産経新聞 2004年9月16日より転載

 

ワンランク上の技術で

 
  就労へのバリアに挑戦  
 

障害者チャレンジドのパソコンセミナー

 
 

新たな職域拡大もねらう

 

 コンピューターネットワークを利用して、「チャレンジド」(障害のある人)の就労を進め、その自立と社会参画を目指す社会福祉法人「プロップステーション」(竹中ナミ理事長、神戸市)がこのほど、ネットワーク管理やWebサイトプログラミングが学べる「パソコンスキルアップセミナー」を開講した。ワンランク上の技術の習得で、就労へのバリアに挑む受講生の思いが会場にあふれている。 (服部素子)


写真:セミナー会場風景
講座ではプロップステーションのスタッフがマンツーマン的にサポートしている

 プロップステーションが、障害のある人へのコンピューターセミナーを始めたのは、平成4年の夏。「障害のある人に、パソコン?」という声も多くあったが、その年の春、全国の重度障害者を対象に行った就労意識アンケートで、回答者の8割がコンピューターへの期待を示したことを受けての挑戦だった。

 そして、エンジニアやプログラマーという、それまでボランティアに縁のなかった人たちを巻き込んだ講座がスタート。1年半後、セミナー受講生の初仕事として大阪府立工業高校の生徒管理システムを開発、納品した。以降、野村総合研究所とのリモートワーク(在宅勤務)の共同実験、大阪府下の全養護学校の情報教育支援の受託など実績を重ねてきた。

 「言葉に障害があっても、メールでコミュニケーションがとれる。体調に不安がある人も、同じスキルの人が数人で仕事を分担し、うちのような団体がコーディネート役を狙えば、在宅で仕事がこなせることが分かった」と同事務局長の鈴木重昭さん。

 しかし、プロップステーションを立ち上げて13年、パソコンを使えることが就労の前提の時代になり、在宅就労を目指すチャレンジドから、より高いスキルを学びたいという声があがってきた。

 そこで、新たな職域の拡大もねらい、ネットワークやサーバーの構築実習やセキュリティーを学ぶ「ネットワーク管理者養成講座」と、仕事としてWeb作成を請け負うために必要なソフトウエアの仕組みを実習する「Webサイトプログラミング講座」を設定。それぞれ週1回4時間×10週、40時間のスケジュールを組み、受講生も「ネットワーク管理」5人、「Webサイト」8人にしぼった講座にした。

 Webサイト講座の参加者の1人、神戸市の中山隆一さん(43)は「パソコンは趣味的に始めて20年。病気で以前の仕事ができなくなり、ネット関連の在宅ワークをしています。ただ、パソコンの技術はどんどん進んでいく。仕事レベルでやろうと思えば、スキルアップは不可欠です」。

 また、車いすで参加していた矢野真子さん(28)は「福祉住宅コーディネーターになるのが、夢。自分が遠く出かけていくことはできないので、世界の人が訪ねてくれる個性的なホームページを作りたい」と目を輝かす。

 プロップステーションでは障害のある人を「チャレンジド」と呼ぶ。語源は米語で、障害をマイナスとしてのみとらえるのではなく、障害があるがゆえに体験するさまざまな出来事を自分のため、社会のためポジティブに生かしていこうとの思いがある。「障害があるからここまで、というのではなく、就労を目指すチャレンジドの要望にどこまでも応えたい」鈴木さん。

 同じ内容の講座を11月にも開く予定。費用は両講座とも12,000円。詳細はプロップステーションホームページ(www.prop.or.jp)。




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