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OLマニュアル 2005年5月号より転載

 

「不運の種」が「幸運の花」を咲かせる!

 
 

竹中ナミの「ラッキーウーマン」への道

 
 

VOL5 郷に入りては郷に従え

 

プロップ・ステーション代表 竹中ナミ

竹中ナミの写真

●たけなか なみ
24歳の時、重症心身障害児の長女を授かったことから障害児医療・福祉・教育を独学する。平成3年、就労支援活動「プロップ・ステーション」を創設。「チャレンジド(障害者)を納税者にできる日本!」をスローガンに活動を開始。軽快な関西弁トークと「苔が五重に生えた」心臓を武器に、チャレンジドが誇りをもって働ける社会を目指して、政官学業へ独自の人的ネットワークを広げつつ活動を推進。[近況]このたび、プロップ・ステーションの活動状況や近況をお伝えするメールニュースを始めました! 月2回の発行予定で、さらにプロップの輪を広げていきたいと思います。

 


鉄条網の洗礼

 家族は娘の障害を受け入れられても、やはり周囲から偏見の目を向けられることは数多くありました。

 娘が3歳の頃、私たち家族が引っ越したところは、見渡す限り田んぼと畑と雑木林という山林でした。私は、はじめての田舎暮らしに喜んでいたのですが、今から30年近く昔であったことに加え、総戸数20戸ほどの小さな集落でしたから、それはもう、閉鎖的な考え方の根づいた土地だったのです。

 私たちが引越して間もなく、その手荒い歓迎はやってきました。娘をバギーに乗せて散歩をしていた道に、ある日突如として有刺鉄線を張り巡らせた鉄条網ができていたのです。これを仕掛けたのは、村の顔役のおばあさんでした。しかし、村の人たちも障害に対する認識が薄く、娘に障害があることがわかると「やれ、あの家はたたられている、因果応報だ」と囁いていたようで、私たちは歓迎されていませんでした。

 いわれのない迫害にショックは受けましたが、所詮私たちはよそ者。私は腹を立てることより、仲間に入れてもらうこと、村の一員として認めてもらうことを考えるようになりました。そこで、村の人たちが大切にしていた、村の守り神である『お観音様』を私も大切に祀り、「私もみなさんに同じようにお観音様を大切に思っています」というアピールをしていったのです。つまり、郷に入りては郷に従え、長いものには巻かれろ、ということです。

 そうした結果、村の人にもしだいに受け入れてもらうことができ、顔役のおばあさんにも気に入られるようになったのです。

 みなさんの中には、人と仲良くなりたい、と思いつつも自分からは何も行動を起こさない人が多いのではないでしょうか。自分の手の内は明かさないのに、相手にばかり求めてしまう。これでは人づき合いはうまくいかなくて当然です。

 私もどちらかと言えば気の強い性格ですから、他人に歩み寄るなどということはしないように思われがちですが、むしろそれは逆です。自分が必要だと思えば、頭を下げることも、相手の歩調に合わせることも全く苦にはなりません。

 やはりこれには娘の影響もあるでしょう。娘の障害がわかった時、知識も情報もなかった私は、人から情報を得るために、それこそいろいろな人に相談をしに行かなければなりませんでした。どうすれば娘が快適に暮らせるか、その情報を得るためには好き嫌いで選ぶ余裕などなかったからです。そうして相手の求めるものを受け止めていくことで、自分の必要とする情報や環境を整えていったのです。

 

まず自己開示

 人づき合いが上手にできなくて悩んでいる人というのは、どちらかと言うと相手が自分のことをどう思うか、ということを気にして自分を守っているような気がします。その点、私の場合は人と上手につき合わないといけない、という意識を持って人と接することはありません。ですから自分をさらけだして人と接することができるのだと思っています。

 しかし、とくに仕事上でのつき合いの場合は、苦手な人ともうまくやらなければならないこともあるでしょう。そんな時には、考え方にちょっと一ひねり加えることをオススメします。たとえば、いつも嫌味を言う人が苦手なのであれば「あっ、この人は嫌味を言うことで楽しめる、変わった人なんだ! 私とは違うな」といった要領です。そして「こういう人と関わることも私の人生には必要なんだ」と思えば相手の見方も変わってくるものです。

 人と関わるのが苦手だと言って避ければ避けるほど、さらにそれは拍車がかかります。でも、自分から行動を起こし、自分をさらけだしていけば、相手もそれに応えてくれるものです。自分にとって相手が必要ならば、まず自分から動くことを心がけましょう。

 

タカハシカズエさんのイラスト



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