの所得については、働く場所と道具と動作を自分に合わせることによって近づけることが可能とし、多様な働き方を支援する自立支援法の利用を「声を上げて勝ち取った権利だ」と胸を張った。

ここまで大きく賛同者の環を広げたCJF。その原点を、主宰する竹中ナミさん(社会福祉法人プロップ・ステーション理事長)は今も「障害児のカアちゃんのわがまま」と言う。

  心身ともに重い障害をもつ娘は施設の保護の下で暮らしており、その費用の多くは税金で賄われている。親としては、日本が娘のような人々の命を守れる国であり続けてくれなければ、安心して死ねない。そのためには、働く意欲も能力もあるのに障害や年齢などを理由にチャンスを与えられない人々がたくさんいる今の社会のあり方を変えなければいけない――。

この強い思いが、一方では少子高齢化する日本への危機感から改革を志向した産学官のリーダーたちの思いを共鳴し、一方ではいろいろな意味でハンディを抱えながら自立を志向した人々の賛同を集め、これだけの大きなうねりを巻き起こした。

記者懇談会で「日本のチャレンジドにメッセージを」と求められたケンプさんは、「ビー・プラウド・アンド・ラウド」(誇りを持って大きな声を挙げてください)と答えたが、そういうチャレンジドも、たとえば川本さんのように登場してきていた。

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