朝日新聞 2004年11月11日号より転載

 

 
 

神戸で地上デジタル放送

 
 

厳しい現状 シンポで討論

 
 

 

シンポジウムの写真 テレビの地上デジタル放送が東京、大阪、名古屋で始まって、もうすぐ1年。12月1日から神戸でも始まるのを前に、行政や地元テレビ局などが神戸市でシンポジウムを開いた=写真。昨秋のイベントで何度も見せられた単純なPRは影を潜め、むしろ”問題点をどう解決するか”が語られ、厳しい現状を映し出していた。

 まず基調講演したNHK放送文化研究所の鈴木祐司・主任研究員が、この1年を「高画質のハイビジョンといっても、すべての番組ではなかった。データ放送、マルチ放送といった機能も、残念ながら、あまり無かった」と辛口に総括した。全国のテレビ局へのアンケート結果に基づき「06年時点でも多機能は必ずしも十分に整わないだろう」と予想した。

 兵庫県の井戸敬三知事らが参加したパネル討論でも、二つの課題が取り上げられた。(1)2011年7月にアナログ放送が停止される予定だが、現在、デジタル放送に対応できるのは約150万台。残る9860万台を置き換えるだけの魅力を持てるか (2)全国でデジタル放送を視聴するのに必要となる中継局のデジタル化などのコストをどうするか

 明確な答えは示されなかったが、阪神淡路大震災の体験から「なんとか災害対策に役立てたい」という発言が相次いだ。台風23号による兵庫県豊岡市などの浸水被害や、新潟県中越地震とも重なり、切実さを感じた。

 井戸知事は携帯端末が将来、登場するのを前提に、「危険を訴える情報を一斉に発信する仕組みができないか」と語った。単に「きれい、楽しい、美しい」だけでなく、命を救う役割がデジタル放送にこもるなら、本当に素晴らしいのだが。

(佐藤圭司)




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