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OLマニュアル 2005年3月号より転載

 

「不運の種」が「幸運の花」を咲かせる!

 
 

竹中ナミの「ラッキーウーマン」への道

 
 

VOL3 意識を変えることの大切さ

 

プロップ・ステーション代表 竹中ナミ

竹中ナミの写真

●たけなか なみ
24歳の時、重症心身障害児の長女を授かったことから障害児医療・福祉・教育を独学する。平成3年、就労支援活動「プロップ・ステーション」を創設。「チャレンジド(障害者)を納税者にできる日本!」をスローガンに活動を開始。軽快な関西弁トークと「苔が五重に生えた」心臓を武器に、チャレンジドが誇りをもって働ける社会を目指して、政官学業へ独自の人的ネットワークを広げつつ活動を推進。[近況]アメリカでは1990年に制定されたADAという法律によって、障害を持つ人も持たない人も、学ぶこと、働くこと、生活することに同等のチャンスを得る権利があると定められました。今年のGWには野田聖子さんを座長にADA視察ツアーを組みワシントンDCを訪問します。

 


ユニバーサル社会を目指して

 皆さんは、「バリアフリー」という言葉を聞いたことがありますよね。たとえば、学校の入り口に段差があり、車椅子の人が入れなかったとします。その段差をスロープにして入られるようにしましょう、というのがバリアフリーです。

 では、「ユニバーサル社会」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。

 学校の入り口がスロープになり車椅子の人が入れるようになっても、障害を持たない子と同じように学ぶことができなかったり、教師として教えることができなければ、バリアフリーではあってもユニバーサルではありません。

 ユニバーサル社会というのは、誰もがその人の持っている能力を発揮できる、自分のやりたいことを実現できる社会をいうのです。

 私は今、そういう社会を作るべく活動していますが、実現していくためには、法律と人々の意識、両方を変えていかなければならないと考えています。

 男女雇用機会均等法を例にすると、法律ができ男女の働く機会は法的に平等になりました。しかしまだまだ世の中には、男性のほうが女性より出世して当たり前などという意識が口に出さなくてもあります。つまり、法律だけ変わっても意識が変わらなければ、本当の意味で男女が平等にはなりません。

 このように、法律と常識はこんにゃくの裏・表で、どちらが表かわからない。いくら法律ができても、人々が「そんな法律は無視、今までの常識や習慣のほうが大切」などと思っていては、意味がないのです。

 ですから、ユニバーサル社会を作るためには、法律と意識、両方を変えていかなければなりません。そして、私たちにできることは、まずは自分の意識を変えることだと思います。

 とはいえ、私自身、社会や世の中の常識に縛られていることを認識し、自分を恥じた出来事がありました。

 

私自身が意識することで、変わる

 尊敬する友人の一人に、衆議院議員の野田聖子さんがいます。聖子さんとは、ユニバーサル社会を作る勉強会で一緒に活動しています。最近、彼女が自身の不妊治療体験などを綴った著書が、週刊誌などにセンセーショナルに取り上げられました。

 週刊誌の中では、聖子さんが夫に精子を求めた、ということばかりが強調されていました。しかし、実際に読んでみると、反対する夫を説得し不妊治療をする中で、だんだんと夫婦の絆が深まっていく様子が描かれており、とても感動的でした。

 また、彼女はその著書の中で、働きながら妊娠をし、出産していくのが当たり前の社会にしたい、といっています。日本で子供を抱いている総理がいてもいいじゃないか、と。

 じつは、私はこれを読んだ時に、一瞬ですが「えーっ、総理という職務を、子供のいるお母さんができるのかしら?」と思ってしまったのです。

 男性も女性も、障害を持つ人も持たない人も、それぞれが能力を発揮し、平等にチャンスを掴める社会を作りたい、と思っていた私が、それを阻むような意識を持っていたことに気づいた出来事でした。

 今、少子化の問題が大きく取り上げられていますが、出産することと働くことの両立ができる社会を作ることは、皆さんにとっても、とても重要なのではないでしょうか。

 そして、そういう社会を作るためには、まずは私たち自身が、それを当たり前のこととして捉え、自分自身の行動で表していく必要があります。先ほども申し上げましたが、そのように意識を変えていくことで、法整備にもつながっていくはずです。

 私は今回、自分がいかに社会の常識や習慣に捕われていたかがわかり、とてもいい経験をしました。意識を変えることで、世の中が良い方向にスパイラルしていったらいいですし、それがユニバーサル社会を作る一つのプロセスだと思っています。

 

タカハシカズエさんのイラスト



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